●三位一体【さんみいったい】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
三位一体
さんみいったい
Trinitas; Trinity
この教理は何世紀にもわたり,多くの論争を引起しながら徐々に形づくられていった。当初,旧約聖書から受け継いだ一神教的要求と聖書の教えをギリシア=ローマ的宗教に解釈する必要性からロゴス (言葉) としてのキリストの神性は頂点に立つ神の下に位置するものと解釈されていた。また一方,父,子,聖霊は一つの神のうちにある三つの位格をそれぞれ啓示しているが,神そのものが分れて存在するものではないとする別の解釈もあった。前者には父,子,聖霊にはっきりとした区別を認め,それぞれが同等ではなく,したがって神の単一性も否定 (聖子従属説) し,後者には神の単一性を認めるが,それぞれの位格が異なる (様態説) という特徴がある。父,子,聖霊の違いと単一性の論争が,一つの実体において三つの位格が存在するという教理にまとめられ,一般に認められるようになったのは4世紀になってからである。
325年のニカイア公会議は,聖霊についてはほとんど言及されなかったが,子は父とは本質において同一である (ホモウシオス) という,教理解釈にとって重要な信条を発表した。その後の半世紀の間,アタナシウスはこのニカイア信条を擁護し,さらに教理を掘り下げたが,4世紀の終りになり,カエサレアのバシレイオス,ニュッサのグレゴリオス,およびナジアンゾスのグレゴリオス (→カッパドキアの3教父 ) の指導の下,三位一体の教理は本質的に現在と同じ枠組みをとるようになった。
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デジタル大辞泉
さんみ‐いったい〔サンヰ‐〕【三位一体】
2 三者が本質的に全く同一であるということ。
3 三つのものが一つになること。また、三者が心を合わせること。
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世界大百科事典 第2版
さんみいったい【三位一体 Trinity】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
三位一体
さんみいったい
trinitas ラテン語
trinity 英語
キリスト教のもっとも重要な教義。聖書において啓示される神について、信仰経験に基づいて展開された思索の成果であるといえる。三位一体とは簡潔に表現すると、聖書の神は、父と子と聖霊であることにおいては三つのペルソナ(位格)をもつが、神であること(本質)においては一つの実体として存在するということである。つまり、一なる神が父と子と聖霊という三つのペルソナにおいて啓示されたことを、人間言語の制約下で示すものである。キリスト教会では、この教義は理性の明るみにおいて把握できぬ至高の秘義(玄義)であると考えられるが、かならずしも理性と対立するものではない。「三位一体」という語は、最初にテオフィルスTheophilus Antiochenus(180ころ)によってギリシア語の三つtriasで表されたが、聖書にはみいだされない。キリスト教神学ではこの教義の予表を、アブラハムの家に「三人の人」が訪れた話(「創世記」18章)やイザヤの幻の三つの聖なるものなどのように、『旧約聖書』のテキストにみられると考えた。また『新約聖書』のある箇所、とくに「マタイ伝福音(ふくいん)書」(28章19)の「父と子と聖霊との名によって、彼らにバプテスマを施せ」というバプテスマ(洗礼)の定式において、明らかに三位一体を示唆しているとも考えた。
この教義は初期キリスト教の教父によってしだいに形成されていったが、父と子と聖霊のそれぞれの特性を認めつつ、「一なる神である」という言語的表現の微妙さと難解さのために、この問題をめぐって正統と異端の論争が相当長く続く。ニカイア公会議(325)とコンスタンティノープル第1回公会議で、この教義はきわめて単純な形で定義された。サベリア派に対しては父と子と聖霊の区別を、アリウス派に対しては父と子と聖霊の等しさと共なる永遠性が主張された。三つのペルソナは、父は生まれず、子は父によって生まれ、聖霊は父から子を通して発出するという点で、その起源においてだけ相違する。教父時代にいくつかの三位一体論が論述されたが、もっとも徹底的で壮大な力作はアウグスティヌスのものであり、後世に大きな影響を与えることになった。人間の自己知と自己愛という現象を、神の三位一体を説明するのに類比的に用いているという点に、彼の三位一体論の特徴がみられる。
[中沢宣夫]
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精選版 日本国語大辞典
さんみ‐いったい サンヰ‥【三位一体】
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四字熟語を知る辞典
三位一体
[使用例] エロティシズムと、グロテスクと、ナンセンスとが〈略〉一世の風潮となっていた。その三位一体が作り出す都市の風俗は[石川達三*ろまんの残党|1947]
[使用例] しかし、「真・善・美」の三位一体をバラバラに解体するのではなく[中島健蔵*文学の根本問題|1958~59]
[解説] 本来はキリスト教の中心の奥義の一つで、創造主としての父である神と、
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