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クラッキング(石油化学工業)【くらっきんぐ】

日本大百科全書(ニッポニカ)

クラッキング(石油化学工業)
くらっきんぐ
cracking

広義には物質(有機化合物)の分解を意味するが、狭義には石油精製および石油化学工業で行われている炭化水素の炭素‐炭素結合の切断を伴う反応のことである。この場合は、原料油をより低沸点の炭化水素へと転化するものであり、分解ばかりでなく、水素化・脱水素、異性化などを包含した複雑な反応である。石油のクラッキングプロセスには、大別して熱分解法、接触分解法および水素化分解法がある。

[八嶋建明]

熱分解法

高温加圧下で行う分解法。1913年にガソリンの製造を目的に開発された方法であるが、生成するガソリン留分のオクタン価が低いため、1940年代以降ではガソリン製造用としてはほとんど行われていない。1950年代以降では、重質残油を液相中温和な条件下で熱分解し、適当な粘度と流動点をもつ重油を製造する方法(ビスブレーキング法)、および過酷な条件下で熱分解し、軽油留分とコークスを製造する方法(コーキング法)が実施されている。一方、1960年代以降の石油化学工業の発展により、エタンからナフサまでの石油の軽質留分を水蒸気存在下700~1400℃で熱分解し、石油化学原料であるエチレン、プロピレンを主体とする各種オレフィン類、およびベンゼンなどの芳香族炭化水素を製造する方法が大規模に行われている。

[八嶋建明]

接触分解法

酸性を有する固体触媒を用いて行う分解法。生成するガソリンのオクタン価は熱分解法よりもはるかに高い。これは接触分解がカルべニウムイオンR3C+を中間体として進行するため、生成物が枝分かれしたイソオレフィンおよびイソパラフィンに富むことに起因している。主として減圧軽油を原料とし、高オクタン価ガソリンを製造することを目的としている。1960年代以降は合成ゼオライト(沸石、アルミノシリケート)を合成シリカ・アルミナに混合した触媒を用い、流動床式反応装置により実施されている。1990年代からは、石油のおもな需要が重油からガソリンや軽油といった自動車用燃料へと変化したために、重質油を原料とした残油接触分解が主流となっている。このため、触媒も中心的素材は変わらないが、重金属捕捉剤(ほそくざい)やSOx(硫黄(いおう)酸化物)捕捉剤など多くの添加剤が加えられ複雑な組成で構成されている。また2000年以降では、副生成物の低級オレフィンのうち、プロピレンの割合を高めることも要求されている。

[八嶋建明]

水素化分解法

ナフサから残油に至る石油系原料を、水素の存在下高温高圧で行う分解法。液化石油ガス(LPG)、高オクタン価ガソリン、灯・軽油、ジェット燃料が製造できる。ハイドロクラッキングともいう。1960年代にはナフサからのLPG製造に、1980年代からは灯・軽油製造のために、また1990年代からは残油の軽質化のためにおもに用いられている。触媒には、水素化‐脱水素能を有する白金、パラジウムなどの金属(不純物の少ない軽質油原料の場合)あるいはニッケル‐モリブデン硫化物、コバルト‐モリブデン硫化物(硫黄、窒素分を含む重質油原料の場合)と、分解機能を有する強い固体酸であるシリカ・アルミナおよびゼオライトを組み合わせた二元機能触媒が用いられ、分解と水素化の二つの反応が組み合わさって進行する。反応器は、原料により固定床、移動床、沸騰床、スラリー床が使い分けられている。生成物中にはイソパラフィンとシクロパラフィンが多く含まれる。原料および製品が広範囲であることが特徴である。

[八嶋建明]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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