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インスリノーマ

デジタル大辞泉

インスリノーマ(insulinoma)
膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島にあるβ(ベータ)細胞にできる腫瘍(しゅよう)。インスリン分泌が過剰となり、低血糖を起こす。良性悪性とがある。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

インスリノーマ
 膵臓のランゲルハンス島のB細胞にできる腫瘍.良性も悪性もある.高インスリン血症,低血糖をもたらすことが多い.

出典:朝倉書店
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日本大百科全書(ニッポニカ)

インスリノーマ
いんすりのーま
insulinoma

インスリンを産生する機能性腫瘍(しゅよう)で、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島にあるβ(ベータ)細胞の腫瘍である。古くはインスリンを分泌するランゲルハンス島の腫瘍としてインスローマ(膵島細胞腺腫(せんしゅ))とよばれていたが、ランゲルハンス島からはガストリンやグルカゴンなどを分泌する腫瘍が報告されるようになり、インスリノーマとして区別された。おもな症状は低血糖で、腫瘍細胞から生体の制御を受けず自律的に血糖降下作用をもつインスリンが過剰に分泌されるために、血液中のブドウ糖が正常以下に低くなってしまう。このほか、発汗、ふるえ、動悸(どうき)、不安感、飢餓感、ときには頭痛や眠気などの症状を訴える。重症の場合には、けいれん発作や昏睡(こんすい)に陥ることがある。このような発作は空腹時、とくに明け方に多くみられ、だんだん強まるのが特徴で、食物を摂取すると回復する。

 診断は血糖および血中のインスリン濃度の測定によるが、CTスキャンや膵静脈撮影によって腫瘍を確認することが必要である。治療は原則的には手術で腫瘍を摘出することであるが、手術できない場合は、副腎(ふくじん)皮質ホルモンやストレプトゾトシンなどを経口投与することで、症状の改善がみられることがある。

[高野加寿恵]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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内科学 第10版

インスリノーマ(膵疾患)
 【⇨ 13-2-5)】[清水京子・白鳥敬子]
■文献
Imamura M, Takahashi K, et al: Usefulness of selective arterial secretin injection test for localization of gastrinoma in the Zollinger-Ellison syndrome. Ann Surg, 205: 230, 1987.
Raymond E, Dahan L, et al: Sunitinib malate for the treatment of pancreatic neuroendocrine tumors. N Engl J Med, 364: 501-513, 2011.
Yao JC, Shah MH, et al: Everolimus for advanced pancreatic neuroendocrine tumors. N Engl J Med, 364: 514-523, 2011.

