●上部消化管内視鏡検査【じょうぶしょうかかんないしきょうけんさ】
日本大百科全書(ニッポニカ)
上部消化管内視鏡検査
じょうぶしょうかかんないしきょうけんさ
内視鏡を口または鼻から挿入して、おもに上部消化管(食道、胃、十二指腸)を観察する検査。一般には「胃カメラ」ともよばれているが、現在はカメラではなく、CCDを先端に取り付けた電子スコープ内視鏡が用いられている。
消化管を内側から肉眼的に観察する以外に、超音波を消化管や消化管周囲の臓器(リンパ節、胆管、膵臓(すいぞう)など)に照射して信号を画像化する超音波内視鏡や、狭帯域光や非可視光・レーザー光や蛍光など特殊な波長光を用いて画像化するシステムなど、目的や用途に応じてさまざまな方式で行われる。観察だけでなく、組織診断を目的とした生検や、内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)、内視鏡的総胆管結石摘出・ドレナージ(胆汁や膵液などの排出)などの治療を行うことも可能である。
内視鏡は口から挿入するタイプが多いが、細径内視鏡を鼻孔(びこう)から挿入する経鼻内視鏡検査も行われている。検査前日夜より絶食とし、左側臥(そくが)位で、咽頭(いんとう)または鼻腔(びくう)麻酔下に実施される。検査時間の目安は経口内視鏡で5~10分、経鼻内視鏡で10~15分程度である。
市区町村などが行う胃がん検診(対策型検診)においても、2016年(平成28)4月より、従来から行われていた問診および胃部X線検査に加えて上部消化管内視鏡検査が実施されるようになっている。
[渡邊清高 2019年5月21日]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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四訂版 病院で受ける検査がわかる本
上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡を使う場合
食道、胃、小腸など上部消化管の
①診断:生検、擦過
②治療:ポリープ・早期がんの切除、異物の除去、薬物局所注入(がん、止血)
いわゆる胃カメラのことで、ファイバースコープで胃を観察する検査です。先端が喉を通るときは怖がらず、リラックスして受けましょう。
胃がんの確定診断に欠かせない検査
前項のバリウム検査(→参照)で、胃がんや潰瘍が疑われた際に行う最終検査です。
胃がんの場合、確定診断するためにはがん細胞の証明が必要になるため、内視鏡で直接病変を肉眼的に観察・撮影します。がん細胞らしき病変があれば、その場で病変の一部を採取したり(
内視鏡は食道から胃、十二指腸までを調べるもので、がんや潰瘍をはじめポリープ、リンパ腫、炎症の確定診断、食道や胃の静脈
胃がんは白苔や出血、 ひだの乱れなどが写る
胃がんには、胃の粘膜がくぼんだ形(
陥凹型のがんがあると、不整形の白い
■胃がん
早期がんのⅡc型(表面陥凹型)。
マルで囲んだ写真右側の白苔がこびりついているところががん。左下部の穴は十二指腸への出口。直径約1㎝。

マウスピースを口にくわえて検査
検査前に、唾液や胃液の分泌を抑える薬と、胃の運動を抑える薬を筋肉注射し、さらに
観察・生検(擦過)後、ファイバースコープを通して止血剤を胃の中に散布し、空気を吸引し、ファイバースコープをゆっくり抜いて終了です。時間は10~15分、検査後30~60分安静にします(麻酔薬を使ったときは60分くらい)。
なお、近年では、鼻の粘膜をスプレーで麻酔し、鼻からファイバースコープを入れる経鼻内視鏡も行われるようになりました。
検査当日の朝は絶食、常用薬も飲まないように
検査前日の夕食は、8時頃までに済ませ、当日の朝は絶食、常用薬も飲まないようにします。検査前に排尿しておきます。緑内障、前立腺肥大症、心臓病のある人は検査前に申し出ます(→参照)。心臓のペースメーカーが入っていても検査できます。
検査後2~3時間、尿の出が悪くなることがありますが自然に戻るでしょう。検査直後の車の運転は禁止です。
医師が使う一般用語
「いカメラ」「いファイバースコープ」
出典:法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」
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