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カウンセリング

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

カウンセリング
counseling
心理相談のこと。健常なクライアント (来談者) がいだく心配,悩み,苦情などを,面接,手紙,日記などを通じて本人自身がそれを解決することを援助する方法。精神医学では,しばしば精神療法と同義に用いられる。積極的に忠告説得を与える指示的カウンセリングと,それを与えない非指示的カウンセリングとがある。後者は C.R.ロジャーズが 1942年に提唱したもので,クライアント中心に話合いを進め,クライアントの発言に対する一切の評価判断を差し控え,カウンセラーとの間に受容的,許容的な雰囲気をつくり,クライアントが自己洞察を深め,人格的に成長することにより精神的問題を克服していくのを援助する。アメリカでは,専門のカウンセラーの資格が規定されている。教育場面では,学校における児童生徒の基本的な活動単位である学級を,教育的な目的に即して組織化し,教育活動を充実させていく教師や専任のカウンセラーの仕事をいう。教師にとっては,法規の適用,諸事務の処理による学級管理とは異なり,主体的な意志に支えられた教育活動であるとされる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

カウンセリング(counseling)
学業や生活、人間関係などで悩みや適応上の問題をもつ人に対して、心理学的な資料や経験に基づいて援助すること。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

カウンセリング【counseling】
英語で〈相談すること〉を意味するが,今日の日本では単なる相談や助言よりも専門的な意味をこめて用いられるときと,そうでないときとがある。アメリカにおいて,最初職業指導個人指導など,専門家が〈指導〉することが熱心に行われたが,それでは不十分であり,話合いによって方向を見いだしてゆくことがたいせつであるとの考えから,1940年ころよりカウンセリングが盛んとなってきた。その過程において,それは個人の可能性を開発していくことができることが明らかとなってきたので,カウンセリングは,単なる相談のを越えて,人間の自己実現の可能性をひき出していく方法として重要視されるようになった。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

カウンセリング【counseling】
個人のもつ悩みや不安などの心理的問題について話し合い、解決のために援助・助言を与えること。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

カウンセリング
かうんせりんぐ
counseling
さまざまな心理的な問題や不安などを抱え、その解決・解消を求めようとする個人(クライエントclient。クライアントとよぶ場合もある)に対して、専門的な視点・観点から心理的な援助・支援をすすめる対人行為の総称である。[増田 實]

カウンセリングと心理療法

他者への心理的な援助・支援行為は、その問題状況に応じて、〔1〕治療的therapeutic、〔2〕予防的preventive、〔3〕進展的developmentalな働き(機能)に大別されてすすめられるが、カウンセリングは、これら三つの機能を包含した対人的援助・支援行為である。これに対して、心理的外傷(トラウマtrauma)などに基づく問題をもつ個人への対応は、治療的な援助・支援としてなされるので、これを心理療法(精神療法psychotherapy)とよんでいる。
 カウンセリングと心理療法は、このように心理的な援助・支援という共有部分をもちながら、後者における問題などの特異性がとくに強調され、カウンセリングと区別してとらえられることが多い。[増田 實]

