●リチウムイオン電池【りちうむいおんでんち】
知恵蔵
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、1980年代、携帯電話やノートパソコンなど携帯電子機器の開発に伴い、従来の鉛蓄電池やニカド電池より小型、軽量で高容量な二次電池のニーズが高まるなかで開発され、90年代に入って実用化された。現在実用化されている二次電池のなかで、リチウムイオン電池は、同じ大きさで約3倍の電圧が得られ、継ぎ足し充電にも耐え、自己放電も少ないという優位性があり、携帯電子機器の電源として適している。継ぎ足し充電ができるのは、放電しきらないで充電すると充電容量が減ってしまうメモリー効果がほとんどないためである。更には、高速充電が可能で、幅広い温度帯で安定して放電するといった特徴があり、電気自動車やハイブリッド自動車、米政府が導入するF35戦闘機や人工衛星にも使用されている。
一方、欠点としては満充電状態で保存すると急激に劣化し、充電容量が大幅に減ることで、携帯電話用の電池では劣化に伴い膨潤することがある。また、過充電や過放電により電極が激しく発熱し、破裂したり発火したりする危険性がある。これを防ぐため、リチウムイオン電池には、電圧などを厳密に管理する制御回路と過充放電を防ぐ保護機構が必要となる。
大型リチウムイオン電池を民間航空機として初めて搭載したボーイング787型機では、2013年1月、電池から発火する事故が相次ぎ、米国連邦航空局、日本の国土交通省始め各国の関連当局は、電池システムの改修が完了するまで同機の運航を禁止した。同機に搭載の電池は、京都に本社を置く株式会社GSユアサ製。ただし、同社の電池が事故の本質的原因かどうかは明らかになっていない(2013年1月末時点)。
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2013年)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
パソコンで困ったときに開く本
リチウムイオン電池
出典:(株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本」
朝日新聞掲載「キーワード」
リチウムイオン電池
(2020-12-08 朝日新聞 朝刊 埼玉首都圏・1地方)
出典:朝日新聞掲載「キーワード」
デジタル大辞泉
リチウムイオン‐でんち【リチウムイオン電池】
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
リチウムイオン電池
リチウムイオンでんち
lithium ion cell
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
化学辞典 第2版
リチウムイオン電池
リチウムイオンデンチ
lithium ion battery
金属リチウムを負極に用いず,正極および負極の両者ともリチウムを含む化合物を用いた二次電池.1991年,日本ではじめて実用化された.この電池は軽量で,エネルギー密度が高いため,ノートパソコン,携帯電話などの携帯機器用の電源として幅広く用いられている.一般に使用されているリチウムイオン電池では,負極に黒鉛を代表とする炭素材料,正極にリチウムコバルト酸化物,電解液にリチウム塩を有機溶媒に溶解した有機電解液が使用され,平均放電電圧は3.6~3.7 V である負極の黒鉛を C6,リチウムコバルト酸化物をLiCoO2で表すと,自発反応である放電時の電極反応式は次のとおりとなる.
負極 LixC6 → C6 + xLi+ + xe-
正極 Li1-xCoO2 + xLi+ + xe- → LiCoO2
全体 LixC6 + Li1-xCoO2 → C6 + LiCoO2
充電時にはこの逆の反応がほぼ可逆的に起こる.負極・正極のどちらも層状構造を有しており,その層間にあるリチウムイオンが放電時には負極から正極に移り,充電時には逆に正極から負極へ移動する.結晶構造を保ったまま電極のなかへリチウムイオンが取り込まれる反応をインターカレーション反応,電極からリチウムイオンが放出される反応をデインターカレーション反応という.リチウムイオン電池の動作原理はこのような可逆的なリチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーション反応にもとづく.電解質として有機電解液のかわりにポリマー電解質を用いたポリマー電池が実用化されている.
出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
東京工業大学名誉教授理博 吉村 壽次(編集代表)
信州大学元教授理博 梅本 喜三郎(編集)
東京大学名誉教授理博 大内 昭(編集)
東京大学名誉教授工博 奥居 徳昌(編集)
東京工業大学名誉教授理博 海津 洋行(編集)
東京工業大学元教授学術博 梶 雅範(編集)
東京大学名誉教授理博 小林 啓二(編集)
東京工業大学名誉教授 工博佐藤 伸(編集)
東京大学名誉教授理博 西川 勝(編集)
東京大学名誉教授理博 野村 祐次郎(編集)
東京工業大学名誉教授理博 橋本 弘信(編集)
東京工業大学教授理博 広瀬 茂久(編集)
東京工業大学名誉教授工博 丸山 俊夫(編集)
東京工業大学名誉教授工博 八嶋 建明(編集)
東京工業大学名誉教授理博 脇原 將孝(編集)
Copyright © MORIKITA PUBLISHING Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
日本大百科全書(ニッポニカ)
リチウムイオン電池
りちうむいおんでんち
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
「リチウムイオン電池」の用語解説はコトバンクが提供しています。
●リチウムイオン電池の関連情報
関連キーワード
| 神経伝達| 水素化物イオン| LIL| カルボカチオン| ブラティアヌ| イオン| 水のイオン積| 陽イオン| FIM|