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ウィルソンの「十四か条」【うぃるそんのじゅうよんかじょう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

ウィルソンの「十四か条」
うぃるそんのじゅうよんかじょう

……われわれがこの戦争に参戦したのは、権利の侵害が生じ、それがわれわれに痛切に響き、もしそれを是正し、又世界でその再発の惧が確実に防止され、保障されない限り、わが国民の生存を堪え難きものとしたからである。それ故、この戦争でわれわれが要求していることは、なにもわれわれにのみに関係することばかりではない。それは、世界が生存するために適し且安全なるものになるということである。そして、特に、わが国民の如く、自らの生活を営み、自らその政治制度を決定し、暴力と利己的な侵略に対して、世界の他の人民によって正義と公正な取扱いを確保しようと欲しているすべての平和愛好国民にとって、世界が安全なるものになることなのである。世界のすべての人民は、この事に関しては実質的に利益を同じうする盟友であり、そして、われわれとしては、他の国民に対して正義が行われない限りわれわれに対しても正義はなされないであろうことを、われわれははっきり知っている。それ故に、世界平和の計画は、われわれの計画でもある。そしてその計画、すなわち唯一の実現可能なる計画と、われわれが考えているものは次の如きものである。

 第一条、〔秘密外交の排撃〕 平和条約は、秘密裡に作製されてはならず、公開されなければならない。規約がつくられた後は、いかなる種類の国際的秘密協定もなさるべきでなく、且、外交は常にかくし立てすることなく公衆の面前で行われなければならない。

 第二条、〔公海自由の原則〕 平時戦時をとわず、領海外の公海においては、絶対的な航行の自由が確立されねばならない。但し、国際協約の実施のために行われる国際的処置として海上の全域あるいは局部の封鎖はこの限りではない。

 第三条、〔通商障壁の撤廃〕 すべての経済的障壁は、出来得る限り除去されねばならない。又、平和に協力し平和の維持に相提携しようとするすべての国家内においては平等なる通商の条件が確立されねばならない。

 第四条、〔軍備縮小〕 国家の軍備は、国家の安全に必要とされる最小限度まで縮小されるという適当な保障が相互に行われなければならない。

 第五条、〔植民地要求の調整〕 すべての植民地に対する要求を、自由に、虚心坦懐に且絶対的公平に処理するには、すべてのかかる植民地の主権問題を決定するに際して、当該植民地住民の利益が、将来その主権を決定さるべき政府の公正なる要求と平等の比重を持つべきであるという原則が厳重に遵守されることが、その基礎とならなければならない。

 第六条、〔ロシアの回復〕 すべての国の軍隊は、全ロシア地域から撤退しなければならない。又、ロシアに関するすべての問題の解決は、ロシア自身の政治的発展とその国策をかれら自身に自由に決定せしめるために、自由にして何らの妨害なき機会を、ロシアに得さしめるため、ロシア以外の世界の国々が最善にして最も自由なる協力を与えることを保障し、ロシア自身の選択する政治制度の下に自由なる国家社会に参加することを心から歓迎することをロシアに保証し、且、歓迎のみならず、ロシアが必要とし、又欲するあらゆる種類の援助をも保証することが必要である。来るべき数か月中にロシアの友好諸国がロシアに与える待遇は、諸国自身の利益とは別に、ロシアの要求をいかに理解し、又諸国がいかに聡明な且非利己的な同情を持っているか、の善意に対する試金石となるであろう。

 第七条、〔ベルギーの回復〕 全世界がこれに同意するであろうが、ベルギーからも撤兵し且原状回復が行われなければならない。又、他のすべての自由なる国家と同様、その享有する主権を制限しようとすることなしに、その領土は回復されねばならない。自由なる諸国が自ら他国の政府との関係について相互に決定した法の下において、諸国間の信頼を回復するためには、この一つの行為以外に他にいかなるものも存在しないであろう。この和解的な行動がとられなければ、国際法の全機構と効力は永遠にそこなわれるであろう。

 第八条、〔仏領の回復〕 全フランス領土は解放され、侵略を蒙った地は回復されねばならない。且、アルサス・ローレン問題で1871年プロシアがフランスになした不当行為は、約五十年間世界の平和を脅威して来たものであるから、世界の利益のために平和をもう一度確立するために、矯正されなければならない。

 第九条、〔伊国境の調整〕 イタリア国境の再調整は、明かに民族を識別し得るような線に沿って定められねばならない。

 第十条、〔墺洪国の自治〕 われわれは、オーストリア・ハンガリーの人民の国際的地位が保障され確立されることを希望するから、かれらに自治の発展に最も自由なる機会を与えなければならない。

