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フェロセン

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

フェロセン
ferrocene
化学式 (C5H5)2Fe 。2個のシクロペンタジエニル環の中間に鉄原子が存在するπ錯体。橙色の針状晶,融点 173~174℃。安定で,水,10%水酸化ナトリウム,沸騰濃塩酸に不溶,アルコール,エーテル,ベンゼンに可溶。濃硝酸や濃硫酸には溶けて深赤色を示す。このシクロペンタジエニル環は正五角形で,10個の水素原子は同一の性質をもっている。炭素-炭素間の距離は 1.42 Å ,2個の環の間隔は 3.2 Å ,鉄原子と炭素原子との距離は 2.05 Å である。フェロセンのペンタジエニル環は芳香族性を示し,フリーデル=クラフツ反応を行い,水素添加は容易でない。フェロセンの原子の代りに他の金属,たとえばクロムコバルトが入った化合物を含めて,メタロセンと総称する。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

フェロセン(ferrocene)
二つのシクロペンタジエン環で鉄がサンドイッチにされた分子構造をもつ有機鉄化合物。橙赤色の結晶で有機溶媒に溶ける。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

フェロセン【ferrocene】
化学式[Fe(C5H5)2]。ビス(シクロペンタジエニル)鉄(II)の通称。1951年イギリスのキーリーT.J.KealyとポーソンP.L.Pausonによってつくられた初めてのサンドイッチ化合物(図)。 橙赤色単斜晶系結晶。融点173℃,沸点249℃。昇華性がある。熱的に安定で,気体は470℃に熱しても分解しない。水に不溶,メチルアルコールエチルアルコールエーテルベンゼンなど有機溶媒に可溶。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

フェロセン
ふぇろせん
ferrocene

シクロペンタジエニル環2個が鉄原子をサンドイッチ状に挟んだ構造をもつ有機鉄化合物。メタロセンの代表的なものである。1951年にデュポン社のポーソンPeter Ludwig Pauson(1925―2013)らにより合成された。無水塩化鉄(Ⅱ)にジエチルアミンのような塩基を加え、シクロペンタジエンと反応させて合成する。ベンゼン、エーテルなどの有機溶媒に可溶。また水蒸気蒸留も可能である。ベンゼンに似た芳香族性を示し、芳香族化合物に特有な求電子的置換反応を行う。ただし、ニトロ化などの酸化を伴う反応では、フェロセン環を構成する鉄(Ⅱ)が酸化されて鉄(Ⅲ)になったフェリシウムイオンが生成する。

[佐藤武雄・廣田 穰 2015年7月21日]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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化学辞典 第2版

フェロセン
フェロセン
ferrocene

[Fe(η5-C5H5)2](186.04).ビス(η5-シクロペンタジエニル)鉄(Ⅱ)のこと.最初に合成されたサンドイッチ錯体で,鉄原子の上下にシクロペンタジエニル (C5H5) がサンドイッチ状に配位した安定な化合物.1951年に,J.J. KealyとP.L. Pausonはフルバレンを合成しようとして安定な橙赤色の結晶を得たが,この化合物はシクロペンタジエンの性質を示さず,しかも芳香族性を示すので,フェロセンと名づけられた.1952年から1953年にかけて,X線回折,赤外吸収スペクトルにより,この化合物がサンドイッチ構造であることが確かめられた.合成法には,無水塩化鉄FeCl3と臭化シクロペンタジエニルマグネシウムとの反応,FeCl2とシクロペンタジエニルナトリウムまたはシクロペンタジエニルリチウムとを反応させる方法,ジエチルアミンのような塩基の存在下にFeCl2とシクロペンタジエンとを反応させる方法などがある.融点173~174 ℃,沸点249 ℃.密度1.49 g cm-3.普通の有機溶媒に可溶,水に不溶.100 ℃ 以上で昇華する.反磁性で,酸の共存下で空気酸化すると,青色のビス(η5-シクロペンタジエニル)鉄(Ⅲ)イオン [Fe(C5H5)2] を生じる.ほかの芳香族化合物と同じく,求電子反応が起こりやすい.二つの五員環の配置はねじれ形(図(a))とされたが,結晶中-175 ℃ では,重なり形(図(b))であり,-109 ℃ までは重なり形に近いが,上下の五員環が約9°回転した配置をとっている.室温で,ねじれ形構造をとる証拠は得られていない.ガス状態では重なり形をとる.理論的には重なり形が2.78 kJ mol-1 だけねじれ形より安定である.一方,多くのメタロセンはおもにねじれ形であり,またペンタメチル置換体の[Fe{C5(CH3)5}2]はねじれ形である.Fe2+ のかわりにほかの金属イオンの入ったものを総称してメタロセンという.[CAS 102-54-5]

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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