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ナルコレプシー

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ナルコレプシー
narcolepsy
居眠り病ともいう。昼間,なんの前ぶれもなしに突然生じる短時間の睡眠発作と,情動に誘発されて突然起こる脱力発作を主症状とする。ほかに入眠時幻覚睡眠麻痺などがみられる。古くはてんかんと類縁の疾患と考えられていたが,1880年フランスの J.B.E.ジェリノーによって,まったく別個の神経疾患として,この病名が提唱された。ナルコは眠気,レプシーは発作。 15~20歳に起こる本態性ナルコレプシーと,脳炎や脳腫瘍,外傷などで中脳を侵されたことから起こる症状性ナルコレプシーに分かれる。診断は臨床所見と脳波検査によって決定する。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

ナルコレプシー(narcolepsy)
突然激しい眠気におそわれ、短時間眠り込んでしまう病気。驚きや笑いに伴う脱力や、入眠時の幻覚、覚醒時の金縛り状態といった症状のみられることもある。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

ナルコレプシー【narcolepsy】
レム睡眠と密接な関係がある病気。narcolepsie(フランス語)という言葉はフランスのジェリノーJ.Gélineau(1859‐1928)による造語(1880)で,ギリシア語のnarkē(麻痺の意)とlēpsia(発作の意)とを合成したもの。ときに〈居眠り病〉と邦訳される。病因は不明であるが,睡眠発作,情動性脱力発作,睡眠麻痺,入眠時幻覚を4主症状とし,これに夜間の頻回の中途覚醒を加える。ただし,これら4主症状がすべてそろうものは少ないが,睡眠発作は必発である。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

ナルコレプシー
なるこれぷしー
narcolepsy

睡眠障害のうちの代表的な睡眠過剰(過眠症)で、居眠り病ともよばれる。10歳代の中ごろにもっとも多くみられる原因不明の症候群で、日中におこる過度の眠気、あるいは短時間の睡眠発作、カタプレキシーcataplexy(情動性脱力発作)のほか、入眠時幻覚や睡眠麻痺(まひ)を主症状とし、夜間の睡眠障害もしばしばみられる。カタプレキシー、入眠時幻覚、睡眠麻痺はいずれもレム睡眠関連症状であり、これを抑制する薬物療法(抗うつ薬のイミプラミンなど)によって比較的改善しやすいが、睡眠発作や夜間の熟眠困難などの睡眠‐覚醒(かくせい)リズムの異常は長期間持続する。

[懸田克躬]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

ナルコレプシー
〘名〙 (narcolepsy) 間脳の障害により、時、場所、状況にかかわらず突然眠ってしまう睡眠発作や、目がさめるが体を動かせない状態、いわゆる金縛りの覚醒発作を起こす疾患。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

ナルコレプシー(睡眠異常)
(2)ナルコレプシー(narcolepsy)
定義・概念
 覚醒中に突然生じる短時間の耐え難い眠気発作を特徴とする.
原因・病因
 覚醒に関係のある脳幹網様体の機能障害がある.家族性発症がみられ,遺伝性素因が注目されている.
疫学
 思春期~30歳に発症し,10歳代に発症のピークがある.人口10万につき40人ぐらいの発症をみる.
病理
 視床下部で,オレキシン分泌ニューロンの脱落がみられる.
病態生理
 REM睡眠障害があり,覚醒状態とREM睡眠が容易に移行する.入眠時にREM睡眠がしばしば出現する.(REM睡眠とは身体は睡眠状態にあるが,急速眼球運動(rapid eye movement:REM)と脳の覚醒が認められる状態.)
臨床症状
 睡眠発作,情動性脱力発作,睡眠麻痺,入眠時幻覚が4大症状である.これらはREM睡眠関連症状と考えられている.
1)睡眠発作:
日中,突然に耐え難い眠気に襲われる.数分から15分程度,睡眠に陥る.
2)情動性脱力発作:
カタプレキシー(cataplexy)ともいう.笑ったときや,びっくりしたときなどに起こる全身の筋緊張低下で,抗重力筋の脱力が起こる.持続は数秒以内,急に膝の力が抜けて床に膝をついたり,頸や顎の力が抜ける.
3)睡眠麻痺:
入眠時および覚醒直後に起こり,開眼して意識はあるのに動こうと努力しても,金縛りになり動けない状態となる.
4)入眠時幻覚:
入眠時および覚醒直前に色彩に富み,鮮明な現実感をもった夢をみる.
検査成績
①覚醒時から15分以内にすぐREM睡眠に移行する脳波所見が特徴である.②髄液オレキシン値低下は特異性の高い検査所見である.③ヒト主要組織適応抗原(human leukocyte antigen:HLA)の型を検査すると,HLA-DR2(DR15)とDOQ1(DQ6)が陽性である.
診断
 睡眠発作を中心とする症状が毎日,3カ月以上続くときはナルコレプシーを疑う.
治療・予防
1)生活指導:
規則正しい日常生活を送り,睡眠不足を避けること,計画的に10~15分の仮眠をとることを指導する.車の運転や危険な作業は避ける.
2)薬物療法:
睡眠発作に塩酸メチルフェニデート(10~60 mg/日)またはモダフィニル(200~300 mg/日)が有効である.情動脱力発作に対しては三環系抗うつ薬が奏効する.[黒岩義之]
■文献
大川匡子,内山 真:睡眠障害.ダイナミック神経診断学(柴崎浩編),pp303-312,西村書店,新潟,2001.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

