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不適応【ふてきおう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

不適応
ふてきおう
maladjustment
生体が多少とも永続的に環境適応できないこと。生体の身体的障害や心理的傾向原因がある場合と,環境条件が不適当な場合とがあり,神経症精神病人格障害などを生じる。社会的環境への適応異常が問題にされることが多く,精神分析では本能的衝動と社会的要請との葛藤が重視される。

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デジタル大辞泉

ふ‐てきおう【不適応】
環境・状況・条件などに適応できないこと。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

ふてきおう【不適応】

出典:株式会社平凡社
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精選版 日本国語大辞典

ふ‐てきおう【不適応】
〘名〙 適応しないこと。特に、心理学で、適応に失敗して心身に好ましくない状態が生じていること。

出典:精選版 日本国語大辞典
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最新 心理学事典

ふてきおう
不適応
maladaptation,maladjustment
適応異常abnormal adjustment,適応障害adjustment disorderなどともよばれる。英語のmaladaptationとmaladjustmentは,臨床上は厳密に区別されているわけではないが,生理的な不適応を表わす際にmaladaptationが,心理学的・医学的不適応の場合にmaladjustmentあるいはadjustment disorderが用いられることが多い。進化論における環境への系統発生的適合を順応adaptationとよび,特殊な環境への心理学的適合を適応adaptation,adjustmentとよぶこともある。しかし,たとえば同一の生物種がさまざまな環境に適応し,形態や行動などを変化させて最終的には固定される適応拡散adaptive radiationのように,生物学的現象にも適応の語を用いることがある。人間では,順応が暗所順応のような現象に用いられるのに対して,適応はとくに社会的環境や人間関係などへの適合に用いられることもある。また,受動的な適合である順応とは異なり,適応は個体から環境への積極的な働きかけや,個体のもつ目標価値,環境へ何を要請するかという行動目標なども意味する。

【不適応の種類と概要】 不適応とは,外的環境(自然的環境と社会的環境)および個人の精神内界に適応する行動が十分取れず,本人または社会になんらかの不利益が生じている状態である。適応のプロセスは生理と心理の両側面で生じ,個人の部分から全人格までが含まれる。したがって,不適応もそれらすべての領域において生じると考えてよい。また,不適応の持続の点からは,一過性の適応困難状態から,慢性的な社会的不適応まで,その時間幅はさまざまである。臨床上問題とされるもののほとんどは,社会的環境(家庭,学校,職場,地域社会など)における不適応であり,外的適応(社会文化的基準に照らして,他者と協調し,社会的に受け入れられている状態)と内的適応(自分の内的な価値基準や要求水準に照らして,自己受容,安定感,充足感,自尊感情などが得られている状態)のいずれか,あるいは両方に問題が生じている。このように,不適応は状態像なので,それが生じる原因やプロセスは,個人や状況に応じてさまざまであり,それを説明する理論も精神分析から生物学的要因を含むものまで幅広く存在する。

 不適応には次の三つのタイプがあるといわれてきた。まず,適応の失敗によって生じる欲求不満,葛藤,不安,攻撃性などの不快な感情が鬱積し,内的緊張状態が持続しているタイプである。二つ目は,不安や緊張を処理しようとする自我が適応機制を不適切に用いているために心理,行動,身体にさまざまな障害が生じているタイプである。三つ目は,欲求を満足させる方向で内的緊張緩和のための行動を取ったにもかかわらず,その結果が外的適応を損なっているタイプである。

 不適応行動maladjustment behaviorとは,環境やその個人の精神内界に対して,不適切な行動や反応を示すことを包括的に意味する。そのため,脳の器質病変や重篤な精神障害によって環境に適応できない場合の,いわゆる病的行動(幻覚や妄想などもここに含まれる場合がある)から,動悸,発汗,不眠などの身体症状,あるいは学校への不適応の結果としての校内暴力や不登校まで,生物,心理,社会の各側面に現われるあらゆる行動が含まれる。一般に,次のような不適応行動が見られる。①不安,強迫行為,回避行動など,いわゆる不安障害の症状,②抑うつや焦燥感など,いわゆる気分障害の症状,③身体になんらかの異常が生じる,いわゆる心身症の症状,④不眠,倦怠感,食欲不振などのストレス反応,⑤暴力や破壊的行動,あるいは法律に反する行動を取る反社会的行動,⑥物質乱用や依存のような問題行動の習慣化,⑦学業不振や怠学などの学業上の問題行動,⑧孤立,緘黙,自閉などの非社会的行動や,対人関係における障害。なお,これらの不適応行動も一時的にせよその個人の安定追求の方法なので適応のプロセスだとする考え方もある。

【性格の偏りと不適応】 不適応が出現し持続する原因については,自我や適応機制といった精神分析的概念に基づいた説明が従来行なわれてきた。それによると,不適応とは,不満,不安,緊張などがそれらをコントロールする力(耐性tolerance)を超えたことによって引き起こされる状態である。フロイトFreud,S.は,パーソナリティや自我を脅やかす不均衡状態を平衡状態に回復させる心の働きを適応機制adjustment mechanismとよんだ。たとえば,抑圧(不安や苦痛を招く恐れのある欲求,感情,記憶などを無意識の中に閉じ込め,意識に上らないようにすること),取り入れと同一化(他人の感情,思考,行動などの特性を自分に取り入れて同一に感じることを取り入れとよび,取り入れられた対象の特性を身につけることを同一化とよぶ),投射(抑圧された欲求や感情を外界に投げ出すことによって他人のものとみなすこと),反動形成(抑圧を補強するために,その反対物にエネルギーを集中させること),退行(幼児返り),合理化(理由づけ,言い逃れ),逃避(適応困難な状況や不安から退くこと),解離(意識が分離され,その後に健忘が見られること),知性化(知的な活動で欲求を抑圧すること),昇華(欲求を建設的な活動におき換えること),補償(劣等感を克服するために活動すること)などである。この適応機制はだれにでも存在し,日常的に用いられているが,昇華,補償,同一化以外は,自我が現実から目を逸らしたり,現実を歪めたり,自己を偽ったりして心の平衡を保とうとする非合理的な方法だといえる。

 適応機制は,幼少期においては不安や苦痛を処理する方法として適応的に働くが,その後も習慣的に固定したり,不必要なときにも常用したり,過度に用いられたりすると,自我形成が障害され,現実的な問題解決を図る適応能力が弱くなり不適応を生じやすい。このようなパーソナリティ傾向をもつ人間が不適応を生じた場合,精神医学的にはパーソナリティ障害personality disorderと診断されることになる。不適応あるいは不適応行動のあり方によって,『精神障害の診断と統計の手引き』第4版の修正版(DSM-Ⅳ-TR)では妄想性,統合失調質,統合失調症型,反社会性,境界性,演技性,自己愛性,回避性,依存性,強迫性の分類がなされる。また,クラインKlein,M.らによる対象関係論では,たとえば自我分裂,投影性同一視,否認,原始的理想化,躁的防衛などのような,境界性パーソナリティ障害や統合失調症に関係するといわれる不適応的な「原始的適応機制」を想定する。ただし,近年では,非病理的でDSM-Ⅳ-TRの診断分類のいずれにも当てはまらず,行動上は長期の引きこもりや頻繁な転職として現われるような耐性の低さも問題になっている。

 近年注目されている性格論のビッグ・ファイブBig Five(性格の5大因子)理論に基づく5因子性格検査(FFPQ)では,性格を①外向性-内向性,②愛着性-分離性,③統制性-自然性,④情動性-非情動性,⑤遊戯性-現実性に分類する。これらとDSMにおけるパーソナリティ障害,あるいは不適応との関係についても研究が進められている。現在のところ,①の内向性と④の情動性が不適応と関連する可能性が高いといわれている。

 一方,環境と個人の処理資源とのバランスの悪さによって不適応が生じるという説明もある。たとえば,ラザルスLazarus,R.S.は,個人のもつ資質に負担をかけたり,その人間の資源を超えたり,個人の安寧を脅やかすと評価されるような,個人と環境との関係をストレスstressと定義した。つまり,環境からの要請が,それに対する個人の対処能力を凌駕するときにストレスとして評価される。このストレスが強ければ不適応に陥る可能性が高まる。ラザルスとフォルクマンFolkman,S.は,ストレスとその反応に関する包括的なトランスアクショナル・モデルを提唱している。そのモデルでは,環境からの要請における属性は強度,持続性,複雑性,新奇性,予測性などに分類され,個人の心理的・社会的資源には認知的評価,心理的対処,先行経験などが含まれるが,それぞれの要因はその個人のライフステージによって姿を変える。適応している状態とは,両者の間にパーソナルコントロールが利いている場合を指す。しかし,そのコントロールが利かなくなると心理生物学的ストレス反応が認知,行動,情動,自律神経,内分泌,神経の各領域に現われる。さらに,このストレス反応に,遺伝的特性,加齢,栄養状態などの生物学的脆弱性が絡むと,心身症が発症する可能性が高まる。

 ストレスの環境要因として,ホームズHolmes,T.H.とレイRahe,R.H.がライフイベントlife eventsとづけた生活上の変化(結婚,離婚,入学など),家族構成員の変化(出産,死別など),大きな失敗(法律違反,借金など),環境変化(転居,転校など)は,個人の対処能力を凌駕する可能性が高い出来事である。また,ラザルスらが日常のいらだちごとdaily hasslesとよんだ仕事への不満,食事の世話,時間の無駄遣いなどは,一つひとつのインパクトは小さくても,不適応による心身の健康状態の予測にはライフイベントよりも有意義だと考えられている。家庭内不和,職場や学校でのいじめ,過酷な労働なども日常での大きなストレスになる。

【認知行動療法とソーシャル・サポート】 認知行動理論では,環境,行動,考え方,感情,身体状態,動機づけなどを,先行条件,症状(現在の状態),結果,維持要因などに構造化(機能分析)して理解する。不適応行動において,問題を回避したり,感情を安定化させたりすることによって適応行動が強化,学習されるが,その効果は一時的であり,問題は解決されないので不適応状態は維持される。また,出来事をストレスとして評価しやすい認知傾向が存在すると,環境からの要請は主観的に大きくなり,不適応に陥りやすくなる。たとえば,ベックBeck,A.T.の「認知の歪み理論」によると,抑うつや不安などの症状を呈しやすい人間は,それまでの人生で学習された「不適応的スキーマ」を有している。ベックのいうスキーマとは,その人の人生観や自己観を規定する基本的な信念であり,人はそれを通して環境を認知している。不適応的スキーマmaladaptive schemaは,「自分はだれからも期待されていない」とか「世界は裏切りに満ちている」などといった自分や環境に対する否定的な信念であり,中核信念ともよばれる。不適応的スキーマを有する人は,内的適応がそもそも悪い状態にあるといえる。また,こうした人間は,自分や出来事に関して偏った推論(媒介信念ともよばれる)を行なう可能性が高い。素因として不適応的スキーマや推論の偏りを有する人間は,自らを取り巻く環境をストレスだと認知しやすく,またそれに対処するだけの能力や資源が自分にはないと自己認知しやすいため,ほかの人間が適応できる環境でも不適応を生じやすい。近年,ヤングYoung,J.らが,認知行動療法の手法を用いつつパーソナリティ障害に適用できるスキーマ療法とよばれる治療法を開発している。彼らによると,不適応を生じやすいパーソナリティには「早期不適応スキーマ」が存在しているという。彼らのモデルは五つのスキーマ領域(断絶と拒絶,自律性と行動の損傷,制約の欠如,他者への追従,過剰警戒と抑制)と18のスキーマから構成される。五つのスキーマ領域は,幼少期の感情的欲求の「満たされなさ」を分類したものである。

 ストレスに対処する能力が低い,あるいは対処するための資源が乏しい場合も不適応に陥りやすい。ラザルスはストレス対処のタイプとして次の八つを挙げている。計画型(問題解決の計画を立てたり,いろいろな方法を試してみたりする),対決型(困難な状況を積極的に変えようとする),社会的支援模索型(問題解決のために他者に相談する),責任受容型(自分の行動を反省し,場合によっては謝罪する),自己コントロール型(自分の考えや感情を表出せず,問題に慎重に取り組む),逃避型(逃げ出す,アルコールなどに頼る),離隔型(問題と自分との間を切り離し,問題を忘れようとする),肯定評価型(困難を解決した経験を評価し,進歩,発展をめざし自分の行動を改善していく)。個人がこれらのタイプを特徴的にもっていれば,それがその人のストレス対処特性ということになる。ストレス対処には,これらの対処法を複数使えるようにしておくレパートリーの豊富さと,状況や問題に応じて使い分ける柔軟性の両方が重要だといわれている。不適応に陥りやすい人間は,レパートリーが乏しく,柔軟性に欠けるストレス対処をしがちである。

 脳の器質的病変,注意欠陥,多動性障害(ADHD)や自閉症などの発達障害,精神遅滞(知的障害),統合失調症や双極性障害などの重篤な精神障害によって,脳の認知機能は大きく低下する場合があり,ストレス対処能力も低下するため不適応を引き起こしやすい。たとえば,認知症では記憶,ADHDでは注意機能,統合失調症では言語機能や遂行機能に問題が生じる。これらの一次障害も内的不適応,外的不適応のいずれも生じさせるが,こうしたいわば一次不適応に対する社会からの援助(ソーシャル・サポート)がないと二次不適応を作り出し問題を拡大してしまう。

 ソーシャル・サポートsocial supportとは,家族,友人,隣人など,その人間を取り巻くさまざまな人からの有形・無形の援助を指す。ソーシャル・サポートが貧困な状態とは,孤立しがちで,援助を得にくい環境にあるため,ストレスへの対処資源が乏しいことを意味する。つまり,周囲の人びとと良好な対人関係を結んでいる人間は,そうでない人間よりも心身ともに健康に生活することができるということになる。ソーシャル・サポートが乏しい人間が不適応に陥ると,さらにソーシャル・サポートが乏しくなり,悪循環から抜け出せなくなる。また,その人間が体験するストレスが大きくないときはソーシャル・サポートの高低で健康に差は生じないが,ストレスが大きくなると差が大きくなるといわれている。これをストレス緩衝効果stress buffering effectとよぶ。ストレス緩衝効果は,潜在的ストレスフルイベントの評価段階と実際にストレスフルだと評価された出来事への対処段階の両方で発揮される。評価段階では,ソーシャル・サポートの高い人間はストレスフルイベントの心身健康へのインパクトを低く見積もり,対処可能性を高く見積もることが知られている。また,対処段階では,ソーシャル・サポートが問題解決に利用されたり,問題を深刻にとらえることを抑制したり,健康的行動を促進したりすることが知られている。近年では,ソーシャル・サポートを一方的に受け取るだけでは不適応は改善せず,互いに与え合う互恵性が大切だとする説もある。

【適応障害adjustment disorder】 DSM-Ⅳ-TRにおける適応障害は,はっきりと同定されるストレス因子に対する心理的反応で,その結果,臨床的に著しい情緒的または行動的症状が出現するものである。診断基準Aとして,ストレス因子の始まりから3ヵ月以内に症状が出現していること,基準Bとして,症状や行動は,⑴そのストレス因子に暴露されたときに予測されるものをはるかに超えた苦痛であり,⑵社会的または職業的(学業上の)機能に著しい障害が生じていること,基準Cとして,他の特定のⅠ軸障害(臨床疾患)の基準を満たさず,すでに存在するⅠ軸またはⅡ軸障害(パーソナリティ障害,知的障害)の単なる悪化ではないこと,基準Dとして,症状は愛する人の死によって引き起こされる死別反応を示さないこと,基準Eとして,そのストレス因子が(またはその結果)が終結すれば,症状はその後6ヵ月以上持続しないこと,が挙げられている。

