●トマト
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
トマト
Lycopersicon esculentum; tomato
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朝日新聞掲載「キーワード」
トマト
(2008-04-19 朝日新聞 夕刊 1総合)
出典:朝日新聞掲載「キーワード」
デジタル大辞泉
トマト(tomato)
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典
トマト
出典:朝倉書店
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食の医学館
トマト
《栄養と働き》
南米ペルー原産のナス科の野菜です。わが国へは江戸時代初期に入ってきました。当初は観賞用で、「唐柿」(からがき)と呼ばれていました。本格的に食用として使われはじめたのは、明治時代以降です。
おもにピンク系、赤系、ファースト系、ミニトマトの4種類があります。ピンク系の代表格が「桃太郎」で、くせがなく、甘みがあるのが特徴です。
ファースト系はハウス栽培もので、先が尖っているのが特徴。甘みと酸味のバランスがよく、肉質がしっかりしています。
プチトマト、チェリートマトとも呼ばれるミニトマトは、サンチェリー、ミニキャロルなどの品種があります。
甘みが強くて多汁質。家庭菜園でも手軽につくれるのが魅力です。
〈各種ビタミンとピラジンで動脈硬化を予防〉
ヨーロッパでは昔から「トマトのある家に胃腸病なし」といわれるほど、その薬効が信じられていたようです。トマトに含まれるさまざまな成分の働きをみると、それも理解できます。
○栄養成分としての働き
トマトにはカリウム、カロテン、ビタミンC、B群、毛細血管を強くするケルセチンなどが含まれています。
カリウムは体内のナトリウムを排泄(はいせつ)して血圧を下げ、血管を丈夫にするケルセチンとともに心疾患や動脈硬化を予防。ケルセチンはCの体内利用を高める働きもするので、肌をきれいにしてくれます。
血液をサラサラにするといわれるピラジンという香り成分も含んでいます。
ピラジンはパセリ、ニラ、タマネギ、セロリ、ホウレンソウなどにも含まれている成分で、血小板凝固を抑制する働きがあります。つまり、血栓(けっせん)を防ぐ効果があり、動脈硬化予防に有効です。
そしてなにより注目したい成分が、リコピンです。リコピンはカロテンの1つで、ジュースやピューレ、ケチャップなどに使われる赤系トマトに多く含まれています。
これは、トマトの赤みをつくっている色素で、抗酸化作用があり、活性酸素を消す働きをするため、がんの抑制に効果的に働くといわれている成分です。
また、低カロリーで、少量でも満腹感を得られるので、ダイエット中の人には最適な野菜といえます。血をきれいにして脂肪の消化を助ける作用もあります。
トマトの酸味はクエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸。これらは胃のむかつきを解消し、気持ちをリフレッシュさせたり、疲労回復に効果があります。
さらにアミノ酸の一種であるグルタミン酸などが多く、イノシン酸の多いシーフードなネギ属どと煮込み料理にすると、アミノ酸の相乗効果でうまみが強くなり、おいしくなります。頭がボーッとして働かないときなどに食べてみましょう。
食物繊維であるペクチンも多く含むので、コレステロール値の低下、便秘(べんぴ)改善にも役立ちます。
〈ビタミンCが豊富なミニトマト、その他加工品もおすすめ〉
栄養成分的にみると、ミニトマトのほうがカロテン、Cが豊富です。鉄、カリウム、亜鉛などのミネラル分の含有量も上回っています。
ふつうのトマトよりも赤みが強いので、リコピンの含有量も多いのが特徴です。
小さくて、料理のアクセントとして気軽に使えるので、彩りを添えるつもりでいろいろな料理に利用するといいでしょう。
トマトの加工品には水煮にしたホールトマト、ピューレ、ジュースなどがあります。リコピンを効率よくとるには、トマトジュースがおすすめです。しかし、市販のものは塩分が入っているものが多いので、気になる場合は、無塩のものを飲むようにしましょう。
トマトの加工品で最近注目されているのが「ドライトマト」です。
