@niftyトップ

辞書、事典、用語解説などを検索できる無料サービスです。

ニヒリズム

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ニヒリズム
nihilism
主義の意。ドイツの哲学者 F.ヤコービが『フィヒテ宛書簡』 (1799) でニヒリズムの語を初めて用い,ロシアの小説家 I.ツルゲーネフの小説『父と子』 (1862) によって広まった。認識論的には真理認識の可能性を否定する絶対的懐疑論であり,存在論的には一切の実在の否定である。一般には道徳的,政治的意味でいわれることが多い。すなわち行動の基準や価値体系,社会体制の否定あるいは破壊を志向する思想である。 F.ニーチェ神の死んだ時代との関連においてこれを説き,さらにこれを乗越える意志の哲学を展開した。政治的には特に,19世紀末のロシアで,『父と子』のバザーロフの系統をくみ,個人に対する一切の束縛を否定した一派立場をいい,この限りではやがてニヒリストとはテロリストと同じ意味でいわれるようになった。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

ニヒリズム(nihilism)
虚無主義。
すべての事象の根底に虚無を見いだし、何物も真に存在せず、また認識もできないとする立場。
既存の価値体系や権威をすべて否定する思想や態度。ツルゲーネフニーチェカミュなどに代表される。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

ニヒリズム【nihilism】
ラテン語のニヒルnihil(虚無)に基づく造語。あらゆる既成の宗教的・道徳的・政治的権威や既成の社会的秩序とそのイデオロギーに対する無条件的な否定の立場を表し,虚無主義と訳される。この語が哲学用語として比較的重要な意味で最初に使用された場合の一つとして認められているのは,1799年にF.H.ヤコビがフィヒテにあてた公開書簡の場合であり,そこではフィヒテの観念論がニヒリズムとして非難されている。一説によれば,弁証法を神学の対象にも適用したアベラールの説を継承した12世紀の神学者たちの一派のいわゆるニヒリアニズムnihilianism,すなわちキリストの人間性は偶有性にすぎず,キリストは人間としてはニヒルであるという中世キリスト論が,当時のヤコビたちに影響を与えていたといわれる。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

ニヒリズム
にひりずむ
Nihilismus ドイツ語

「虚無主義」と訳される。通説によれば、「ニヒリズム」はヤコービがフィヒテの知識学を非難して用いたのが最初だとされる。「ニヒリズム」はまた、19世紀の後半、ロシアの社会運動に現れた伝統的権威、政治社会上の諸制度、宗教などを否定し排斥する傾向をさし、盛んに用いられた。しかし今日、「ニヒリズム」ということばを耳にして普通念頭に浮かぶのは、もっぱらニーチェとその現代批判であろう。

 ニーチェによれば、「徹底したニヒリズムとは、承認されている最高の諸価値が問題になるようでは、生存は絶対的に不安定だという確信、およびそれに加えて、“神的”であり、道徳の化身でもあるような彼岸(ひがん)ないしは事物自体を調製する権利は、われわれには些(いささ)かもないという洞察のことである」が、現代はそのニヒリズムの到来の時代である。「私が語るのは来るべき20世紀の歴史である。私はやって来るもの、もはや別様にはやって来えないもの、つまりニヒリズムの到来を記すのだ」とニーチェは語る。

[山崎庸佑]

神への信仰とその動揺

ニヒリズムの「ニヒル」nihilはラテン語で「無」を意味し、それゆえニヒリズムはしばしば「虚無主義」と訳されるが、このニヒリズムは、いったい何が「無」くなったことを主張するかといえば、それは前出の引用文で暗示されたように、「最高の諸価値」が崩壊したことである。「ニヒリズム=目標の欠如、“なんのため?”に対する答えの欠如。ニヒリズムは何を意味するか?――最高の諸価値が無価値化されるということである」(ニーチェ)。すなわち、人間存在に意味を与えてきた世界観的、人生観的な諸価値が「無」くなったがゆえに、ニヒリズムとよばれる精神状況が到来したのである。