 第十一条、〔バルカン諸国の回復〕 ルーマニア、セルビア及びモンテネグロからも撤兵しなければならない。外国軍隊によって占領された地域は回復され、セルビアは自由にして確実なる海への出口が保障され、バルカン諸国の相互関係は歴史的に確立された従属関係と国民性の線に沿うて友好的なる協議により決定されねばならない。バルカン諸国に対しては、それぞれの政治的経済的独立及び領土保全の国際的保障が取極められなければならない。

 第十二条、〔トルコ少数民族の保護〕 現在のオットマン(オスマン)帝国中のトルコ人居住地域は安全なる主権が保障されねばならない。しかし、現在トルコ人の支配下にある他民族は、明白な生命の保障と、絶対的に自由なる自治発展の機会を与えられねばならず、又、ダーダネルス海峡は国際的保障の下にすべての国の船舶の自由通過及び通商のために永久に開放されねばならぬ。

 第十三条、〔波蘭の独立〕 ポーランド人のためには独立国家が建設されねばならない。その国家には、明かにポーランド人の居住する地域が含まれねばならず、又、自由にして確実なる海への出口が保障されねばならない。且その国家の政治的経済的独立及び領土保全は国際的協約によって保障されねばならない。

 第十四条、〔国際連盟の結成〕 大国たると小国たるとを問わず同様に、政治的独立と領土保全の相互的保障を行う目的のために、広く諸国家の連合組織が、特別の規約の下に形成されなければならない。

 これらの根本的な悪の修正、善の主張に関して、われわれは帝国主義者に対して協同して当ったすべての政府及び人民の親しい盟友であることを感ずる。われわれは利害において離れてはならないし、目的において分れてはならない。われわれは最後まで団結しているのである。

 かくの如き協約や協定を得るために、われわれは喜んで、それが達成されるまで、戦い、又戦いつづけるであろう。それは、戦争を挑発した主たる誘因――それらはこの計画によって除去され得るものであるが――を除去することによってのみ獲得し得る公正にして安定した平和をもたらし且求める権利を、われわれは欲して居るからに外ならない。われわれは、ドイツの偉大さを妬むものでは決してなく、又、この計画の中にもドイツの偉大さを傷つけるものはなにもない。われわれは、ドイツがかつて示した輝かしい称嘆すべき学問上のあるいは平和的産業の業績その優秀性を妬むものでは決してない。われわれは、ドイツを傷つけんとしたり、あるいはいかなる方策によってもその正当なる勢力又は権力を制限せんと欲するものではない。もし、ドイツが正義と法と公正なる協議による規約の下に、われわれ及び世界の他の平和愛好諸国と協力しようと欲するならば、われわれは武器を執って戦うことも欲しないし、通商上の敵意ある措置を以て争うことも欲していない。われわれは、ドイツが世界の人民の間において、すなわちわれわれの現在住む新しい世界の人民の間において、支配者の地位でなく平等なる地位を受け容れること、それのみを欲するのである。

 われわれはドイツの政治制度のいかなる変化、修正をも示唆しようとは考えていない。しかし、率直にいわねばならぬが、われわれは、次のことはわれわれとしてドイツといかなる賢明な交渉を行うに当っても先ず必要であると思う。すなわち、ドイツのスポークスメンがわれわれにものを言うとき、かれらは誰の意見を語っているのかを、われわれは知らねばならぬ。ドイツ帝国議会の多数意見か、軍部あるいは帝国主義的支配を信条とする人々の意見であるか、を知らねばならぬ。

 われわれはすでに具体的に充分に述べたので、これ以上の疑惑も疑問もないことであろう。私が概観したこの全計画によって一貫する一つの明かな原則がある。それはすべての人民及び民族に対する正義の原則であり、強者も弱者もお互いに自由と安全との平等の条件の下に生存する権利でもある。この原則がその基礎となっていない限り、いかなる国際的正義の機構の一部たりとも存立し得ない。合衆国人民が他の原則の下に行動することはあってはならない。そしてわれわれ合衆国人民は、この原則を擁護するために、生命、名誉、その他かれらの持つすべてのものを捧げる用意がある。最高にして最後の人類の自由のための戦いの道義的最高潮はやって来た。そしてわれわれは、われわれの持つ力、われわれの最高の目的、われわれ自身の誠意と献身とを、この試煉のために投出す用意がある。

   アメリカ学会訳編『原典 アメリカ史 第五巻 現代アメリカの形成 下』(岩波書店刊)所収、中屋健弌訳による

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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