トマトを2つ割りにして塩をふり、日光にあてて乾燥させたものです。ふつうのトマト同様に、いろいろな料理に使われますが、前菜や、肉・魚料理のつけあわせ、パスタ、ソースに加えたりします。
独特の甘みとコクがあるのが特徴です。
《調理のポイント》
1年中出回っているトマトですが、露地ものの旬は夏です。栄養的にも夏のものはビタミンC、カロテンともに豊富です。夏はトマトを積極的に利用しましょう。
トマトには強い酸味がありますが、肉料理などに加えると、塩を減らしても味付けがしっかりし、脂肪分も抑えられます。また、トマトには魚のにおいを消して、身を引き締める作用もあります。
抗酸化作用のあるリコピンは、脂肪分を少しとったほうが吸収率が高くなるので、油っぽいものといっしょに食べるといいでしょう。
リコピンを大量にとれる料理法を1つ。皮をむいて粗く刻み、ニンニクやタマネギと煮込んでシチューやパスタ料理のソースとして使ってみましょう。リコピンがとれるだけでなく、クエン酸の働きで肉の消化を促進します。
夏バテのときは、トマトジュースとスイカジュースを2分の1カップずつミックスしたドリンクを飲みましょう。また、空腹時に胃が痛むという人は、自家製トマトジュースをつくってみましょう。空腹時に胃が痛むのは胃酸過多(いさんかた)による場合が多いので、トマト、ニンジン、セロリなどをミックスしたジュースを飲むと、胃液が中和されて刺激が少なくなります。カロテンが多いので、胃の粘膜(ねんまく)を保護する働きもします。
○注意すべきこと
トマトを食べるにあたって気をつけたいのは、冷え症の人、胃弱の人は冬に生のものをあまり食べないようにすることです。トマトには体を冷やす作用があるので、なるべく煮たり炒(いた)めたりして食べましょう。
トマトのリコピンの活性酸素除去作用を高めるには、ビタミンEとの組み合わせがベストです。トマトのサラダにゴマドレッシングをかけたり、スライスアーモンドをちらして食べると効果的です。
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世界大百科事典 第2版
トマト【tomato】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
トマト
とまと / 蕃茄
tomato
[学] Lycopersicum esculentum Mill.
ナス科の多年草。栽培上は一年草として扱われる。茎は長さ1~2メートルになるが、自然には直立できず地面にはう。茎の下部が地面に接するところからは不定根を出す。葉は長さ15~45センチメートルの羽状複葉で、柔毛がある。小葉は5~9対で、長さ5~7.5センチメートル。花は黄色で直径約2~3センチメートル、花冠は5ないし10片に深裂する。葉腋(ようえき)に3~7花が房になってつく。果実の内部は数室に分かれ、多数の種子が入っている。果実の形は品種によって大小さまざまで、また果色も赤、紅、黄色などである。日本では生食用には桃紅色の果実が好まれるため、ほとんどが桃紅色の品種である。また、直径2~3センチメートルの赤または黄色の果実を房成りにつける品種や、卵形や西洋ナシ形の小形の果実の品種も普及している。
[星川清親]
栽培
苗床に種子を播(ま)いて苗を育て、畑やハウスに定植する。葉腋から盛んに腋芽を出して茂るが、日本で生食用果実を得る目的で栽培するときには、腋芽を全部摘み取って1本の茎だけを、支柱を立てて仕立てることが多い。ジュースやケチャップなど加工用の目的で栽培する場合には、支柱をせず腋芽も摘まずに育てる無支柱栽培が行われる。低温には比較的強いが、1回でも霜に当たれば枯死する。土壌病害である青枯病に侵されると、急に茎の先からしおれ、数日中に地上部全体に及んで枯死する。土壌伝染性の病害を避けるため、トマトはもとよりナス、ジャガイモなどナス科の作物との連作は避け、また土壌病害抵抗性の台木専用トマト品種、たとえばBF興津(おきつ)101号などに接木(つぎき)もされる。自然の旬(しゅん)は夏であるが、現在では促成・抑制栽培などによって一年中生産される。しかし低温期の栽培では着果不良になりやすく、パラクロルフェノキン酢酸(商品名「トマトトーン」)を花房に噴霧して着果と果実の肥大を促進させている。なお、現在日本で経済的に栽培されている品種はすべて一代雑種品種(F1(エフワン))である。
[星川清親]
起源と伝播
