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フェノール

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

フェノール
phenol
(1) 石炭酸ともいう。ベンゼン水素原子1個を水基で置換した構造をもち,C6H5OH で表わされる。コールタールを分留して得られるフェノール油の主成分である。特有の臭気をもつ無色の結晶。純粋なものは融点 40.85℃,沸点 182℃。空気中では次第に赤く着色し,水分 (8%) を吸収して液体となる。水にやや溶け,水 100gに対して 8.5g (20℃) ,17.5g (60℃) 溶解する。アルコール,エーテル,ベンゼンなどに可溶。液状フェノールは種々の有機物を溶解するので溶媒として用いられることがある。フェノールは解離定数 (→酸解離定数 ) 1.1×10-10 のごく弱い酸で,水酸化ナトリウム水溶液には一種の塩 C6H5O-Na+ (フェノラート) をつくって溶けるが,炭酸ナトリウム溶液には溶けない。フェノールは毒性の強い化合物で,その濃厚溶液は皮膚に激しい炎症を起すが,ごく薄い溶液は防腐剤,消毒剤として用いられることがある。フェノールは古くはコールタールの留分から得られたが,現在ではベンゼンを原料としてスルホン化法,塩素化法,クメン法などによって合成されている。おもに有機合成原料や,フェノール樹脂製造に用いられる。 (2) フェノール性水酸基をもつ化合物総称ベンゼン環などの芳香族化合物に直接結合した水酸基はフェノール性水酸基と呼ばれ,弱い酸性を示し,強アルカリと塩をつくることができる。また,エステルやエーテルなどの水酸基に共通な誘導体も生成する。多くのフェノールは塩化鉄 (3価の鉄イオン) によって赤色,紫色,青黒色に呈色する。フェノール,クレゾール,ナフトールなどは簡単なフェノールの例である。2個以上のフェノール性水酸基をもつ化合物はポリフェノールと呼ばれる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

フェノール(phenol)
ベンゼン環ナフタレン環などに水酸基が直接結合した化合物の総称。
ベンゼン水素原子1個が水酸基置換された化合物コールタール石油の分留によって得られる、独特の臭気のある無色結晶。消毒殺菌剤や染料などの合成原料として使用。化学式C6H5OH 石炭酸。ヒドロキシベンゼン。

出典:小学館
監修:松村明
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編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

フェノール
 C6H6O (mw 94.11).

 石炭酸ともいう.ヒドロキシル基の水素が解離して酸の性質を示す.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

フェノール【phenol】
芳香族性の環(ベンゼン環,ナフタレン環など。Arと略記)の水素原子が水酸基に置換された化合物を一般にフェノール類といい,ArOHで表す。狭義には後述の石炭酸をフェノールという。
フェノール類
 水酸基の数により1価フェノール,2価フェノール,3価フェノールのように呼び,2価以上をまとめて多価フェノール(またはポリフェノール)と総称する。フェノール類はコールタール,粗製の石油に含まれるほか,植物精油中にも含まれている(たとえばカルバクロール,チモールカテコールなど)。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

フェノール【phenol】
特異な臭においのある、無色または白色の、針状結晶または結晶性のかたまり。水に少し溶け、弱い酸性を示す。化学式 C6H5OH コールタールの分留により、またはベンゼンを原料とする化学合成によって得る。防腐剤・消毒殺菌剤とするほか合成樹脂や染料・爆薬など種々の化学工業の重要原料。石炭酸。
芳香族化合物で、ベンゼン環に結合した水素原子がヒドロキシル基で置換されたものの総称。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

フェノール
ふぇのーる
phenol

ベンゼンなどの芳香環にヒドロキシ基が結合した化合物を一般にフェノール類といい、ArOHの一般式で表す(Arはベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環)。また、そのもっとも簡単な化合物であるヒドロキシベンゼン、すなわちベンゼンの水素原子1個がヒドロキシ基で置換された化合物をフェノールという(以下、とくに断らない限り、フェノールと記すときはつねにフェノール類をさす)。しかし、ナフタレンやフェナントレンのような芳香族縮合多環炭化水素にヒドロキシ基が直接結合した化合物はそれぞれナフトールやフェナントロールのようによばれることが多い。

