@niftyトップ

辞書、事典、用語解説などを検索できる無料サービスです。

コールタール

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

コールタール
coal tar
石炭の乾留によって生じる黒い粘稠な液体。そのままで木材防腐剤などにも用いられるが,大部分は蒸留によって各種留分に分けられ,さらに工業的に分離,精製されて,染料,薬品,香料,合成樹脂,可塑剤,乳化剤,溶剤などの製造に用いられている。 17世紀中頃に J.ベッハーにより発見。 1792年イギリスでガス灯が用いられるようになり,石炭ガスの副生成物として多量につくりだされるようになったが,利用価値はほとんどなく大部分は廃棄されていた。最初に工業的に利用されたのは 1820年,C.マッキントッシュが防水布用のゴム溶液をつくるのにコールタールの揮発油を使用したときからで,25年頃からはコールタール蒸留物のクレオソート油が鉄道の枕木の防腐剤として用いられるようになり,42年にはタールピッチ練炭に使用されるようになった。 45年 A.ホフマンがコールタール蒸留物からベンゼンを抽出,56年 W.パーキンが最初のコールタール染料を合成,68年 C.グレーベがアリザリンの合成に成功するに及んで重要な化学工業原料となるにいたり,1907年 L.ベークランドがフェノール樹脂を合成して,コールタール工業に新しい分野を開いた。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

コール‐タール(coal tar)
石炭の高温乾留で得られる黒色の油状液体。ベンゼントルエンアントラセン石炭酸クレゾールなどを含む。木材の防腐塗料、染料・火薬・溶剤などの原料にする。石炭タール

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

コールタール【coal tar】
石炭の高温乾留によって得られる黒色の粘稠(ねんちゆう)な液体生成物をいう。低温乾留で得られる低温タールと区別するときは,とくに高温タールとも呼ばれる。石炭に対する収率は,原料とする石炭の種類や乾留の条件によって異なるが,3~6%(重量)である。昔は木材の防腐剤などの用途しかなかったが,コールタールの成分に関する化学的研究が進むにつれ,その工業的な利用の道がしだいに開かれ,19世紀から20世紀前半にかけては,コールタールを中心とする石炭化学は有機合成化学工業の花形として不動の地位を占めていた。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

コールタール
こーるたーる
coal tar

石炭を乾留したとき生成する茶褐色または黒色の粘稠(ねんちゅう)な液状物質。低温乾留で得られる低温タールと高温乾留で得られる高温タールとがあるが、通常は前者をさすことが多い。コールタールからは石油と同様に工業上重要な化学物質が得られる。

 コールタールの最初の用途は防腐剤であった。大航海時代以来、帆船の用材、ロープの塗装用の木タールは高価であったから、17世紀ごろすでにイギリスではその代替品として使用され始めた。19世紀になると都市ガス工業がおこり、大量のガス液やタールが副生するようになったため、防腐剤としての用途だけでは処理できず、河川に放流されて重大な環境汚染を引き起こした。当時の人々はコールタールを「悪魔の水」とよんだほどで、ガス会社はこれを捨てる費用、あるいはその被害の賠償費を計算に入れてガス料金を定めなければならなかった。しかし、1838年にイギリスのベセルJohn Bethellがクレオソートを分離して木材防腐に利用することを考案(ベセル法という)し、これを契機としてタールの大規模な蒸留が行われるようになった。当時、鉄道建設が盛んに行われており、大量の枕木が必要とされていたのである。その後、タール中にベンゼン、トルエン、ナフタレン、アントラセンなどの有用物質が発見され(これらの研究の中心となったのは、招かれてロンドンの王立化学学校教授となったドイツのA・W・ホフマンである)、染料その他の有機化学工業原料として新たな用途が開かれて(染料として有名なモーブ、アリザリンはコールタールの研究から合成されたものである)、タール蒸留工業はいっそう発展した。一方、合成化学工業の発達に伴って、染料の原料としてベンゼン、火薬の原料としてフェノール(石炭酸)やトルエンの需要が増大したため、石炭ガス中から粗軽油を直接回収する方式が開発され、19世紀末にはほぼ現在の方式に近い副産物回収式コークス炉が建設されるようになった。

 コールタールの比重は1.1~1.3で水より重く、数百種の複雑な成分を含んでいる。おもな分留製品はナフタレン、フェノール類、クレオソート油、ピッチなどで、現在は石油化学製品を補完する形で使用されている。ただし、アルミニウムや合金鉄製造用の電極に用いられるバインダーピッチは、そのほとんどがコールタールピッチからの製品である。

 日本では、石炭化学工業は1960年代に衰退期を迎えたが、1973年(昭和48)以降の第一次、第二次の石油危機による石油化学製品の価格上昇や、新素材の開発に伴って、ふたたび注目されるようになり、コールタールの有効利用のほか、コークス炉ガスの化学原料としての利用を目ざした、いわゆるコールケミカルズが開花している。

[宮津 隆]

 コールタールは、タイヤ用のカーボンブラックやもろもろの炭素製品の原料としても用いられ、2007年(平成19)には156万トンが生産されている。

[編集部]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

コール‐タール
〘名〙 (coal tar) 石炭乾留によって得られるタール。芳香族炭化水素を主成分とする黒色、粘りけのある油状液体。摂氏九〇〇~一二〇〇度で乾留して得られる高温タールと、摂氏四五〇~七〇〇度で乾留して得られる低温タールとがあるが、ふつう前者をいう。各種の合成化学工業の原料に用いられるほか、そのままでは木材防腐剤などに用いる。広義に、各種タール類の総称としていうこともある。石炭タール。
※東京日日新聞‐明治一五年(1882)六月八日「当局所産コーク及コールタール」

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

化学辞典 第2版

コールタール
コールタール
coal tar

単にタールともいう.石炭熱分解(乾留)で生成する茶褐色あるいは黒色の粘りのある液状物質.多種類の芳香族化合物からなる.一般には,コークスの製造過程で副生するコールタールをさし,タール化学工業の原料として重要である.蒸留により数種類の油分ピッチ(コールタールピッチ)に分別され,油分は医薬品,農薬,香料,染料,各種機能性化学品などの原料になり,ピッチは電極用バインダーやさまざまな炭素材料に利用される.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
東京工業大学名誉教授理博 吉村 壽次(編集代表)
信州大学元教授理博 梅本 喜三郎(編集)
東京大学名誉教授理博 大内 昭(編集)
東京大学名誉教授工博 奥居 徳昌(編集)
東京工業大学名誉教授理博 海津 洋行(編集)
東京工業大学元教授学術博 梶 雅範(編集)
東京大学名誉教授理博 小林 啓二(編集)
東京工業大学名誉教授 工博佐藤 伸(編集)
東京大学名誉教授理博 西川 勝(編集)
東京大学名誉教授理博 野村 祐次郎(編集)
東京工業大学名誉教授理博 橋本 弘信(編集)
東京工業大学教授理博 広瀬 茂久(編集)
東京工業大学名誉教授工博 丸山 俊夫(編集)
東京工業大学名誉教授工博 八嶋 建明(編集)
東京工業大学名誉教授理博 脇原 將孝(編集)

Copyright © MORIKITA PUBLISHING Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

コールタール」の用語解説はコトバンクが提供しています。

コールタールの関連情報

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.

アット・ニフティトップページへ アット・ニフティ会員に登録

ウェブサイトの利用について | 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation