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ニホンザル

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ニホンザル
Macaca fuscata; Japanese macaque
霊長目オナガザル科。体長 50~70cmで,雄は体重 15kgをこえる。は短く 8cm内外。毛はやや長く,一般に暗褐色。 20~100頭ぐらいの群れで生活する。生態に関する研究は京都大学を中心に霊長類研究グループにより行われ,なかでも大分県高崎山の群れについては,1952年より餌付け,個体識別などの研究が始められ,1960年代までは群れはリーダーを中心とした秩序ある順位制をもつ社会で,通常体力,気力のすぐれた雄がリーダーとなるとされた。しかし 70年代になって野生群の観察が詳細に行われると,これらの特性は餌付けという特殊な状況下で起るものであることが指摘されるようになり,現在ではニホンザルには群れをまとめる役割を果すリーダーは存在しないとされる。サル類はおもに熱帯地方に分布するが,本種は最も北に産するサルとして知られ,なかでも青森県下北半島の群れは,サル類の分布の北限となっている。宮崎県幸島,大分県高崎山,岡山県臥牛山,大阪府箕面山,千葉県高宕山 (以上天然記念物指定地) をはじめとして,全国で約 400群,4万頭前後が生息していると推定され,多くの場所で餌付けがなされ,場所によっては野公苑などとなっている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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世界大百科事典 第2版

ニホンザル【Japanese monkey】
霊長目オナガザル科の旧世界ザル。顔としりが赤く尾が短い日本特産のサル。ホンドニホンザルM.f.fuscataとヤクザルM.f.yakui(ヤクニホンザル)の2亜種がある。ヒトを除く現生霊長類中,最北限に分布し,青森県下北半島はその北限地として有名である。ホンドニホンザルは本州,四国,九州に広く分布し,ヤクザルは鹿児島県の屋久島にだけ生息している。 体毛は背側が淡褐色または暗灰褐色,あるいはくすんだオリーブ色などで,腹側は白く,手足の背側が黒っぽい。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

ニホンザル
にほんざる / 日本猿
Japanese monkey
[学] Macaca fuscata

哺乳(ほにゅう)綱霊長目オナガザル科の動物。日本特産種で、屋久島(やくしま)以北の日本列島に分布する。

[川中健二]

形態

茶褐色の毛で覆われ、顔と臀部(でんぶ)の裸出した皮膚は赤みを帯びている。体格はがっしりとし、雄は体長55~60センチメートル、体重10~18キログラムになり、雌は小形である。尾は短く10センチメートル程度。屋久島産のものは、体毛が暗灰色で、長く粗いので亜種のヤクザルM. f. yakuiとして、九州以北のホンドザルM. f. fuscataと区別される。ヤクザルは四肢が短く、指掌紋のパターンもホンドザルと違い、またホンドザルの新生子は淡褐色であるが、ヤクザルでは黒い。しかし生態や社会構造には、2亜種間で目だった違いはない。

[川中健二]

生態

本州、四国、九州のほか、淡路島、小豆島(しょうどしま)、幸島(こうじま)(宮崎県)、屋久島などの離島にもすむ。北海道には過去にも本種が生息した証拠はない。本種の分布の北限地、青森県下北半島(北緯41度30分)は、ヒト以外の霊長類の分布の北限地でもある。主として照葉樹林、暖帯・温帯落葉樹林帯に生息するが、冷温帯林に生息するものもあり、東北地方、中部山岳地帯にすむものは、厳寒期には、零下20℃、積雪数メートルに達するという厳しい環境下で生活している。現在では主として山地林にすんでいるが、古代遺跡から出土する骨から、古くは平地林にも広く分布していたようである。現在の総個体数は4万~5万頭と推定されている。1947年(昭和22)に保護獣に指定され、大分県高崎山などは野生ニホンザル生息地として天然記念物に指定され保護されている。

 ニホンザルは群れをつくって生活しており、ほとんどの群れは隣接群をもち、他から孤立している群れは少ない。つまり数群が地域的集中をなして生息するというのが、群れの一般的な分布様式である。各群れは3~15平方キロメートルの遊動域をもち、その20%は隣接群のそれと重複している。群れは年間を通じて遊動域内で過ごすが、季節ごとの食物の分布の変化に応じて、その各部分を使い分けている。普通その中に数か所の泊まり場をもち、夜間は樹上で眠る。採食は午前と午後に2回集中的に行い、果実、若芽、種子などの植物性食物を中心に、昆虫、クモ、カニ、鳥の卵のほか、海岸にすむものは貝も食べる。積雪地にすむものは、厳寒期には、もっぱら樹皮に頼っている。採食時以外は、休息や、次の採食地あるいは泊まり場への移動にあてられる。採食や休眠はおもに樹上で行うが、移動は地上が主で、頻繁に通る所は、はっきりそれとわかる道がついている。

[川中健二]

繁殖

ニホンザルは、はっきりとした交尾期と出産期をもつ。交尾期は、生息地により多少のずれがあるが、秋から冬にかけての4か月間で、約6か月間の妊娠期間を経て、初夏から盛夏に出産期を迎える。普通は1産1子で、双生子の出生例はきわめて少ない。雌は隔年に出産する例が多いが、餌(え)づけされると毎年出産することもある。新生子は体重約500グラムで、出生直後から自分の手足で雌親の腹の毛にしがみついて運ばれる。生後4か月ぐらいで固形物を食べ始め、このころから雌親の腰の上にのって運ばれるようになる。雄は4、5歳、雌は3、4歳で性的に成熟し、雌は5歳で初産を迎える例が多い。新生子の性比はほぼ1対1で、けがや病気による幼児死亡率は高いが、大人にまでなったものは20歳、まれに30歳以上に達した記録がある。

[川中健二]

社会構造

ニホンザルの社会は、群れと、それに所属しないヒトリザルとの二つの要素で構成されている。群れは数頭の雄と、その約1.5倍の雌、および子供を含む20~100頭の複雄群である。その構造は、図式的には、二重の同心円で表すことができ、中心部は主要な雄と雌、子供によって占められ、それを取り巻く周縁部には、その他の雄がいる。雄たちの間には明確な順位があり、また群れ内の空間的布置構造に応じた社会的役割の分化も認められる。群れで生まれた雄は、性成熟前後のある時点で、ほとんどの個体がその群れを離脱してヒトリザルになる。ただしヒトリザルといえども、その後群れと無縁のまま一生を終わることはなく、交尾期に他の群れに接近して雌と性関係をもったり、新しい群れに加入して数年間を過ごすこともまれではない。したがってどの群れも、そこで生まれた雄と、他から加入した雄とが共存していることになる。

 一方雌は、群れの分裂でもない限り、終生生まれ育った出自群にとどまる。つまり群れは雌の血縁を通じて連なる母系集団である。雌の間では母と娘の結び付きは強く、終生その認知は保たれている。一つの群れは、いくつかの雌の血縁集団を含み、それらの間には優劣関係がある。血縁集団内では母親が最優位で、娘の間では年少者ほど高位なのが普通である。血縁集団間の優劣は雄の順位にも影響を及ぼし、優位の雌から生まれた雄は、他よりも長期間出自群にとどまり、高順位につくことがある。

 群れどうしは互いに排他的で、遊動生活においては避け合っており、群れより上位の社会単位はない。しかしヒトリザルは、その出自群の近くの群れに接近、加入する機会が多く、群れの地域的集中は、このような雄を媒体とした地域社会とみなすことができる。

[川中健二]

コミュニケーション

ニホンザルは合計三十数種類という多様な音声をもつことが知られている。しかしその多くは、怒りや恐怖といった激しい感情に裏打ちされたもの、あるいは遠距離にいる不特定の仲間に対して発せられるものである。感情的に平静で近距離にいる1対1の間で発せられるもの、いわばヒトの言語のような機能をもつ音声は少ない。そのような機能をもつものは、むしろ音声を伴わない社会行動であり、そのなかには、はっきりとした行動型と意味内容をもち、安定した記号性をもつ行動がある。

 休息時によく行われる毛づくろい(グルーミング)は、主として血縁関係にあるものどうし、あるいはとくに親密な雄と雌の間で行われ、個体間の親密さの表現として重要な社会的機能を果たしている。