[徳丸克己]

フェノール類

芳香環にヒドロキシ基が1個置換したフェノールを一価フェノールという。

 カテコール、レゾルシン、ヒドロキノンのように芳香環に2個のヒドロキシ基の置換したフェノールを二価フェノール、また、ピロガロールのように芳香環に3個のヒドロキシ基の置換したフェノールを三価フェノールとよび、これらを総称して多価フェノールという。

 フェノールには単にヒドロキシ基が芳香環に置換しているだけでなく、メチル基などのアルキル基やニトロ基などがさらに置換した化合物もあり、クレゾールやニトロフェノール、ピクリン酸などはこのようなフェノールの例である。

 フェノールのもっとも簡単な化合物であるヒドロキシベンゼンは、1834年ドイツのF・F・ルンゲによって、石炭を乾留して得られるコールタールから分留された酸性の物質として得られ、石炭酸(ドイツ語でKohlensäure)と名づけられた。その後この化合物は1848年にフントH. Huntによって初めてアニリンから合成された。

[徳丸克己]

製法

フェノール(ヒドロキシベンゼン)は、かつてはコールタールから分留によって製造されたが、石油化学工業の発展に伴い、現在はもっぱら石油から得られるベンゼンを原料として製造される。なかでもベンゼンを濃硫酸によりベンゼンスルホン酸とし、そのナトリウム塩を水酸化ナトリウムとともに溶融して製造する方法は古くから行われているものである。また、ベンゼンをプロピレンと反応させてイソプロピルベンゼン、すなわちクメンとし、これを空気酸化してそのヒドロペルオキシドとし、ついでこれを酸で処理してフェノールとアセトンを製造するクメン法とよばれる方法は、石油化学工業により盛んとなったものである。

 このほか、ベンゼンを塩素化してクロロベンゼンとし、これを高温高圧下で水酸化ナトリウム水溶液により加水分解する製造法、ベンゼンを触媒存在下塩化水素と空気によりクロロベンゼンとし、さらに高温で水蒸気により加水分解する製造法、またトルエンの酸化による製造法などがある。

[徳丸克己]

性質と用途

フェノールは、一般にそのヒドロキシ基が水素で置換された炭化水素に比べて沸点がかなり高い。また、炭素数の少ないフェノールや多価フェノールは、水にもある割合で溶ける。フェノールのヒドロキシ基はアルコールのヒドロキシ基とは異なり酸性を示すが、一般に酢酸などのカルボン酸よりは酸性がはるかに弱い。フェノールの多くは塩化鉄(Ⅲ)水溶液により特有の呈色反応を示す。たとえば、フェノール(ヒドロキシベンゼン)そのものは紫色を、また、クレゾールは青色を、サリチル酸は紫色を呈する。ヒドロキノンなどの多価フェノールはとくにアルカリ水溶液では空気中の酸素により容易に酸化される。フェノールは一般に臭素の水溶液の作用により芳香環が臭素化され水に不溶性の沈殿を生ずる。

 アルデヒドとは容易に縮合反応をおこす。たとえば、フェノール(ヒドロキシベンゼン)とホルムアルデヒドでは、反応条件を選ぶと、2分子のヒドロキシベンゼンが1分子のホルムアルデヒドと反応して水1分子が脱離し、2個のヒドロキシベンゼンの芳香環がメチレン基で縮合した化合物を与え、この反応が繰り返されると、高分子量のフェノール樹脂を生ずる。

 一般にフェノールは、そのヒドロキシ基が水素で置換された化合物に比べて、種々の試剤に対して反応性が高い。たとえば、芳香族ジアゾニウム塩とは容易に反応して、カップリング反応によりアゾ化合物を生ずる。

 フェノールはラジカルに対して反応性が高いので、各種の有機化合物や高分子物質の自動酸化において抗酸化剤として作用し、また生体における酸化による老化を阻害する。たとえば、フェノールの一種であるBHTやトコフェノールは、そのような抗酸化剤の例である。

 フェノール(ヒドロキシベンゼン)はフェノール樹脂をはじめポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などの各種の合成樹脂や医薬品工業の原料、さらにノニルフェノールのような洗剤や各種の染料の原料として利用される。強力な殺菌効果があるが、皮膚につくと腐食性を示すので注意を要する。

