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乳房(にゅうぼう)【にゅうぼう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

乳房(にゅうぼう)
にゅうぼう

一般に「ちぶさ」とも読む女性の外性器の一つであるが、構造上は外皮と密接な関係がある。すなわち、女性では乳腺(にゅうせん)として乳汁を分泌し、乳幼児に対する哺乳(ほにゅう)器としての役割を果たしている。乳房の形状や大きさには年齢差、個人差、人種差があるほか、乳腺の分泌期や休止期によっても異なる。乳房は乳児、子供、男性では痕跡(こんせき)的であるが、女子では10歳ころから膨らみ始め、柔らかくなる。これは、腺組織、とくに導管の増大、脂肪沈着が進むためである。成人女性の乳房は前胸壁の大胸筋の上に半球状に隆起し、底面の直径は10~12センチメートルである。形状は半球状のほか、円板状、円錐(えんすい)状などがある。乳房の広がりは、ほぼ第2肋骨(ろっこつ)から第6肋骨の範囲に位置している。左右の乳房の間のへこんだ部分を乳洞あるいは庸中(ようちゅう)とよぶ。乳房の中央部よりやや下にある円柱状の突起を乳頭(にゅうとう)(乳首(ちくび))とよぶが、乳頭の形状、大きさには個人差がある。

 乳頭には15~20個の乳管開口部がある。乳房のうち乳頭を除いた部分を乳房体とよび、内部には脂肪組織に包まれた乳腺葉(よう)が充満している。乳腺葉は乳管の数だけ存在する(男性の乳房の内部はほとんど結合組織である)。乳頭の周囲を取り巻く褐色輪状帯は乳輪(にゅうりん)(乳暈(にゅううん))とよび、この部分には多量の平滑筋線維のほか汗腺、大汗腺の一種とみられる乳輪腺(モントゴメリー腺)がある。乳輪は妊娠時にはメラニン色素の沈着が著しくなり、黒褐色となる。出産後も色素沈着は消退しないため、これによって経産婦・未経産婦の区別ができる。この乳輪の直径や色調には個人差がある。乳房の重さは、通常では150~200グラムであるが、授乳期には400~500グラムに達する。

 一般に哺乳動物では、乳房の原基(乳腺が発生する基)は複数個であり、乳線(腋窩(えきか)から恥骨上縁に引いた線)上に左右対称に存在するが、ヒトの場合には、その第4対目のものが発達して乳房となる。しかし、まれにそれ以外の原基が発育して複数対の乳房をつくる場合がある。これを副乳、あるいは多乳房症とよび、「先祖返り現象」の一種とされている。乳汁分泌期になると、これらの副乳から乳汁が分泌されることもまれではない。乳房には、とくにリンパ管の分布が密で、リンパ管網をつくるが、これから出るリンパ管はおもに腋窩に集まる。したがって、乳癌(にゅうがん)などでは、転移がすぐ腋窩リンパ節にくることとなる。女性乳房は、老人になると腺体の萎縮(いしゅく)とともに縮小し、皮膚のしわ(襞(ひだ))が多くなる。

[嶋井和世]

乳房の形状分類

乳房の形状については、乳房の軸と底面直径の関連で分類されるが、ドイツの人類学者マルチンR. Martin(1864―1925)は、次の四つの分類型を示した。(1)皿状乳房 乳房の高さが比較的低くて、基底が大きい乳房、(2)半球状乳房 高さが基底の半径に近い乳房で、ヨーロッパ人に多くみられる、(3)円錐状乳房 高さが基底の半径よりも大きい乳房、(4)山羊(やぎ)乳状乳房 乳頭が著しく下方に向いているのを特徴とする乳房。このほか、乳房は、発育の時期によって、胸乳型、蕾(らい)乳房、成熟乳房などに分けることもある。また、乳房は女性の月経周期によっても変化する。

[嶋井和世]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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