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ミメーシス

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ミメーシス
mimēsis
模倣,再現ギリシア哲学,特にプラトンアリストテレス哲学の重要な概念。形而上学的にはパラデイグマ paradeigmaとしてのもろもろイデアとこの世界の事象事物の関係を説明する語。たとえば美しいものは美のイデアを分有するかぎりで美しいものたりうるが,分有とは換言すれば後者が範型としてのイデアを模倣することである。美学的には,芸術の本質規定を表わす語で,芸術は理想的典型ないしイデアの模倣であるとされる。一方アリストテレスにおいてはミメーシスは積極的な芸術の本質規定であり,模倣原理はプラトンより緩和されて蓋然性真理基準として立てられ,ミメーシスの対象としてのさまざまな典型の追究の範囲は拡大されている。

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デジタル大辞泉

ミメーシス(〈ギリシャ〉mīmēsis)
《「ミメシス」とも》
芸術理論上の基本的概念の一。芸術における模倣。自然はイデア(事実の本質)の模倣である、とするプラトンの論や、模倣は人間の本来の性情から生ずるものであり、諸芸術は模倣の様式である、とするアリストテレスの説が源にある。
他者の言語や動作を模倣して、そのものの性質などを如実に表そうとする修辞法。
隠蔽的(いんぺいてき)擬態

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

ミメーシス【mimēsis[ギリシア]】
西洋における哲学・美学上の概念。〈模倣〉と訳される。この概念は,自然界の個物はイデアの模像mimēma,mimēseisであるとするプラトン哲学の考え(《ティマイオス》)に由来するが,さらにさかのぼれば,数と個物の関係についてのピタゴラス学派の思想にその原型がある。アリストテレスはプラトンからこの概念をひきついだが,芸術は模倣の模倣であり現実世界よりもさらに真理から遠ざかるものであるとするプラトンの考えをしりぞけて,模倣こそ人間の本然の性情から生じるものであり,諸芸術は模倣の様式であるとした(《詩学》)。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

ミメーシス
みめーしす
mimēsis ギリシア語

「まねる」「似せる」を意味する動詞miméomaiに由来する語で、基本的に模倣ないし再現的呈示を意味する。同義語としてホモイオーシスhomoiōsisがある。喜劇詩人アリストファネスはこの語を、人が他人の姿をまねる場合(『蛙』)と、詩人が詩作において自らがつくりだそうとする役柄をまねる場合(『女だけの祭』)に用いているが、この語の問題性は、まねる主体とその対象の多様性、対象の存在論的位相、そしてポイエーシス(創(つく)ること)の本質とのかかわりにある。

 デモクリトスは、人間は「もっとも肝要なことにおいて(動物の)弟子であった。織ったり縫ったりすることについては蜘蛛(くも)の、家造りについては燕(つばめ)の、歌においては甘い声の白鳥やナイチンゲールの、ミメーシスという仕方における(弟子であった)」といったとされている(『断片』)。思想史上、このような自然physisの模倣という思想はおそらくデモクリトス以前にさかのぼる。肖像画や音楽、文法といった「技術téchnēもまた自然を模倣してこのこと(調和)を創りだすように思われる」というアリストテレス偽書『宇宙論』のことばや、ヒポクラテスの「人間が用いている技術は人の自然的な本質physisに似ている」(De victu)ということばがそれを裏書きする。デモクリトスはまた一方で「人は善くあるべきである、もしくは善き人を模倣すべきである」(『断片』)とも語っており、ミメーシスが形式や構造のそれにとどまらず価値的なるものの模倣という意味で用いられることを示している。

 自然の模倣と価値的なるものの模倣という思想は、プラトンの形而上(けいじじょう)学において統合される。人間的実存はそれを見守る神との緊張関係にたち、その目的は善美の極にたつ「神に能(あと)う限り似ること(ホモイオーシス)」(『テアイテトス』)にある。神と人とは理性という黄金の糸で結ばれており(『法律』)、ロゴスを有するという固有のあり方において人は本来的に神に似ている。しかし、多様なドクサ(思い)とパテーマ(情動)によって神と遠く隔たっている人間は、知を愛し善や美を求める哲学の営みによって、神にかなう自己の本来の性(フュシス)を探し神に倣ってゆかねばならない(『パイドロス』)。それゆえ、哲学の道において自己自身を知ることと神に倣うことは本来同じことであり、人間的活動のいっさいは無論ポイエーシスも含めて根本的にミメーシスである。したがって、「詩人はムーサの神々に比べれば劣った創造者である」(『法律』)といわれるとき、ここには宇宙(コスモス)という作品を創りだす大いなる創造(ポイエーシス)と小宇宙の必然性を範型として神に倣いつつ小さな必然としての作品を創りだす人の小さな創造のアナロギア(類比)がある。

 文芸創作を代表とする人間的なポイエーシスがミメーシスの本来の道より逸脱し、個々の現象をただ「その現れに即して」模倣的に再現しようとするとき、すなわちもっとも平板な意味における自然や事物の模倣を遂行するとき、たとえば詩人(ポイエーテース)は単なる「影像の模倣者(ミメーテース)」に堕落することになる(『国家』)。結果としての作品(ポイエーマ)が神の作品の模倣(ミメーマ)となるためには、創造主体におけるポイエーシスの原因の類比が成立していなくてはならない。主体の原因性についてのプラトンの形而上学的認識論的要求はきわめて厳格であるから、神に倣って善美の極に到達することは人間にとっての永遠の課題となり、真理(アレーテイア)のミメーシスとしてのポイエーシスは事実上きわめて困難となって、ポイエーシスは、事実上単なる虚構(プセウドス)に終始してしまうことになる。

 アリストテレスにおいても、ポイエーシスはミメーシスであり、悲劇のポイエーシスは「人生と行為のミメーシス」(『詩学』)として、歴史記述とは異なって、「起こりうること」「普遍的な(生の)ありよう」を語る(同書)ことから、ミメーシスはもはや単なる現実的事象の模倣ではない。しかし彼は、プラトンがミメーシスを、何をいかに語るかという点において事実上真理より遠ざかるとして、形而上学的認識論の立場から批判するのに対して、プラトンが警戒した語り出された可能的世界(ホイアー・アン・ゲノイト)の説得力、受け手に与える現実的効果(驚きやカタルシス)を重視し、ミメーマとしての作品の存在を主観的真理としての蓋然(がいぜん)性の範囲で許容している。

 このようにしてミメーシスの理念はプラトンによって形而上学的に吟味され、アリストテレスによって現実的意味を獲得して後世にさまざまの影響を与えていった(たとえば18世紀フランス美学における「美しい自然の模倣」)。模倣的再現に対するアンチテーゼとしての表現の理念や抽象的な芸術を経験した今日においても、ミメーシスの思想は創作や追体験としての享受の理念あるいは芸術の分類の原理として重要な役割を担っている。

[藤田一美]

『E・アウエルバッハ著、篠田一士・川村二郎訳『ミメーシス――ヨーロッパ文学における現実描写』上下(1967・筑摩書房)』『藤田一美著『ミメーシスとポイエーシス』(『新岩波講座 哲学13 超越と創造』所収・1986・岩波書店)』『W.TatarkiewiczHistory of Aesthetics, I(1970, Mouton‐PWN, Warszawa)』

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