●イプシロン【いぷしろん】
知恵蔵
イプシロン
これまでJAXAはその前身である、ISAS(宇宙科学研究所)が運用していた中型の固体燃料ロケットM-V(ミュー・ファイブ)と、NASDA(宇宙開発事業団)から引き継いだ大型の液体燃料ロケットH-IIAの2系列のロケットを運用していた。
しかし、M-Vロケットは衛星打ち上げのための実用機ではなく、ロケットの実験・研究を主目的として開発されていたため、仕様が量産には適さず、打ち上げコストが1回75億円にも上るなど、経済性・運用性・即応性に大きな課題を抱えていた。このため、M-VロケットはJAXA移管後、06年の7、8号機打ち上げまでで廃止になった。
H-IIAロケットは、大型であるため低高度ならば10トンの衛星を軌道上に投入できるが、商用化が進み三菱重工業に移管して打ち上げ費用が半減した現在でも1回100億円程度になる。そこで、人工衛星の軌道投入などのミッションに最適化した小型ロケットとしてイプシロンが登場した。イプシロンの打ち上げ能力は最大1.2トン(地球周回低軌道の場合。オプション形態の太陽同期軌道では450キログラム)程度で、中型の衛星まで軌道投入でき、将来的には1回の打ち上げ費用は30億円以下に抑えられる見通しである。また、毎月あるいは毎週というような高頻度で中・小型の人口衛星を軌道投入することができれば、衛星を運用する各種団体のタイムリーな需要に応えることが可能になる。このため、様々な新技術で簡素化が図られた。この結果、1段発射座据え付けからは7日、搭載する衛星への最終アクセスから3時間というように、組み立てや点検などが極めて短期間で可能になる。地上管制は、ロケットの知能化により、ノートパソコン1台(実用上は冗長化で2台)に集約可能になる。
これまで固体燃料ロケットの開発・生産に携わってきた旧ISASやIHIグループなど企業の技術継承が実現されたことや、打ち上げが06年以降久しく途絶え、廃止が取りざたされていた内之浦宇宙空間観測所が射場となることなどから、関係各方面からの熱い期待が寄せられている。
(金谷俊秀 ライター / 2013年)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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イプシロン(Ε/ε/epsilon)
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
イプシロン
Epsilon Launch Vehicle
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