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ファルス

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ファルス
farce
笑劇。ラテン語 farcire (詰める) が語源といわれ,中世にフランスを中心に演じられた単純な筋の喜劇。現存する最古のものは,12世紀の『少年と盲人』で,15世紀の『洗濯桶の笑劇』『パトラン先生』が代表作。当時の民衆の健康な笑いの表現であり,亭主,女房,間男 (多くは僧侶) の三角関係や,婿いびり,三百代言ペテンなど滑稽な筋立てを,道化役者棍棒や袋を小道具に粗末な組立て舞台の上で,粗野で猥雑なしぐさで即興を交えて演じた。この伝統は,フランスではモリエールを経てフェドー父子の作品に,イギリスではミュージック・ホールの舞台に,アメリカではボードビルに受継がれている。

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ファルス
phallus
古代ギリシア・ローマの時代には,男性器官をかたどっているものを表していたこの語は,精神分析で使われる場合,ペニスが肉体的実在としての男性器官を示すのに対し,象徴的意味を強調する。すなわち,幼児の持つ性理論では,ただ一つの性,ただ一つの器官であるファルスのみがあり,人間はこれを所有しているか,もはや所有していないかである。このことは対立が男性/女性という形でなく,ファルスを持っている/去勢されているという形を取ることを意味しており,男子は自分の母親が,自分にあって,ときに快の源泉 (自慰) ともなる器官を所有していないとは想像できず (男根的母親のイメージ) ,女子に対しては,やがて所有するだろうと考えるか,さもなければ自分の知覚を否定してしまう (フェティシズムの萌芽) 。女子は,膣 (ちつ) をはっきりそれと認めておらず,陰核は男根的リビドーを荷重されており,男子と対抗している。幼児は,性の相違を,去勢コンプレクスを克服しつつ,同性の親への同一化を成し遂げることにより承認し受け入れることになる。

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デジタル大辞泉

ファルス(〈フランス〉farce)
フランス中世後期に栄えた民衆演劇の形式の一。当時の庶民生活を題材とした単純素朴な喜劇。一般には、こっけいさをねらった喜劇。笑劇。ファース

出典:小学館
監修:松村明
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大辞林 第三版

ファルス【farce】
こっけいなどたばた劇。笑劇。本来は、フランス中世に宗教劇の幕間に上演された軽い喜劇の称。ファース。

出典:三省堂
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ファルス【phallus】
陰茎。男根。
ラカンの用語。幼児は、母に欠け、母の欲望の対象であるファルスになろうとするが、やがて自分がファルスではないことを知り、自己の外部にそれを求め、「ファルスをめぐるシニフィアンの連鎖」と呼ばれる欲望の回路に取り込まれてゆくとされる。欲望を生み出す「欠如」そのもののシニフィアン。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

ファルス
ふぁるす
farceフランス語
どたばたの卑俗な喜劇、寸劇、笑劇。フランス中世のミステール(聖史劇)に挿入された茶番劇で、ファブリオー(笑話)、ソチ(茶番劇)などと同類のもの。今日伝えられる作品はおよそ150編で、最古のものは13世紀の『小僧と盲人』といわれる。最盛期は15、6世紀で、庶民の機知や風刺を巧みに演じて、民衆娯楽の代表となった。わが国の掛け合い漫才、幕間(まくあい)狂言に通じる。イギリスのミステリー(聖史劇)でも、「ノアの方舟(はこぶね)」の場面で乗船をせきたてるノアを、近所の奥さんたちと別れを惜しむ妻が殴打するファルスが織り込まれた。代表作は1460年ごろの作とされる『パトラン先生』で、登場人物の心理の交錯を巧みにとらえている。T・S・エリオットはマーローの『マルタのユダヤ人』をファルスと考え、この系譜の最後をディケンズに帰している。なかにはマルタン・デュ・ガールの『ルルー爺(じい)さんの遺言』(1914)のように中世のファルスの伝統を守る作品もあるが、多くはイギリスの『パンチとジュディ』の人形劇に代表されるどたばた喜劇をさすようになった。[船戸英夫]

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精選版 日本国語大辞典

ファルス
〘名〙 (farce 原義は「料理のつめ物」の意) フランス中世の短くたわいのない喜劇。中世の宗教劇の幕間に演じられたこっけいな寸劇が独立したもの。また、一般に、卑俗な笑いを含んだ短い喜劇をいう。笑劇。道化芝居。ファース。
※チェーホフ(1948)〈小林秀雄〉「君は『桜の園』の事が言ひたいんだらう。ありゃ何んでもないよ。ほんのファルスさ」

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