ナルコレプシー
Narcolepsy
(こころの病気)

どんな病気か

 ナルコレプシーは、昼間の耐えがたい眠気や、笑ったりびっくりすると全身の力が抜けてしまう情動脱力発作(じょうどうだつりょくほっさ)、寝入りばなに現れる金縛(かなしば)りのような症状である睡眠麻痺(すいみんまひ)や、寝入りばなの夢体験による入眠時幻覚(にゅうみんじげんかく)を主な症状とする慢性疾患です。

 この病気は10代に発症する場合がほとんどで、中年期以降に発症することはまれです。およそ1000~3000人に1人の頻度でみられます。

原因は何か

 この病気の原因はまだ明らかにされていません。白血球の血液型(HLA)を調べると、この病気にかかっている人には特定のタイプが多いため、何らかの体質的要因が発症に関係していることが考えられています。

 最近、オレキシンという脳内物質の低下が、この病気の発症に関わっていることがわかってきました。

症状の現れ方

 ナルコレプシーでは、日中に耐えがたい眠気が現れます。これは前夜によく眠れたかどうかにかかわらず、毎日起こります。1回の居眠りはおおよそ20分くらいで、目覚めたあとにすっきりするのが特徴です。しかし、1~2時間するとまた眠気がおそってきます。普通なら眠気を催すはずのない試験中や面接中などの緊張した場面でも、急に眠気におそわれ眠ってしまう睡眠発作を起こすことがあります。

 情動脱力発作は、びっくりしたり、感激したり、笑ったりした時など情動の大きな変化をきっかけに、突然筋肉の力が抜ける発作です。通常は、数秒以内に回復します。

 睡眠麻痺は寝入りばなに全身の脱力が起こるもので、自覚的には金縛りとして体験されます。寝つき際の夢が、入眠時幻覚として体験されることもあります。

検査と診断

 昼間の眠気を客観的にとらえるためには、反復睡眠潜時(すいみんせんじ)検査が行われます。これは、昼間に4回ないし5回、約2時間おきに脳波検査室で横になり、暗くしてから眠るまでの時間(睡眠潜時)を脳波で調べるものです。脳波で睡眠のパターンが現れるまでの時間が短いほど、眠気が強いと判定されます。平均睡眠潜時が8分以下の場合、異常な眠気と診断されます。

治療の方法

 治療は薬物療法が中心です。日中の眠気を防ぐためには、精神刺激薬を用います。最近はモダフィニル(モディオダール)という薬が多く使われます。この薬は作用時間が比較的長く、朝に1回服用することで夕方ころまで効果があります。これまであったメチルフェニデート(リタリン)やペモリン(ベタナミン)と比べて、マイルドで副作用が少ないのが特徴です。

 モディオダールでは効果が十分でない場合、これにリタリンやベタナミンを追加して使用します。リタリンは作用時間が短い(早く代謝され体外に排泄される)ため、朝と昼の2回服用する必要があります。

 情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺などには、レム睡眠を抑える作用をもつ薬物が使われます。このなかでよく使われているのは、アナフラニール、トフラニールなどの抗うつ薬です。

 生活の工夫としては、休み時間に20分くらいの昼寝をとる習慣をつけることが大切です。

病気に気づいたらどうする

 ナルコレプシーは、診断がつかないでいると、職場での居眠りのために(なま)け者あるいはやる気がないなどと誤解されがちです。眠気が産業事故や交通事故の原因になることもあります。したがって、疑いのある場合は専門医の診察を受けて診断を確定し、早めに治療を開始することが重要です。

内山 真

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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