分類と理論

実際のカウンセリングでは、クライエントの問題などはさまざまであるから、それらに対する具体的な対応(アプローチあるいは対処の仕方)はそのクライエントに即して、その機能を生かしてすすめられる。その実践領域には、教育・保育、厚生・福祉、医療・看護、産業・経営、矯正・司法、防衛(自衛隊)など、生活や生きることのすべてが含められる。
 カウンセリングを導く理論は、多くの心理臨床的な事実や事象の探究・検証などを通して構築され、また再構成されて、今日ではさまざまな面からの探索に伴って、多くの理論が心理的援助・支援の実践に生かされている。そのうち代表的な理論は次の三つである。
(1)精神分析的カウンセリング 精神科医フロイトによって構築された心理治療に基礎をおき、クライエントの自由連想を中心にすすめられ、クライエントの内面の深層を分析することを通して、そのなかに潜むコンプレックスを解除しようとする。
(2)行動療法的カウンセリング 行動主義的カウンセリングともよばれる。1950年代後半からカウンセリング理論として構築され始めたが、行動理論と学習理論に立脚し、クライエントの行動の変容が目ざされる。悩みや不安、恐怖などを個人の行動の面から解決・解消するよう、さまざまな対応がくふうされている。
(3)来談者中心的カウンセリング パーソンセンタード・カウンセリングperson-centered counselingともよばれるが、ロジャーズにより創始・提唱され、個人の成長力や問題解決力を信じ、それにゆだねてクライエントの自己実現を図りながらすすめられる心理的対人援助・支援である。
 これら以外にもカウンセリングに関連する理論が多く実践されているが、心理療法的色合いの濃いアプローチ・手法として、次のような理論があげられる。
(1)認知行動療法 エリスA. Ellis(1913―2007)やベックA. T. Beck(1921― )などによる認知と行動の不一致を修復しようとする心理治療法。
(2)自律訓練法 ドイツの精神科医シュルツJ. H. Schultz(1884―1970)により創始され、注意の集中、自己暗示の練習などにより、全身の緊張を除いて心身の状態を自分で調整できるようにすすめる訓練的治療法。
(3)芸術療法 音楽が人間の生理と心理に及ぼす機能的効果を応用した音楽療法、また、絵画や造形、フィンガー・ペインティングなどを含む作業を行ってすすめる心理療法、あるいは、今日一つのアプローチとして確立されてきたコラージュ療法。
(4)催眠療法 催眠そのものの治療効果をねらって実施する場合と、催眠を利用してほかの心理療法の効果を付加的に高めようとする場合があるが、それらを含めた催眠の特性を利用して行う心理治療。
(5)森田療法 精神医学者森田正馬(まさたけ)(1874―1938)の開発による神経症患者を対象とした精神療法であり、症状をあるがままに受け入れる一方、行うべきことを提示して人間に備わる自然治癒力の回復を促進する心理治療法。
 また、集団的なアプローチとして次のような療法などがある。
(1)家族療法 家族関係における機能不全を克服し、それを機能的なシステムに変化するよう介入援助する方法。
(2)サイコドラマ(心理劇) 心理学者のモレノによって創始され、演劇による心理治療効果(カタルシスなど)を利用しながら、自己啓発、教育など治療以外にも適用される集団的方法。
 さらに、次のような理論が心理的な援助・支援の実践に適用されている。
(1)ゲシュタルト療法 パールズF. S. Perls(1893―1970)によって提唱された方法で、身体言語(身体感覚などから発することば)への気づきを深めることなどを通して、身体と心の一致した、その人らしさ、全人的な存在を体得するよう援助する方法。
(2)現実療法 グラッサーWilliam Glasser(1925― )により提唱され、生存、所属、力、自由、楽しみの五つの基本的欲求をバランスよく満たすことができるように援助する方法。
(3)実存的心理療法 ビンスワンガー(ビンスバンガー)、ボスMedard Boss(1903―1990)、フランクルなどによる実存哲学や実存心理学に依拠し、自由と責任、自己同一性、自己実現などを目ざしながら、個人のあり方を変容するように援助する方法。
 これらの理論は、いずれもその支柱をなす人間観(人間をどのような存在としてとらえるか)に基づいて導き出されているが、G・W・オールポートの所論によれば、これらの人間観は、〔1〕反応する存在a reactive being、〔2〕深層で反応する存在a reactive being in depth、〔3〕生成過程にある存在a being in process of becomingの三つに大別してとらえられるが、行動療法的カウンセリングは〔1〕から、精神分析的カウンセリングは〔2〕から、来談者中心的カウンセリングは〔3〕から導き出されている、といえる。[増田 實]

実践における原則と技法

カウンセリングの実践に際しては、その相手=クライエントがだれであっても、一個の人間a human beingとしてみるということが肝要であるが、そこで形成されるクライエントとの関係では、次の三つが顧慮され、そして、心理臨床的対人援助・支援者(カウンセラーなど)に体得されるよう求められる。
(1)相手の内的世界に向かうことbeing-for(his/her inner world) クライエントの外的諸条件(年齢、性別、職業など)にとらわれず、その存在そのもの、内面の動きに目を向け、できるかぎり評価的にとらえずにそれ自体を尊重するというあり方(態度)をもつ。
(2)相手の内的世界に触れることbeing-in(his/her inner world) クライエントの内面の流れ、すなわち、考えや感情などは、瞬時瞬時に変化しながら動いているが、その時々の「いま、ここで」here and nowのそれらを受け止め、そして、伝えていく。これには「傾聴」が欠かせない。これを続けていくなかで、共感empathyや共感的理解empathic understandingが生じ、クライエントとの相互的な深いつながりやクライエントの問題解決・解消に導かれる。
(3)相手の内的世界とともに歩むことbeing-with(his/her inner world) クライエントの内側では、否定と肯定、激と静、強と弱などさまざまな考えや感情の動きが惹起(じゃっき)するが、クライエントとの心理的なつながりをもちながら、この動きに巻き込まれずに、ほどよい距離を保ってともに歩む。これがなされるには、対人援助・支援者(カウンセラーなど)として器の大きさや柔軟さ、感受性の豊かさなどが問われるが、クライエントとのこのような関係の成立がその援助・支援に結びつく。
 以上の三つは、ロジャーズのいう3条件(無条件の積極的関心、共感的理解、自己一致)にほぼ符合するが、これらはカウンセリングの実践においてその土台をなすと考えられ、そして、それぞれのカウンセリング理論の展開、技法の適用や活用は、この土台の上で成り立つ、という認識が望まれる。[増田 實]