[川中健二]

『伊谷純一郎著『高崎山のサル』(1972・思索社)』『河合雅雄著『ニホンザルの生態』(1969・河出書房新社)』『宮地伝三郎著『サルの話』(岩波新書)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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ニホンザル
ニホンザル
Japanese monkey
日本の本州,四国,九州とその周辺の島々に分布するサル。南限は屋久島(鹿児島県),北限は下北半島(青森県)である。地球上に生息する約300種のヒト以外の霊長類の中で,下北半島のニホンザルは最北端に生息し,北限のサルmonkey in the northern limitとして有名である。ニホンザルはヒト以外の霊長類では珍しく,豪雪地域にも生息するため,スノーモンキーとしても知られている。学名Macaca fuscata

【生態】 おとなの雄と雌の体重はそれぞれ8~13kg,6~12kgである。ニホンザルは秋から冬にかけて交尾をし,170日から180日の妊娠期間を経て,春から夏にかけて出産する季節繁殖動物である。出産は通常一産一子で,双子出産は出産の0.07%で,たいへん珍しい。雌は5~6歳で初産をし,その後2~3年に1回の割合で出産をし,20歳を過ぎると繁殖能力が減少し,多くの個体は25歳ころまでに寿命を終える。これまでの野生ニホンザルの雌の最終出産年齢は26歳,最高齢は34歳が記録されている。雄は雌より1~2年遅れておとなに達し,繁殖能力を有するようになる。野生場面での雄の最高齢記録は30歳である。

【社会】 ニホンザルは10頭から100頭ほどからなる集団を形成する。餌づけなどによって食料が豊富な場合,集団は数百頭を超えることもある。雌は生まれ育った集団で生涯を過ごすが,雄はおとなになるころに出自集団から離脱する。そのため,集団は少数のおとな雄と多数のおとな雌,そしてその子どもたちから形成される。雄は出自集団から離脱したのち,他の集団への移出入を何度か繰り返すが,単独で行動するハナレザル(または,ヒトリザル)になったり,雄グループを形成したりすることもある。母と娘,姉妹,祖母と孫娘,叔母と姪といった母系血縁関係matrilineal blood relationshipにある雌同士は,近距離での休息や採食,毛づくろいを頻繁に行なう。また,ケンカの場合には,血縁個体を支援することが多い。おとな雌の間には,血縁の影響を大きく受けた明瞭な順位rankが存在する。川村俊蔵(1958)は箕面集団(大阪府)の13頭のおとな雌の順位関係を記録し,①母は娘よりも優位である,②妹は姉よりも優位である(末子優位)ということを世界に先駆けて報告した(川村の原則)。この原則はおとな雌が50頭以上の嵐山集団(京都府)でも確認され,さらに,同じ血縁系に属する雌たちは互いにまとまって順位づけられること,すべてのおとな雌の間の順位関係が直線的であることも明らかになった(小山直樹,1967)。しかし,集団内のおとな雌の頭数が100頭前後の大型集団になると,川村の原則に一致せず,直線的順位関係も崩れてくる。

 おとな雄間にも直線的優劣順位が存在する。外部から集団に移入してきた雄が雄の中で最下位になり,上位雄が死亡したり集団から離脱したりするごとに順位が上昇する。一般に,雄の順位決定には血縁系の影響がない。しかし,餌づけ集団では,上位血縁系の一部の雄が集団を離脱せず,出自集団にとどまり,上位雄になる場合も報告されている。遺伝子解析による父子判定技術の確立によって,最上位雄が最も多くの子を残しているとは限らないことがわかっている。雄の中で最も順位の高い個体をかつては,ボスザルと称していた。しかし,集団内で生じたケンカを鎮める,集団の移動方向を決めるなどのボスということばから類推されるような行動を実際に示すことが少ないため,現在では,単に第1位雄や最上位であることを示すアルファ(α)雄の呼称が用いられている。

