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ジョン・ウー【じょんうー】

日本大百科全書(ニッポニカ)

ジョン・ウー
じょんうー
John Woo
(1946/1948― )

漢字表記呉宇森(ウンユースン)。香港(ホンコン)の映画監督。中国広東省広州市に生まれる。1949年、中華人民共和国成立時に一家で香港に移住。経済的な理由のため学齢期を過ぎても学校へ行くことができずにいたが、両親がクリスチャンだったこともあり、教会を通じてアメリカの篤志家から援助を受ける。マテオ・リッチ・カレッジに入学するが1963年中途退学。働きながら、雑誌『中国学生週報』が主宰する青年センターに所属し、演劇活動や自主映画製作に取り組む。1969年キャセイ・フィルムにスクリプターとして入社。1971年にはショー・ブラザーズ社に移り、武侠(ぶきょう)映画(武術の達人が活躍するアクション映画)の巨匠張徹(チャンツェー)(1923―2002)の助監督を務める。1973年『カラテ愚連隊』で監督デビューするが、暴力シーンが過激であるとの理由で当局から一時上映禁止処分を受ける(再編集後『鉄漢柔情』と改題されて1975年に公開)。1974年にはゴールデン・ハーベスト社に移籍、『ジョン・ウーの龍を征する者』(1975)、『ジャッキー・チェンの秘龍拳 少林門』(1976)などのカンフー映画、最後の広東オペラ映画(広東語で演じられる伝統劇をモチーフとした映画で、「戯曲片」とよばれる。1950年代に隆盛を迎えるが、1970年代になるとほとんど製作されなくなっていた)とよばれる『プリンセス・チャンピン』(原題、帝女花。1976)、『ジョン・ウーのマネー・クレイジー』『追われたアイドル』(ともに1977)、『ジョン・ウーの億万長者』(1980)などのアクション・コメディ、張徹監督の影響を強くうかがわせる武侠映画『勇者たる者』(原題、豪侠。1978)といったさまざまなジャンルを横断する映画製作を行った。1980年には新興制作会社シネマシティ社の第一作『滑稽時代 モダン・タイム・キッド』(1980)に携わり、コメディ映画の監督として一躍名をあげる。その後もゴールデン・ハーベスト社で『アーメン・オーメン・カンフーメン!』(1981)、『英雄ジェーン』(1982)を監督するが、『ソルジャー・ドッグス』(1983)でもっと残虐なシーンを撮れという会社側の命令を拒否したため、このトラブルが原因となって同社を退社。1984年シネマシティ社に移籍するが、台湾支社に回され不遇の時代を送る。1986年香港に戻り、徐克(ツイ・ハーク)のプロデュースにより『男たちの挽歌』を監督、空前の大ヒットとなり、主演の周潤發(チョウユンファ)(1955― )を一躍スターダムにのし上げた。

 人物の心情の高まりや過激なバイオレンスを際立たせるスローモーションの多用、舞踊を思わせる華麗なアクション、男たちの友愛と裏切りやクライマックスの二挺拳銃といったジョン・ウー的要素は『男たちの挽歌』以降も彼の作品に連綿と受け継がれてゆくことになる。以後『男たちの挽歌Ⅱ』(1987)、『狼 男たちの挽歌 最終章』『ワイルド・ヒーローズ 暗黒街の狼たち』(ともに1989)、『ワイルド・ブリット』(1990)、『狼たちの絆(きずな)』(1991)、『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』(1992)といった作品によって「香港ノワール(英雄片)」とよばれるジャンルを確立させた。1992年アメリカに移住。『ハード・ターゲット』(1993)でハリウッド・デビューを果たす。1994年にはWOGエンターテインメントを設立し『ブロークン・アロー』(1996)、『フェイス/オフ』(1997)、『M:I-2』(2000)、『ウインドトーカーズ』(2001)といった作品を製作、全米公開され大きな反響をよぶ。ジョン・ウー作品の激しいバイオレンスの底にはつねに人間同士の強い絆や正義への志向が潜んでいる。そのいわば東洋的な「義」の精神を失うことなくハリウッドの大規模なスペクタクル・アクションを実現させたことによって、彼は世界的な映画監督としての名を不動のものにしたといえよう。2003年にはフィリップ・K・ディック原作の『ペイチェック 消された記憶』を映画化した。

[岩槻 歩]

資料 監督作品一覧

カラテ愚連隊〈過客〉(1973)
ジョン・ウーの龍を征する者 女子跆拳群英會(1975)
ジャッキー・チェンの秘龍拳 少林門〈少林門〉(1975)
ジョン・ウーのマネー・クレイジー〈發錢寒〉(1977)
追われたアイドル 大然星与小妹頭(1977)
剣聖たちの挽歌(勇者たる者)〈豪侠〉(1978)
ジョン・ウーの億万長者〈錢作怪〉(1980)
滑稽時代 モダン・タイム・キッド〈滑稽時代〉(1980)
アーメン・オーメン・カンフーメン!〈摩登天師〉(1981)
英雄ジェーン〈八彩林亞珍〉(1982)
ソルジャー・ドッグス〈英雄無涙〉(1983)
男たちの挽歌〈英雄本色〉(1986)
男たちの挽歌Ⅱ〈英雄本色Ⅱ〉(1987)
ワイルド・ヒーローズ 暗黒街の狼たち〈義胆群英〉(1989)
狼 男たちの挽歌・最終章〈喋地雙雄〉(1989)
ワイルド・ブリット〈喋血街頭〉(1990)
狼たちの絆〈縦横四海〉(1991)
ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌〈辣手神探〉(1992)
ハード・ターゲット Hard Target(1993)
ブロークン・アロー Broken Arrow(1996)
フェイス/オフ Face/Off(1997)
ブラックジャック Black Jack(1998)
M:I-2 Mission : Impossible 2(2000)
ウインドトーカーズ Windtalkers(2001)
ペイチェック 消された記憶 Paycheck(2003)
それでも生きる子供たちへ All the Invisible Children(2005)
レッドクリフ PartⅠ〈赤壁〉(2008)
レッドクリフ PartⅡ 未来への最終決戦〈赤壁:決戦天下〉(2009)
レイン・オブ・アサシン〈剣雨〉(2010)

『『中華電影物知り帖――これだけ知れば100倍楽しい中国・香港・台湾映画』(1996・キネマ旬報社)』『宇田川幸洋責任編集『ジョン・ウー』(2000・キネマ旬報社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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