●ソクラテス
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
ソクラテス
Sōkratēs
[没]前399
ギリシアの哲学者。彫刻家ソフロニスコスと助産師ファイナレテの子。前半生はほとんど不明であるが,後半生,特に晩年はプラトン,クセノフォン,アリストテレス,アリストファネスの著作から知られる。著作を残さなかったのでその学説は主としてプラトンの対話篇によるほかはなく,それ自体哲学史上の大きな問題となっている。ソクラテスは「汝自身を知れ」というデルフォイの神託をあらゆる哲学的思考の出発点におき,人間の自己とは身体ではなく霊魂であり,この霊魂をよい状態に保つことに人間としての幸福が存するとの立場から,善や他の諸価値をロゴスによって吟味することを試みた。その方法としては対話におけるエイロネイア (アイロニー ) と産婆術が有名である。アリストテレスは学の基礎としての帰納法と概念的定義をソクラテスの二つの功績として認めている。 70歳のときメレトスやアニュトスらに告訴され死刑宣告を受け,毒杯を仰いで死んだ。
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ソクラテス
Sōkratēs
[没]450頃
ビザンチンの教会史家。現在知られるかぎりでは平信徒として最初に教会史を書いた。エウセビオスの『教会史』に続く『教会史』 (7巻,306~439を扱う) を著わし,4~5世紀の初代教会史の貴重な史料を提供した。史料の扱い方は客観的で全体として正確な年代史である。
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デジタル大辞泉
ソクラテス(Sōkratēs)
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世界大百科事典 第2版
ソクラテス【Sōkratēs】
キリスト教の教会史家。コンスタンティノープル出身。エウセビオスの著作を受け継ぐ形で,《教会史》7巻をギリシア語で著し,ディオクレティアヌス帝の退位(305)から439年までの教会史を記録した。ルフィヌス,カエサレアのゲラシオスなどをおもな典拠とするが,現存する第2版はアレクサンドリア主教アタナシオスの著作を利用して大幅に書き改めた。この教会史は比較的公平な記述とされている。【森安 達也】
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ソクラテス【Sōkratēs】
古代ギリシアの哲学者。アテナイのアロペケ区に生まれた。父ソフロニスコスは石彫家だったと伝えられるが,確証はない。母ファイナレテは助産術を心得ていた。クサンティッペXanthippēと結婚したのはかなり晩年のことで,ソクラテスが死んだとき,3人の子どもはまだ年少であった。有名な悪妻伝説は,おおむね後代の誇張された作り話である。ペロポネソス戦争期に,重装歩兵として北ギリシアに2回,ボイオティアに1回従軍し,賞賛すべき忍耐心と沈着の勇を人々に印象づけた。
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日本大百科全書(ニッポニカ)
ソクラテス
そくらてす
Socrates
(前470/469―前399)
古代ギリシアの哲学者。アテネに生まれる。自分自身の「魂」pschēをたいせつにすることの必要を説き、自分自身にとってもっともたいせつなものは何かを問うて、毎日、町の人々と哲学的対話を交わすことを仕事とした。そして、おそらくはこの仕事のために嫉(そね)まれて告発され、裁判され、死刑の宣告を受け、毒杯を仰いで死んだ。裁判の模様と獄中および死去の場面は、弟子プラトンが書いた哲学的戯曲(プラトンの対話篇(へん))『エウチュプロン』『ソクラテスの弁明』『クリトン』『パイドン』の諸作品に詳しい。そこに描かれた、死に面するソクラテスの平静清朗な態度は、生死を越えた重大事に対面する哲学者のあり方を示すものとして、読む人の心にせつせつとして迫らずにはおかない。
ソクラテスは書物を書かなかった。その周囲にあった何人かの人が彼について書き、われわれはこれによって彼を知るが、そのうちのだれを、また、どこまで信ずべきかという点に問題があり、これを哲学史上「ソクラテス問題」という。通常は、弟子のなかでもっとも傑出した哲学者であるプラトンの伝えるソクラテス像を骨子とし、これに他のものを補うことが多い。
若いころのことについて、確かなことは知られない。われわれに親しいのは、年配のソクラテスがアテネの街角や体操場で美しい青少年を相手に、また町の有力な人々を相手に、人を幸福にするものは何か、善(よ)いものは何か、勇気とは何かと問いただしている姿である(これをソクラテスの問答法=ディアレクティケーという)。これらの問答の主題は、多くこのように実践に関するものであった。そして、この問答はいつも「まだそれはわからない」という無知の告白を問答者が相互に認め合うことで終わった。この際、相手は、ソクラテスがそういいながらも実は自分では知っているという印象をもつことが多く(ソクラテスのイロニー)、そこで自己の無知を露呈された人々は、ある場合、ソクラテスのやり口の陰険さに怒った。
しかし、ソクラテスの真意は、各人が自己の存在がそれによって意味づけられている究極の根拠についての無知を悟り、これを尋ねることをなによりもたいせつなことと知るように促すことにある。もとより、ソクラテスがこの根拠を知るというのではない。むしろ、究極の根拠についての無知を悟り(無知の知)、それへの問いかけを通じてこの「行き詰まり」(アポリア)のうちにとどまるところにソクラテスの愛知(フィロソフィアー=哲学)がある。それは根源から問いかけられるものとしての場に、己を置くことであり、このような方法で己が全体として根源から照らされることである。
ソクラテスの容貌(ようぼう)は醜く、両眼は突出し、鼻はひしゃげた獅子(しし)鼻であった。しかし彼と語り合った人はそのことばに魅せられ、その内面にあるもののとりこにされてしまった。この外と内の背反に、彼の存在の本質がある。
これまでのギリシアの哲学者は宇宙の原理を問うた。ソクラテスにおいて、初めて自己と自己の根拠への問いが哲学の主題となる。この意味において、ソクラテスは内面(魂の次元)の哲学の祖である。また、自己への問いは、自己を根拠づけている「見えないもの」(超越)への問いであるという意味では、彼は形而上(けいじじょう)学の祖である。ただソクラテスにおいては、内面は、根拠によって問いかけられるところから生ずる「行き詰まり」のうちにどこまでもとどまる愛知の道行きとしてだけ示されるものであった。こうして、ソクラテスは外と内との裂け目を通じて開示される「根源」の問題を哲学の関心の中心に、その生と死の証(あかし)をもって引き据えることにより、西洋哲学の重みを一身に負う人となった。
[加藤信朗 2015年1月20日]
『田中美知太郎著『ソクラテス』(岩波新書)』
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367日誕生日大事典
ソクラテス
ブラジルの医師;サッカー監督;元・サッカー選手
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精選版 日本国語大辞典
ソクラテス
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旺文社世界史事典 三訂版
ソクラテス
Sokrates
古代ギリシアの哲学者
高潔な人格と倫理的内面性は後世に大きな影響を与えた。問答によって相手の無知を自覚させる方法をとり,ソフィストに反対して客観的真理の存在と知徳の合一を説き,内心の声に従うべきことを強調,「汝 (なんじ) 自身を知れ」と呼びかけた。不敬の徒として告発され,毒を仰いで死んだ。その説は,弟子プラトンらによって伝えられ,西洋古典哲学の一源流となった。
出典:旺文社世界史事典 三訂版
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