[徳丸克己]

ヒドロキシベンゼン

狭義のフェノールで、特有の臭気をもつ無色の結晶である。常温の水にはいくらか溶けるが、65.3℃以上では水と任意の割合で混ざり合う。またエタノール(エチルアルコール)、ジエチルエーテルなどによく溶ける。

[徳丸克己]

医薬用

殺菌消毒薬。腐食作用があり、皮膚につけると白くなる。日本薬局方には、フェノールのほか、液状フェノール、消毒用フェノール、フェノール水、消毒用フェノール水が収載されている。消毒用には1~5%の溶液が用いられる。消毒用のほか、保存剤としても用いられる。また、弱い知覚麻痺(まひ)作用を有するところから、痛み、かゆみを止める目的でも配合される(フェノール・亜鉛華リニメント)。そのほか、製剤には、歯科治療に用いられる歯科用フェノール・カンフルや、水虫、たむしなど白癬(はくせん)菌の感染症に用いられるヨード・サリチル酸・フェノール精、複方サリチル酸精などがある。

[幸保文治]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

フェノール
〘名〙 (Phenol)
① ベンゼンの水素原子一個と水酸基を置換した化合物。臭気のある無色の結晶。化学式 C6H5OH 石炭乾留によって得られるコールタールから分留された酸性物質。ナイロン、染料、サリチル酸、ピクリン酸などの原料で、消毒剤・殺菌剤ともされる。石炭酸。〔外来語辞典(1914)〕

出典:精選版 日本国語大辞典
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化学辞典 第2版

フェノール
フェノール
phenol

】芳香族炭化水素のヒドロキシ化合物の総称.脂肪族炭化水素のアルコールが中性であるのに対し,フェノールは酸性を示す.1分子中にヒドロキシ基1個をもつものを一価フェノール,2個以上をもつものを二価フェノール,三価フェノール,多価フェノールなどという.一価フェノールには,フェノール,クレゾールキシレノールチモールナフトールなどが,二価フェノールには,カテコールレソルシノールヒドロキノンなどが,三価フェノールには,ピロガロールフロログルシノールなどがある.【】モノヒドロキシベンゼンC6H6O(94.11),C6H5OHをフェノールといい,石炭酸ともよばれる.石炭タールの酸性油中に含まれるが,現在は工業的に大規模に合成されている.合成法には次のような方法がある.
(1)スルホン化法:ベンゼンスルホン酸ナトリウムをアルカリ融解してフェノールにかえる.
(2)クメン法:石油からのベンゼンとプロペンを原料とし,まず付加反応によりクメンをつくり,空気酸化してクメンヒドロペルオキシドにかえ,ついでこれを酸分解してフェノールとアセトンを製造する.

完全に自動化された連続工程で行われるので,大量生産に適する.
(3)塩素化法(ダウ法):クロロベンゼンを高温・加圧下に水酸化ナトリウム水溶液で加水分解する方法.耐圧,耐腐食性の反応措置を用いなければならない.
(4)ラシヒ法:原理はやはりクロロベンゼンの加水分解であるが,ベンゼンの塩素化を塩化水素と空気(酸素)をもって接触的に行い,加水分解は水と気相高温で行う.結果的にはベンゼンと空気とからフェノールを合成する.
フェノールは無色の結晶.融点42 ℃,沸点180 ℃.1.071.1.542.pKa 10.0(25 ℃).水溶液は pH 6.0.普通,空気により褐色に着色しており,特有の臭いをもち,水,アルコール類,エーテルなどに可溶.フェノールは臭素化,スルホン化,ニトロ化,ニトロソ化,ジアゾカップリングなどの求電子置換反応を容易に受け,種々の置換体を生成する.したがって,広く有機化学工業に利用される基礎物質の一つである.フェノール-ホルマリン樹脂,可塑剤,医薬品,染料の原料.そのほかサリチル酸,ピクリン酸の原料となる.強力な殺菌剤となるが,腐食性が強く,人体の皮膚をおかす.[CAS 108-95-2]

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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