 さらに,主たる症状を最も特徴づける病型に基づいてコード番号が以下のようにつけられる。抑うつ気分を伴うもの(309.0)で,優勢に見られるものが抑うつ気分,涙もろさ,絶望感などの場合。不安を伴うもの(309.24)で,優勢に見られるものが神経質,心配,過敏などの場合で,子どもの場合は主たる愛着の対象からの分離に対する恐怖のこともある。不安と抑うつ気分の混合を伴うもの(309.28)。行為の障害を伴うもの(309.3)で,優勢に見られるものが他者の権利や年齢相応の社会的規範を侵す行為の場合。情緒と行為の混合した障害を伴うもの(309.4)。特定不能のもの(309.9)で,身体的愁訴,社会的引きこもり,職業上あるいは学業上の停滞などが見られるが,他の病型には当てはまらない場合。症状の持続期間が6ヵ月未満の場合は急性,6ヵ月以上の場合は慢性とよばれる。

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)などとは異なり,直接その人の生死にかかわらない程度の出来事,たとえば失恋,離婚,入学,仕事上の困難なども適応障害のストレス因子になりうる。ストレス因子は単一の出来事のこともあるし,複数の場合もある。反復することも持続することもある。ストレス因子は個人にも,家族全体や大きな集団や共同体に影響を与えることもある。ストレス因子の中には人の発達上避けられない出来事に伴うものもある(発達的ストレッサー。たとえば通学,実家を離れること,結婚,親になること,職業上の困難など)。適応障害は小児から高齢者まで,どの年齢層でも生じる可能性があり,一般身体疾患による精神疾患の患者や手術患者でも報告されている。成人では女性が男性の2倍の多さで診断されるが,小児と青年では性差がないといわれている。小児や青年の方が成人よりも適応障害が継続したり,さらに重篤な精神障害に進展したりする可能性があるとされている。有病率は2~8%といわれ,不利な生活環境にある人はストレス因子を高率に体験しているので,有病率が高まる。

 一方,他のⅠ軸障害との鑑別が難しい場合も多く,適応障害と診断されても,潜在しているほかのⅠ軸障害の前駆症状である可能性も捨てられない。また,死別反応は適応障害に含まれないが,その反応が予想されるものより強い場合や遷延する場合は適応障害の診断が当てはまるとなっており,違いは明確ではない。さらに,そのストレス因子への反応が不適応的かどうかを判断するには,その人の文化的な背景も十分考慮しなければならない。これらのことから,適応障害という診断名は,他の特定のⅠ軸障害の基準を満たさない状態を記述するための残遺カテゴリーであるとDSM-Ⅳ-TRにも明記されている。

【汎適応症候群general adaptation syndrome(GAS)】 生体が非特異的ストレッサーにさらされると,脳下垂体や副腎皮質系を中心とした生体防衛反応を引き起こすことをセリエSelye,H.は明らかにした。これを汎適応症候群とよぶ。この汎適応症候群は,警告反応期,抵抗期,疲憊期の3段階に分けられる。警告反応期は,ストレッサーにさらされた生体がダメージを受けた後,防衛反応への準備を行なう時期である。この警告反応期はショック相と反ショック相に分けられる。ショック相はストレッサーによるショックを示す時期で,副腎皮質ホルモンが減少する。血圧低下,体温低下,胃腸の潰瘍形成,無尿,アシドーシス,白血球減少後増加,一過性の過血糖後の血糖低下,副腎髄質からのアドレナリン分泌などが起こる。次の反ショック相では,下垂体前葉の刺激によって副腎皮質刺激ホルモンや副腎皮質ホルモンが分泌され,逆に抵抗力が高まる。また,ショックを生じさせたストレッサー以外のストレッサーにも抵抗が強くなる(交絡抵抗)。抵抗期では,問題となっているストレッサーに対しては抵抗力が最も強くなるが,ほかのストレッサーに対する抵抗はかえって減弱する(交絡感作)。疲憊期は,ストレッサーが強く長く続いた場合に見られる。警告反応期の諸症状(胸腺萎縮,胃腸潰瘍,生化学的変化)が再燃し,抵抗力も低下し,副腎皮質機能不全も出現する。このように,汎適応症候群は病的状態の修正という生物学的目的にかなった有益な反応だが,反応が過度になったり持続したりすると,かえって病的な状態に陥る。セリエはこの病的状態を適応疾患と名づけ,高血圧症,腎硬化症,リウマチ性疾患,糖尿病,胃潰瘍などの一部がこれにあたると考えた。 →ソーシャル・サポート →パーソナリティ障害
〔石垣 琢麿〕

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