 ヨーロッパの精神史を支配してきた価値観の根底には、永遠のものを現世的な生成変化の彼岸に置くプラトン主義があった。ニーチェによれば、このプラトン主義の民衆版であるキリスト教とその道徳観において、生成変化する現世的―感性的な生を非難、断罪し、価値あるもの、真であるものを生の彼岸に求める世界観はとくに顕著である。

 キリスト教の世界観は――人間と世界を連続親縁(シュンピュイア)の間柄にあるとみた初期ギリシアの汎(はん)自然的で調和(コスモス)的な世界観とは違って――肉と霊、此岸(しがん)と彼岸、自由と摂理といった二元的な差別と乖離(かいり)をもたらし、人間を深い緊張のうちに投げ込んだが、しかし世界の階層的な差別の頂点には神があり、二元的な分裂をそれでも究極のところで統一してはいた。だからこそ、差別が同時に秩序でもありえたわけだが、しかし、いまもしその神への信仰が突然消滅し、差別や分裂が差別や分裂としてのみ残存するに至ったとすれば、いったいどうなるか。すべてが支離滅裂となり、混沌(こんとん)に帰する以外にないであろう。「結局、何がおこったのか? 現存在の全体的性格は“目的”という概念によっても、“統一”という概念によっても、“真理”という概念によっても解釈されてはならない、ということが理解されたとき、無価値性の感情が得られたのである」。

[山崎庸佑]

ニヒリズムの遠因

ニヒリズムという「無価値性の感情」はいったいどこからくるかという問いに対しては、前記のような次第で、社会的な困窮状態や生理学上の変質や心的困窮といったものからではなくて、「一つのまったく特定の解釈、つまりキリスト教的、道徳的な解釈」からくると答えなければならない。

 生成変化に超然とした彼岸的真理の秩序、その秩序の根であるキリスト教の神への信仰が動揺し、差別や分裂が差別や分裂としてのみ残存するに至るところにニヒリズムは発生するが、そのことは、「“神的”であり、道徳の化身でもあるような彼岸」、もともと「調製する権利」のなかった虚構に2000年の信を置いてきたことの報いが一転した「無価値性の感情」だということを意味する。あまりにも長く「特定の解釈」に信を置き続けた人間が、その特定の解釈、キリスト教的世界観の動揺を経験するとき、彼はその世界観だけではなく、世界観一般、それどころか世界そのものの無価値性の感情に襲われるのである。

[山崎庸佑]

『西谷啓治著『ニヒリズム』(1972・創文社)』『渡辺二郎著『ニヒリズム』(1975・東京大学出版会)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

ニヒリズム
〘名〙 (nihilism) 本当に信頼できる真理や価値などは何もないとする考え方や精神状態。虚無主義。〔外来語辞典(1914)〕

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

旺文社世界史事典 三訂版

ニヒリズム
nihilism
因習と伝統を否定し,いかなる権威や国家の秩序にも従属しないとする立場。「虚無主義」と訳される
ラテン語のnihil(無)に由来し,ロシアの作家トゥルゲーネフの小説『父と子』(1862)によって広められた。ドイツの思想家ニーチェは,さらにこれを哲学上の問題として,「能動的ニヒリズム」の必要性を主張した。ロシアでは,チェルヌイシェフスキーの小説『何をなすべきか』やドブロリューボフ・ピーサレフらの思想家に指導されて社会改革運動に発展,19世紀後半にはニヒリストたちの秘密結社が組織されて,1878年トレポフ将軍の狙撃,81年皇帝アレクサンドル2世の暗殺など,テロリズムを行った。

出典:旺文社世界史事典 三訂版
執筆者一覧(50音順)
小豆畑和之 石井栄二 今泉博 仮屋園巌 津野田興一 三木健詞
 
Copyright Obunsha Co.,Ltd. All Rights Reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

ニヒリズム」の用語解説はコトバンクが提供しています。

ニヒリズムの関連情報

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.

アット・ニフティトップページへ アット・ニフティ会員に登録

ウェブサイトの利用について | 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation