●ツツジ
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
ツツジ
Rhododendron
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日本大百科全書(ニッポニカ)
ツツジ
つつじ / 躑躅
[学] Azalea
ツツジ科ツツジ属Rhododendronのうち、シャクナゲ類を除いた半常緑性または落葉性のものの総称。主として北半球に分布し、マレーシア、オーストラリアにもある。日本には山野に多数の種類が野生しており、また、多くの園芸品種とともに広く観賞のために栽培されている。一般には株立ち状の低木が多いが、小高木となり、小枝をよく分けるものもある。花冠は漏斗(ろうと)形で5裂するものが多く、まれに筒状のものもある。花色は白、淡紅、紅、赤、紫色など変化に富む。雄しべは5本または10本であるが、数の不定のものもある。花糸は細長く、花筒から出て、葯(やく)は先端にある小孔から花粉を出す。子房は上位で花柱は細長い。果実は蒴果(さくか)。
日本の山野に分布するおもな野生種としては、ヤマツツジ亜属のヤマツツジ、モチツツジ、キシツツジ、ケラマツツジ、サツキ、ミヤマキリシマ、ウンゼンツツジ、コメツツジ、そして、レンゲツツジ、アケボノツツジ、ムラサキヤシオツツジ、ミツバツツジ、オンツツジ、ゴヨウツツジなどがあり、広義にはバイカツツジ亜属のバイカツツジ、ゲンカイツツジ亜属のゲンカイツツジ、エゾムラサキツツジなどもツツジ類として扱われ、半常緑性のものもあって、シャクナゲ類との区別は明らかでなくなる。
園芸品種には野生種から出たもののほかに、交雑によってつくられた多数の品種がある。そのおもなものはキリシマツツジ(クルメツツジを含む)、サツキ、リュウキュウツツジ、ヒラドツツジ、オオムラサキなど、日本で作出された品種も多い。また、セイヨウツツジ(一般にアザレアの名でよばれる)にも多くの品種がある。
[小林義雄]
栽培
花木として庭園や公園にもっとも普通に植栽されるほか、鉢植えやいけ花にも利用され、広く観賞されている。酸性土壌の山地に多く野生するが、一般には日当りのよい場所で、排水と保水のよい壌土でよく育つ。細根が多いので、移植は一般に容易で、盛夏と厳寒を除けばよく活着する。最適期は、落葉性のものは開葉前の3月中旬から下旬がよく、半常緑性のものは開花前がよい。肥料は堆肥(たいひ)に油かすを加えて施すか、遅効性の粒状混合肥料を用いる。刈り込み、剪定(せんてい)に耐えるが、一般に花芽の分化期は7月ころであるから、剪定は花期後、6月中には済ませる。それ以後の剪定は次年の花つきを悪くする。
繁殖は一般には挿木による。挿床は鹿沼土(かぬまつち)または赤土を用い、梅雨期に行うが、4月、9月でも活着する。挿木が困難な種類もあり、この場合は実生(みしょう)による。消毒したミズゴケや良質のピートモスを床土にして播(ま)くとよく発芽する。しかし、実生の場合は立枯病が出やすいので、管理に注意する。ツツジ類は一般にじょうぶで病害虫にも強い。おもな害虫に、新芽とつぼみを食害するベニモンアオリンガ、ルリチュウレンジバチがあり、これには「スミチオン」「デナポン」などを散布する。葉裏について吸汁するツツジグンバイには「スミチオン」「マラソン」などを散布するとよい。病害の花腐菌核(はなぐされきんかく)病は薬剤散布による防除がむずかしく、褐斑(かっぱん)病、黒紋病は4‐4式ボルドー合剤、銅水和剤を散布して予防する。
[小林義雄]
名所・天然記念物
名勝地には群馬県館林(たてばやし)市の躑躅ヶ岡(つつじがおか)公園がある。天然記念物としては北海道の落石岬(おちいしみさき)サカイツツジ自生地、群馬県の湯の丸レンゲツツジ群落、山梨県の躑躅原レンゲツツジ群落、美し森オオヤマツツジ、徳島県船窪(ふなくぼ)のオンツツジ群落、大分県の大船山(たいせんざん)ミヤマキリシマ群落、長崎県の池の原ミヤマキリシマ群落などがある。
[小林義雄]
文化史
ツツジの名は、『出雲国風土記(いずものくにふどき)』(733)に、大原郡の山野に生える植物として茵芊が初見し、『万葉集』では、茵花、都追茲花、白管仕、白管自、丹管士、石管士の名で9首詠まれている。2巻に「水伝(みなつた)ふ磯(いそ)の浦廻(うらみ)の石管士(いわつつじ)茂(も)く咲く道をまた見なむかも」と歌われているが、この磯の浦廻は、天武(てんむ)天皇と持統(じとう)天皇の子、日並知(ひなめし)(草壁(くさかべ))皇子の宮殿の庭園にあり、すでにツツジが栽培下にあったことが知られる。ツツジの品種は江戸時代に爆発的に増え、水野元勝は『花壇綱目』で147品種を取り上げた。それにはサツキの名はないが、三之丞(さんのじょう)(伊藤伊兵衛)は『錦繍枕(きんしゅうまくら)』で、ツツジを173、サツキを162品種解説した。そのサツキのうち、「せい白く」など9品種は『花壇綱目』のなかに名がみえる。『錦繍枕』でサツキの3名花とされたうち、「まつしま」「さつまくれない」をはじめ、「ざい」「みねの雪」「高砂(たかさご)」など現在にも若干の品種は伝えられているが、大半は消失した。明治の末ごろからふたたびサツキを中心とするツツジが流行し、現代に続く。海外では19世紀以降、アザレアの改良が進み、クルメツツジ、レンゲツツジ、タイワンヤマツツジなどが関与した。
[湯浅浩史]
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