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トマス主義【とますしゅぎ】

日本大百科全書(ニッポニカ)

トマス主義
とますしゅぎ
Thomism

中世のスコラ神学者トマス・アクィナス自身が成就した神学と哲学の総合、およびその影響の下に主としてカトリック思想家によって継承、展開されてきた哲学的立場をさす。トミズムともいう。トマスの独創性は、なによりも、アリストテレスや新プラトン哲学の形而上(けいじじょう)学を、キリスト教の創造に関する教えを包み込むところまで発展させた「存在」のとらえ方において発揮されている。これによって、世界に対する神の絶対的超越ともっとも親密な内在が理論的に基礎づけられ、精神の哲学の領域においても顕著な成果が生み出された。トマスの死後、彼の学説は、その所属するドミニコ会によって公式に特別の権威が授けられたとはいえ、ドミニコ会内部も含めて多くの激しい攻撃にさらされることになる。その際トマス主義の特徴とされたのは、(被造物における)本質と存在との実在的区別、(人間における)実体的形相の単一性、個体化の原理としての質料、などの学説である。トマスの学説がカトリック教会内で不動の地位を確保したのは、宗教改革運動に刺激されて、教会が自らの教義を明確化する必要に迫られて以後のことである。やがて教会当局はトマスを全カトリック世界の「共同的博士(ドクトル・コミユニス)」Doctor Communisと宣言し、トマス主義はあたかもカトリック「公認」の哲学であるかのような印象が強まった。

 トマスの著作、とくに『神学大全』について多くの註解(ちゅうかい)が書かれるのは15世紀から17世紀にかけてであり、それ以後はトマス哲学の原理や方法に基づくと称する教科書の全盛期に入る。しかし、原典に即したトマス学説の本格的研究は19世紀後半に始まった。20世紀前半のトマス主義にとっての課題は、トマスの学説をその中世的背景のなかで、厳密な歴史的方法によって研究すること、および無神論、唯物論、科学万能主義など現代思想の挑戦に応答しようとする努力のなかで、トマスの学説に新しい生命を吹き込むことであった。この後者との関係でトマス主義はしばしば「久遠の哲学」philosophia perennisと同一視された。

 第二バチカン公会議(1962~65)の前後、カトリック内部で「トマス離れ」が目だったが、そのことはかえって、トマスを客観的かつ冷静に研究するのに好都合な雰囲気を生み出した。現在はトマス主義の内部でも、経験論的解釈と超越論的解釈をとる学派の間で論争が行われ、神学と哲学との関係、神の存在論証、そのほか個々の学説に関しても多様な解釈が試みられており、多元化の傾向が認められる。

[稲垣良典]

『松本正夫著『存在論の諸問題』(1967・岩波書店)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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