出典:内科学 第10版
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インスリノーマ(糖代謝異常)
概念
 膵β細胞が腫瘍化し過剰に増殖する結果,血糖値に見合わない多量のインスリンが分泌され,空腹時の低血糖を生じる疾患である.多くの場合(約80%),良性の腫瘍で単発であり,空腹時低血糖が特徴的であるが,食後の低血糖が目立つ場合もある.約10%が悪性化したβ細胞の増殖が原因である.多発内分泌腫瘍1型(MEN 1型)の部分症として,認められることもある.
病態生理
 本来の膵β細胞は,グルコース濃度に応じてインスリンを分泌する.しかし,腫瘍化したβ細胞は,脱分化の傾向にあり,グルコース濃度感知能を失い,血糖値が低くてもインスリンを出し続けるため,空腹時低血糖をきたす.症例によっては,腫瘍化にもかかわらず,分化能を保っており,食事に伴ってインスリン分泌が過剰となり,食後に低血糖をきたす場合もある.低血糖に伴う痙攣や異常行動のために,てんかんあるいは精神疾患と誤られる場合も少なくない.
診断
 冷汗やふらつき,意識障害などから,低血糖を念頭におき,インスリノーマの存在を確定する存在診断を行う.まず,外来において,低血糖時に,血糖値と血中インスリン値,C-ペプチド値を測定することが重要である.従来,血糖値とインスリン値からインスリノーマを診断するための指標が示されてきたが,感度や特異度が不十分である. 一般に,低血糖時のインスリン値が3 μU/mL以上である場合に疑われる.確実に低血糖を捕まえるために,十分な監視のもと48~72時間の絶食試験を行うことも考慮する.インスリノーマの患者では,24時間までに67%が低血糖症状を伴う血糖値40 mg/dL以下に至り,48時間までには95%で低血糖を生じたと報告されている(Hirshbergら,2000).45 mg/dL以下の低血糖に至った時点でのインスリン値が3 μU/mL以上でかつC-ペプチド値0.6 ng/mL以上であれば,インスリノーマの存在はほぼ確かである.不正にインスリンを注射していた場合には,C-ペプチド値が0.6 ng/mL以下となる.この絶食試験では,ごく一部の膵島細胞症でも陽性になるとされるが,ほかにはインスリノーマ以外には陽性にはならない.存在が確定したら,次に局在診断に移る.
 局在診断とは,インスリノーマの存在部位を確定することであり,超音波検査やMRI検査を用いた画像診断と選択的動脈内カルシウム注入試験によって行う.インスリノーマはその約半数は径2 cm以下であり,また通常hypervascularであるため,造影剤を用いたダイナミックCTをスライス幅5 mmないしは2 mmで行う.MRIも造影CTと同様に診断的価値は高く,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈し,脂肪抑制画像を得ることでさらに判別が容易となっている.また,超音波内視鏡も局在診断に非常に有用である.インスリノーマの外科手術は容易ではないので,正確な局在診断が不可欠であり,上記の方法を用いて十分な情報を提供する.
 さらに,画像診断で局在が明らかにできなかった場合や,複数の腫瘍の存在が疑われる場合に,選択的動脈内カルシウム注入試験を行う(図13-2-34).これは,血管造影とともに行えるため,さらに得られる情報が豊富となる.インスリノーマの細胞は,正常β細胞と異なり,細胞表面にカルシウム受容体を発現しているため,カルシウムに鋭敏に反応する.そこで,血管造影に続いて,胃十二指腸動脈,脾動脈,上腸間膜動脈,固有肝動脈に選択的にカテーテルを挿入し,グルコン酸カルシウム液を注入し,肝静脈から静脈血を20~30秒ごとに採血して,インスリン値を測定する.腫瘍が当該動脈の支配域に存在すれば,基礎値の2倍以上にインスリン値が上昇する(Guettierら,2009).
治療
 外科手術が基本である.内視鏡的核出術も最近ではよく行われる.インスリノーマに対する薬物治療は,外科手術の待機中あるいは外科手術が不可能な症例に考慮されるべきである.薬物としては,ソマトスタチンアナログであるオクトレオチド(Vezzosiら,2005)とランレオチド,ならびにインスリン分泌に不可欠なATP依存性カリウムチャネルに作用するジアゾキサイドがある.ソマトスタチンアナログは,ソマトスタチン2型受容体を介して,インスリン分泌を抑制することが多いが,インスリノーマの中にはソマトスタチン受容体を発現していないものもあり,その場合には無効である.
低血糖症の鑑別診断
 以上に述べてきたインスリノーマを含む低血糖を呈する疾患の鑑別診断を以下に記す(図13-2-35).低血糖患者をみたら,インスリンとC-ペプチドの測定を行う.インスリンが高値で,C-ペプチドが低値であれば,外因性のインスリンによる可能性が高い.詐病の可能性も考慮する.
 インスリンもC-ペプチドも高値であれば,次に抗インスリン抗体を測定する.抗インスリン抗体が陽性であれば,インスリン自己免疫症候群の可能性が高い.陰性の場合,入院のうえ,48~72時間の絶食試験を行う.前記のように,高インスリン血症を伴う低血糖が認められれば,インスリノーマを強く疑い,その局在診断に移る.絶食試験で陰性であった場合は,反応性低血糖である場合が多い.血糖が上昇しやすい単純糖を含む食品の摂食を控えさせ経過を観察する.α-グルコシダーゼ阻害薬が有効なこともある.
 低血糖発現時のインスリン値が低値であった場合,血糖を上昇させるコルチゾール,カテコールアミンやグルカゴンの分泌不全をきたす疾患の可能性を考慮し,これらの測定を行う.これらの内分泌系に異常がない場合には,腫瘍関連低血糖を疑いIGF-2の検索を行う.[石原寿光]
■文献
Guettier J-C, et al: Localization of insulinomas to regions of the pancreas by intraarterial calcium stimulation: The NIH experience. J Clin Endocrinol Metab, 94: 1074-1080, 2009.
Hirshberg et al: Forty-eight-hour fast: the diagnostic test for insulinoma. J Clin Endocrinol Metab, 85: 3222-3226, 2000.
Vezzosi D, Bennet A, et al: Octreotide in insulinoma patients: efficacy on hypoglycemia, relationships with Octreoscan scintigraphy and immunostaining with anti-sst2A and anti-sst5 antibodies. Eur J Endocrinol, 152: 757-767, 2005.

