●ヨーロッパ通貨制度【ヨーロッパつうかせいど】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
ヨーロッパ通貨制度
ヨーロッパつうかせいど
European Monetary System; EMS
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
世界大百科事典 第2版
ヨーロッパつうかせいど【ヨーロッパ通貨制度 European Monetary System】
[背景]
1960年代後半において米ドルに対する信認がしだいに低下し,ドル不安が高まる中で,EC諸国の間にヨーロッパ通貨相互間の変動幅を縮小し安定的な通貨圏を設立すべきとの気運が高まり,69年に12月のヨーロッパ理事会において,漸進的な経済・通貨統合の創設につき基本的合意が成立した。これを具体化したウェルナー報告が70年10月に発表され,80年までに3段階に分けて経済・通貨同盟を達成することとされた。 この間ドル不安のいっそうの高まりから,国際金融情勢は緊迫し,1971年8月のニクソン・ショック,同年12月のスミソニアン合意後も不安定な状態が続いたため,ヨーロッパ理事会は72年3月,ウェルナー報告の提案の具体化として加盟国通貨相互間の為替変動幅を縮小させる措置を実施した。これは,先のスミソニアン合意で各国通貨の為替変動幅が対ドル中心相場(セントラル・レート)の上下各2.25%とされたのに対し,EC諸国通貨相互間の変動幅を上下あわせて2.25%とするもので,あたかも上下計4.5%の幅のトンネルの中を幅2.25%の管が蛇行していく形となるため,〈スネーク〉ないし〈トンネルの中の蛇〉と称された。
出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.
日本大百科全書(ニッポニカ)
ヨーロッパ通貨制度
よーろっぱつうかせいど
European Monetary System
ヨーロッパ連合(EU)の前身であるヨーロッパ共同体(EC)が通貨同盟を完成させるために設けた中間的措置。略称EMS。ECは関税同盟、共同市場を実現し、経済統合の完成に向かって進んできたが、次の目標である通貨同盟は、EU加盟国通貨を統合し最終的にはヨーロッパ単一通貨制度を目ざすもので、これには各国の主権の部分的委譲という政治問題が絡むため、一挙には推進できない。そこでそれへの中間的措置として1979年3月に設立されたのがEMSである。
EMS成立の基礎は、1973年2月のドルの再切下げを契機に誕生したECの共同フロート制(共同変動相場制)である。共同フロート制はドル危機の影響を緩和し、域内通貨の統合促進を目的としたが、しかしその後も通貨不安は収まらず、フランス・フランの離脱、復帰、再離脱やマルク、ギルダーの切上げなどが相次いだため通貨統合は進展しなかった。そこで西ドイツ(当時)とフランスとの間で折衝が進められ、78年7月のブレーメンにおけるヨーロッパ理事会でまとまった構想がEMSである。
EMSは共同フロート制を継承したものであるから、域内固定レート制、域外変動レート制をとった。域内では各通貨は平価を固定し、為替(かわせ)レートはその上下各2.25%の幅で変動が認められた(1993年8月より上下各15%へ拡大)。これをパリティ・グリッドparity grid方式という。参加国通貨は共通の計算単位ECU(エキュ)で表示される。ECUの価値はEC加盟国の通貨による標準バスケット方式で決まるが、バスケットの構成比は定期的に点検される。為替レートが変動幅の限度に達した際には、関係中央銀行は市場介入によってレートの変動を抑えなければならない。このような参加国の安定義務を助けるために創設されたのが、ヨーロッパ通貨協力基金(EMCF)である。1991年末に合意されたEU条約(マーストリヒト条約)に沿って、99年1月にEU加盟国のうち11か国で単一通貨ユーロが決済通貨として使用され始めたことにより、EMSは98年末に発展的解消を遂げた。なお、2002年1月には当初の参加国にギリシアを加えた12か国でユーロ紙幣、ユーロ硬貨の流通が始まり、同年2月末までに各国通貨とのすべての切替え作業を終えた。
[土屋六郎]
『島崎久弥著『ヨーロッパ通貨統合の展開』(1987・日本経済評論社)』▽『島野卓爾著『欧州通貨統合の経済分析』(1996・有斐閣)』▽『田中素香編著『EMS:欧州通貨制度――欧州通貨統合の焦点』(1996・有斐閣)』▽『桜井錠治郎著『EU通貨統合――歩みと展望』最新版(1998・社会評論社)』▽『嘉治佐保子著『国際通貨体制の経済学――ユーロ・アジア・日本』(2004・日本経済新聞社)』
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
精選版 日本国語大辞典
ヨーロッパ‐つうかせいど ‥ツウクヮセイド【ヨーロッパ通貨制度】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
デジタル大辞泉
ヨーロッパ‐つうかせいど〔‐ツウクワセイド〕【ヨーロッパ通貨制度】
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
「ヨーロッパ通貨制度」の用語解説はコトバンクが提供しています。
●ヨーロッパ通貨制度の関連情報