 毛づくろいgroomingはサルの毛に付くサルジラミの卵の除去といった衛生的機能だけでなく,個体間の親和関係の構築や維持,さらにはケンカなどによって一時的に崩れた個体関係の修復などの社会的機能も有する。おとな間での毛づくろいは,雌-雌間が多く,雄-雄間,雄-雌間は少ない。どの雌も毛づくろいのやりとりを特定の1頭の雌に集中する傾向があり,その相手は母あるいは娘であることが多い。おとな雌の平均の毛づくろい相手数は集団サイズが大きくなっても約10頭である。結果的に,雌-雌間の毛づくろいの60~70%が母と娘,姉妹,叔母と姪などの近縁個体間で行なわれ,遠縁個体間,非血縁間での毛づくろいは少ない。非血縁個体間では,劣位個体から優位個体への毛づくろいがその逆方向よりも多くなる。しかし,すべての雌が近縁個体への毛づくろいを選好するのではなく,非血縁個体との毛づくろいを選好する個体も存在する。さらに,毛づくろい関係が10年以上継続する非血縁雌ペアがあることも確認されている。

 ニホンザルは30種以上の音声を表出し,クーCooは最も頻繁に表出される音声である。親和関係にある個体間でのクーの交換が多く,だれが発声したクーかを互いに認識できる。クーは雄よりも雌が多く発し,とくに第1位雌の発声頻度が高い。

 幸島(宮崎県)の浜辺の餌場にまかれたサツマイモを水で洗って食べるイモ洗いsweet-potato washing行動は文化的行動として世界的に知られている。河合雅雄によると,1歳半のメスが始めたこの行動は遊び仲間の子ザル,さらにその一部の母ザルに広まり,その後は母ザルから子ザルに伝播した(Kawai,M.,1965)。一部のニホンザル集団で見られる小石を転がしたり,打ち鳴らしたりする石遊び行動では,子ザルから子ザルに伝播し,その後は,おとなになった個体から子ザルに伝播したことが報告されている。

【発達】 ニホンザルの赤ん坊は誕生時から母ザルにしがみつき(把握反射),母ザルの乳首を探し(探索反射),ミルクを吸引することができる。生後5ヵ月間の摂乳量はほぼ一定であるが,6ヵ月齢以降はそれまでの半分の摂乳量となり,生後1年間は授乳が継続する。離乳は母ザルの次の子の出産時期によって決まる。赤ん坊は生後2週ころから固形物を口に入れるが,実際に咀嚼や嚥下を始めるのは5週齢ころからである。生後1年目の子ザルは近距離にいる母ザルや同年齢の子ザルが採食しているときに,同じように採食する傾向が強く,さらに,同じ食物を採食する傾向も顕著である。生後2年目の子ザルでも同様の傾向が確認されている。したがって,子ザルは生後1~2年の間に母ザルらの採食行動を観察学習して,採食品目レパートリーを獲得しているらしい。

 赤ん坊は生後1週目に稚拙な歩行を開始し,生後2~3ヵ月の期間に急速に運動能力を発達させる。この時期には,子ザルは母ザルを他個体から視覚的に認識し,母ザルから離れて他個体とのかかわりを増加させる。生後1ヵ月間は母ザルの腹部にしがみついて運搬されるが,2ヵ月目ころから背中にしがみついての運搬も始まる。母ザルは生後1年を経過し十分な運動能力を獲得した子ザルに対しても背中での運搬を時折行なう。雄の子ザルは成長に伴い,母ザルとのかかわりが減少し,逆に,生後2年目からは年齢の近い雄とのかかわりが頻繁になる。雄は集団からの離脱によって母ザルとの関係が終焉する。雌の子ザルは3~4歳ころから,母ザルとの比較的頻繁な毛づくろいや近接などを維持するようになり,初産ころまでに母ザルの順位を継承した順位を集団のおとな雌間の中に確立する。老齢個体における認知能力の減退が飼育下での学習実験で明らかになっている。しかし,集団の中で暮らす老齢個体においては,認知能力の減退に基づくと推測される不適切な社会行動はまだ確認されていない。高齢で老年期不妊の雌が孫の子ザルに母親行動を行ない,孫の生存に役立ったというおばあさん仮説grandmother hypothesisを支持する事例が報告されている。 →霊長類
〔中道 正之〕

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