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六訂版 家庭医学大全科

インスリノーマ(インスリン産生膵島細胞腫)
インスリノーマ(インスリンさんしょうすいとうさいぼうしゅ)
Insulinoma (Insulin-producing islet cell adenoma)
(内分泌系とビタミンの病気)

どんな病気か

 低血糖症状を起こす代表的疾患のひとつです。膵臓(すいぞう)ランゲルハンス(とう)でインスリンを産生するβ(ベータ)細胞が腫瘍(しゅよう)化して起こります。90%は良性ですが、悪性のものもあります。多発性内分泌腫瘍症(たはつせいないぶんぴつしゅようしょう)1型(コラム)の部分症であることがあります。

原因は何か

 正常のβ細胞は血糖が低下するとインスリンの分泌をやめますが、インスリノーマの細胞はこの調節ができずにインスリンを分泌し続けるため、低血糖症状を引き起こします。

症状の現れ方

 毎食前や夜間などの空腹時に、冷汗、動悸(どうき)頻脈(ひんみゃく)、手の震えが出現します。これらは、自律神経が低血糖に反応して興奮するためと考えられています。さらに血糖が低下すると、脳への糖供給不足により、思考能力低下や異常行動が出現します。このまま放置されるとけいれんが起こり、昏睡(こんすい)となって、生命の危険をもたらします。

検査と診断

 病的な低血糖は①空腹時に前述の症状を伴い、②血糖値の低下が証明され(大まかな目安として50㎎/㎗以下)、③血糖を上昇させる処置により症状が改善するもの、と定義されています(ウィップルの3徴)。低血糖発作時に血中インスリンが高値であれば、インスリノーマが疑われます。

 この際、人為的低血糖(インスリン注射薬や糖尿病内服薬の不適切な使用)でないことを確認する必要があります。また抗不整脈(ふせいみゃく)薬(リスモダン、シベノールなど)やキノロン系抗菌薬(クラビットなど)のなかには、低血糖を偶発的に起こさせるものがあり、使用中の薬剤を詳しく調べておく必要があります。

 インスリノーマの確定診断は、絶食試験によります。これは最長72時間まで食事をとらず水分摂取のみで過ごし、採血を繰り返す検査です。途中で低血糖が誘発されれば終了で、この時の血中インスリンおよびCペプチド(自分の膵臓で作られたインスリン量を反映する物質)が低下不十分であれば、インスリノーマと診断されます。

 インスリノーマは直径1㎝程度と小さいものが多く、発見しにくいため、場所の特定には通常の腹部超音波検査やCT検査よりも、超音波内視鏡検査が優れているとされます。また、選択的動脈内刺激剤注入試験(SASIテスト)と呼ばれるカテーテル検査が有用です。これは大腿(だいたい)動脈(注入用)・大腿静脈(採血用)から1本ずつカテーテルを挿入し、膵臓に流れ込むいくつかの動脈のうち、どの枝にインスリン分泌刺激剤(カルシウム液)を注入した時に、最も高濃度のインスリンが膵臓から肝臓を通って流れ出てくるかを比較する検査です。

 この検査で特定される動脈の流域と、超音波内視鏡に映る腫瘍の場所が一致すれば、「その腫瘍からインスリンが大量に分泌されている」という証拠を得ることができます。

治療の方法

 手術による腫瘍の切除が第一です。切除が不能もしくは不完全な場合には、ジアゾキシド(アログリセム:2008年国内承認)の内服により、インスリン分泌の低下が図られます。保険適応外ですがオクトレオチド(サンドスタチン)の注射も有効なことがあります。

病気に気づいたらどうする

 内分泌代謝内科、あるいは消化器内科の受診がすすめられます。

二川原 健, 須田 俊宏

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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