現状と課題

カウンセリングということばが今日ほど多く使われることは、これまでなかった。それは、個人的また社会的な問題解決・解消に対するカウンセリングへの期待の表れである、と思われる。
 これらの期待にこたえ、また、カウンセリングや心理療法の果たす役割をより確かにするため、カウンセリングに関する資格化が広く求められてきている。そのなかで、医師、弁護士などのような、いわゆる国家資格までにはいまだ至っていないが、1980年代の後半以降、準公的性格を有する資格が急速に制度化されるようになった。日本臨床心理士資格認定協会による「臨床心理士」をはじめ、日本カウンセリング学会の「認定カウンセラー」、日本産業カウンセラー協会などの諸機関・団体による認定資格(「産業カウンセラー」など)がそれである。これらの資格の生かされ方はそれぞれ異なるが、「臨床心理士」の資格は、とくに「スクールカウンセラー」としてもっとも多く活用されている。
 しかし、カウンセリングに関して、一般的には誤りのない理解や認識が得られているとはいえない現状であり、誤解も多い。また、カウンセリングということばが適切な使われ方をされていない場合も散見する。さらに、低レベルでのカウンセリングがなされていることによる弊害も生じている。
 カウンセリングに関する適切な啓蒙(けいもう)とともに、カウンセリング関係有資格者の質の向上が、今後よりいっそう求められる。また、カウンセリングのみでは対応しきれない問題も多いので、その実施に際しての限界を見極めることも課題の一つにあげられよう。[増田 實]
『水島恵一・岡堂哲雄・田畑治編『カウンセリングを学ぶ』(1978・有斐閣) ▽西光義敞著『暮らしの中のカウンセリング』(1984・有斐閣) ▽井出美智子・増田實・見藤隆子著『ヘルス・カウンセリング』(1987・教育医事新聞社) ▽畠瀬直子著『カウンセリングと「出会い」』(1991・創元社) ▽佐治守夫著『カウンセリング』(1992・日本放送出版協会) ▽増田實編著『健康カウンセリング』(1994・日本文化科学社) ▽伊東博著『カウンセリング』第4版(1995・誠信書房) ▽河合隼雄著『カウンセリングを考える 上・下』(1995・創元社) ▽佐治守夫・岡村達也・保坂亨著『カウンセリングを学ぶ――理論・体験・実習』(1996・東京大学出版会) ▽国分康孝著『カウンセリングの原理』(1996・誠信書房) ▽中西信男・葛西真記子・松山公一著『精神分析的カウンセリング――精神分析とカウンセリングの基礎』(1997・ナカニシヤ出版) ▽菅野泰蔵著『カウンセリング解体新書』(1998・日本評論社) ▽内山喜久雄・中沢次郎監修、亀山直幸他編『産業カウンセリング事典』(1999・川島出版) ▽氏原寛・小川捷之・近藤邦夫他著『カウンセリング辞典』(1999・ミネルヴァ書房) ▽河合隼雄著『カウンセリングを語る 上・下』(1999・講談社) ▽伊藤義美・増田實・野島一彦編著『パーソンセンタード・アプローチ』(1999・ナカニシヤ出版) ▽南博・林幸範著『よくわかる心理カウンセリング――悩める心の相談相手』(2000・日本実業出版社) ▽氏原寛・村山正治著『ロジャーズ再考――カウンセリングの原点を探る』(2000・培風館) ▽コリン・フェルサム、ウインディ・ドライデン著、国際カウンセリング協会監訳『カウンセリング辞典』(2000・ブレーン出版) ▽デイブ・ミャーンズ、ブライアン・ソーン著、伊藤義美訳『パーソン・センタード・カウンセリング』(2000・ナカニシヤ出版) ▽増野肇著『森田療法と心の自然治癒力――森田式カウンセリングの新展開』(2000・白揚社) ▽諸富祥彦編『人生にいかすカウンセリング』(2011・有斐閣)』

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精選版 日本国語大辞典

カウンセリング
〘名〙 (counseling) 生活や一身上のことで悩みをもつ人に対し、話し合うことによって、その人が自ら解決できるように援助する活動。二〇世紀初頭のアメリカで始まり、進路相談、学業相談のほか精神的健康の回復、維持など広い分野で応用されている。
※こちら社会部(1964)〈菊村到〉一三「アメリカでは、このカウンセリングというシステムが、ずいぶん発達しているが」

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最新 心理学事典

カウンセリング
カウンセリング
counseling
カウンセリングは,その発展の経緯から多義的に使用されて現在に至っている。語源は「ともに考慮すること」を意味するラテン語のconsiliumに由来し,相談する・協議する(take counsel)と,意見を述べる・助言する(give counsel)の二つの意味をもつ。『旧約聖書』(箴言)の英訳では,「助言者」はcounselor,そして賢者の「勧め」はcounselと書かれている。カウンセリングは人類の歴史始まって以来,人びととの生活の中で知恵者が行なっていた一味違った「相談」とか「助言」を意味していたと受け止めることができる。

 知恵者の相談・助言が科学的基礎のある働きとして確立され,カウンセリングの先駆となったのは,1909年に出版されたボストン職業局のパーソンズParsons,F.の著書『職業の選択Choosing a Vocation』だといわれている。彼の提示した青年の賢明な職業選択に必要な3要素,①個人の特性・特徴の発見,②職業に必要な能力の分析,③個人と仕事の適合は,1910年代に始まった心理測定運動に支えられて,職業指導vocational guidance,特性因子理論によるカウンセリング,キャリア・カウンセリングの原型となった。

 カウンセリングが心理学に基づいた専門的行為という意味で使われたのは1938年,アメリカにおいてパターソンPatterson,O.G.,シュナイドラーSchneidler,G.G.,ウィリアムソンWilliamson,E.G.による著書『学生ガイダンスの技法Student Guidance Techniques』においてである。翌年,ウィリアムソンは『学生カウンセリングの方法:臨床カウンセラーの技法マニュアルHow to Counsel Students:A Manual of Techniques for Clinical Counselors』を著わし,カウンセリング・カウンセラーという用語を使って,特性因子理論に基づく学生支援論を展開した。カウンセリングとは,学生の適合,環境の変化,適切な環境の選択,必要なスキルの学習,態度の変容を支援することであり,臨床的カウンセリング技法とは,分析,総合,診断,予後,カウンセリング,フォローアップの6段階を踏んだ個別対応であるとした。

 ところが,1942年ロジャーズRogers,C.R.が『カウンセリングと心理療法Counseling and Psychotherapy』で,カウンセリングと心理療法psychotherapyは,個人との持続的・直接的な接触によって,その個人の行動・態度の建設的な変容をもたらす面接であり,基本的に同じ方法を活用しているとして両語を互換的に用いた。このことにより,両語を区別する立場とほぼ同じとみなす立場の違いについての議論が続くこととなった。その結果,教育的支援と治療的支援を区別して,開発的カウンセリングと治療的カウンセリングとよぶこともある。

 2004年,日本カウンセリング学会が発表した定義では,カウンセリングとは,クライエントが尊重される人間関係を基盤として,クライエントが自己資源を活用して人間的に成長し,自立した人間として充実した社会生活を営み,生涯において遭遇する諸問題の予防と解決のための専門的援助活動としている。2010年,アメリカ・カウンセリング学会(ACA)は新たなカウンセリングの定義を採択し,「多様な個人・家族・集団がメンタルヘルス,心身の快適性,教育,キャリア目標の達成をエンパワーする専門的な関係」としている。以上のような経緯から,カウンセリングとは,心理学に基礎をおいた成長モデル指向の支援関係と考えることができる。 →心理療法 →多文化間カウンセリング
〔平木 典子〕

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