トマトの起源と普及は新しく、栽培トマトの成立は紀元後1000年ころと推定されている。現在広く世界で栽培されているトマトの祖先種は、その一つの変種ケラシフォルメvar. cerasiforme Alef.である。これには野生型と、もっとも原始的な栽培型がある。この分布地域はトマト属の野生種と同じくエクアドルからチリ北部に至る幅150キロメートルの狭長な海岸地帯(赤道から南緯30度)であるが、さらに北はメキシコの南部から中央部の東海岸沿いの低地にまで及ぶ。とくにベラクルスを中心として豊富に自生し、その栽培型も明らかに栽培トマトとの移行型を示す種々な型がある。したがって、トマト属野生種の中心であるペルーにおいてケラシフォルメの野生型から栽培型が成立して、メキシコ地域において現在みられるもっとも進化したトマトが成立している点から、メキシコ起源であると考えるのが正しい。この地域はアステカ文化圏で、アステカ人は好んでホオズキを食用に供し、トマトに似たホオズキの育成・栽培をしていることから、ケラシフォルメの栽培と育成に努めたことが想像できる。またアステカ人はその栽培トマトの品種の語尾にナワトゥル語のトマトルtomatlをつけた。このことばが世界各国に伝播(でんぱ)した。
「新大陸発見」後、1523年のスペインのメキシコ征服後、スペイン人によってヨーロッパに入り、1544年イタリアに、1575年イギリスに、さらに中欧諸国に伝播した。最初は観賞用で、食用に供したのは18世紀以降である。アメリカには18世紀末にヨーロッパから入ったが、19世紀末までは普及しなかった。アジアへはスペイン人によって太平洋経由でフィリピンに入り、1650年以降マレーシア東部でも栽培された。日本へは寛文(かんぶん)年間、1670年ころに長崎に伝来し、『大和本草(やまとほんぞう)』(1709)に記載されている。その後、明治初年に開拓使によって欧米から品種が導入され、赤茄子(あかなす)の名で試作された。しかし当時は独特の臭みのため普及せず、大正時代に入って、北海道と愛知県を中心として栽培が増加したが、現在のように普及をみたのは第二次世界大戦後である。
[田中正武]
食品
トマトは健康によい食品とされており、「トマトが赤くなると医者が青くなる」「トマトのある家に胃病なし」などといわれている。果実の成分は95%が水分で、タンパク質0.7%、脂質0.1%、糖質3.3%、繊維0.4%、灰分0.5%を含む。ビタミン類の含量に優れ、100グラム当りカロチン390マイクログラム、ビタミンC20ミリグラム、B10.05ミリグラム、B20.03ミリグラムのほか、B6、K、P、M、ルチン、ナイアシンなども含む。甘味の成分は果糖とブドウ糖、酸味の主体はクエン酸とリンゴ酸である。生食用のほか、加工用として缶詰、ジュース、ピューレ、ペーストなどにされ、それぞれ生食用品種、加工用品種がある。加工用は汁気が少なく、皮も堅くて生食用には適さない。生食用トマトは、流通経路でのいたみを少なくするため、果実が緑色で堅いうちに収穫し、小売店の店頭でちょうど食べごろになるように出荷する。しかしこのようなものは、畑で完熟させた果実に比較して食味が劣る。そこで最近では、とくに完熟トマトと表示された、完熟した果実を収穫したものが店頭に出回るようになった。トマトの皮は、果実を熱湯にくぐらせると手で容易にむけるようになる。
[星川清親]
トマトは料理の付け合せ、サラダ、スープ、シチュー、ミートソースなどに用いる。トマト特有の青臭いにおいは青葉アルコールとよばれる成分を中心にしたもので、これは生臭みを消す働きがある。そのため、シチューやミートソースなどをつくるとき、肉とともに煮込むと肉の臭みが消える。加熱調理には適熟トマトのほか水煮あるいはトマトジュース漬けにした缶詰が利用できる。糖分の多い小粒のトマトも多く出回り、これらは料理の飾りやデザートのフルーツのかわりとしても食べることができる。
[河野友美]
『農山漁村文化協会編・刊『野菜園芸大百科2 トマト』(1988)』▽『青木宏史著『トマト 生理と栽培技術――野菜栽培の新技術』改訂版(1998・誠文堂新光社)』▽『小沢聖・佐藤百合香編著『加熱調理用トマト クッキングトマトの栽培と利用――美味しいトマト料理を食卓へ』(2000・農山漁村文化協会)』
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典
トマト
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