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乳腺炎【にゅうせんえん】

妊娠・子育て用語辞典

にゅうせんえん【乳腺炎】
お乳が内部にたまって起こる「うっ滞性乳腺炎」と、細菌が入り込んで炎症を起こしている場合(細性乳腺炎)があります。サインは「乳房がパンパンに張って痛い」「乳房がを持っている」「微熱」「だるい」など。ときには高熱が出る人もいます。「変だ」と感じたら産婦人科を受診して。

出典:母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(愛育病院院長)、子育て編:多田裕(東邦大学医学部名誉教授)
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デジタル大辞泉

にゅうせん‐えん【乳腺炎】
乳腺の炎症。腫(は)れ・痛み・発熱などがみられる。化膿(かのう)菌感染などが原因

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

乳腺炎
 乳腺の炎症で,原因菌黄色ブドウ球菌であることが多い.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

にゅうせんえん【乳腺炎 mastitis】
乳腺の炎症で,急性慢性に分けられる。急性炎症はおもに,授乳期または産褥(さんじよく)期に起こる細菌感染で,黄色ブドウ球菌連鎖球菌によって起こることが多い。細菌は乳頭の糜爛(びらん)や亀裂から侵入し,乳腺内に貯留している乳汁を良い培地として急速に増殖するため,短期間で膿瘍を形成する。乳房は発赤,腫張し,膿瘍部にしこりができ,激痛を伴う。重症例では発熱,悪寒,震えも生じる。治療は,早期であれば抗生物質の全身投与と局所の冷却で治癒するが,膿瘍を形成した場合には切開手術が必要で,授乳中であれば授乳を中止する。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

にゅうせんえん【乳腺炎】
乳腺の炎症。乳頭部の傷から化膿菌などがはいり、赤くはれて痛み、発熱する。また不十分な授乳が原因で起こるものもある。乳房炎。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

乳腺炎
にゅうせんえん
mastitis
乳腺の炎症で,産褥期の女性にみられ,初産婦に多い。化膿性のものは,乳汁のたまったところがブドウ球菌,レンサ球菌などの細菌に感染することによって起る。急性では,乳輪またはその付近の皮膚が発赤し,はれ,圧痛があり,熱っぽさを感じる。軽いものは冷湿布で消炎する。一般に,なるべく乳汁を出したほうがよく,化膿にいたるまでは授乳してもよいとされている。乳房のマッサージは不可で,搾乳器を利用する。抗生物質を使用したり,ホルモン剤で乳汁分泌を抑制することもある。急性症状のない慢性乳腺炎による硬結は,乳癌との鑑別がむずかしいので,注意する必要がある。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)

乳腺炎
にゅうせんえん
乳腺が赤く腫(は)れ、触れると熱感があり、じっとしていても痛む、いわゆる乳腺の炎症をいう。急性のものが多く、臨床上しばしば遭遇するのは産褥(さんじょく)性乳腺炎である。[新井正夫]

産褥性乳腺炎

大部分は授乳期、とくに産褥1か月の婦人におこる乳腺炎で、まれに授乳しない産褥婦にもみられる。臨床的には、うつ乳性乳腺炎と化膿(かのう)性あるいは蜂巣織炎(ほうそうしきえん)性乳腺炎とに区別される。いずれも産褥初期に乳房の腫れと痛みがみられる。
 うつ乳性乳腺炎は、不十分な授乳のために乳汁がうっ積しておこるものであり、搾乳することによって治癒するが、化膿性乳腺炎に移行するものもある。
 化膿性乳腺炎は、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などの化膿菌が乳頭部の表皮の損傷から乳管またはリンパ道を通って乳房中に侵入することによりおこるもので、発熱、乳房の痛み、発赤を特徴とし、ときに悪寒戦慄(おかんせんりつ)を伴う。高熱が48時間以上も続く場合には膿瘍(のうよう)の形成が疑われる。いったん症状が治まりながら再発してくるものもある。化膿性乳腺炎と診断されれば、ただちに授乳を中止する。治療としては、ペニシリンなどの抗生物質による化学療法を行い、膿瘍形成に対しては切開手術が必要となる。
 産褥性乳腺炎のほか、予後の良好な新生児乳腺炎や青年期乳腺炎、外傷性乳腺炎などもある。なお、両側の乳腺が腫れてくる場合は、生理的な内分泌性のもの(乳腺症)が多い。[新井正夫]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

にゅうせん‐えん【乳腺炎】
〘名〙 乳頭にできた小さな傷口から化膿菌が侵入して起こる乳腺の炎症。乳腺が赤くはれ、触れると熱感があり、じっとしていても痛む。出産後十数日頃に起こりやすい。乳房炎

出典:精選版 日本国語大辞典
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EBM 正しい治療がわかる本

乳腺炎
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 乳房におこる炎症をまとめて乳腺炎(にゅうせんえん)といいます。出産後1~2週間以内に、乳腺に乳汁(にゅうじゅう)がたまったままになって、乳房が赤く腫(は)れて硬くなることがあります。これは急性うっ滞性乳腺炎(たいせいにゅうせんえん)または、乳房緊満(にゅうぼうきんまん)と呼ばれ、基本的に細菌の感染が認められないものです。
 多くは痛みを伴いますが、発熱はほとんどみられず、あるとしてもそれほど高熱にはなりません。授乳を続け、乳汁がたまらないようにすれば、腫れや痛みは徐々におさまっていきます。また、細菌の感染を防ぐために乳頭(にゅうとう)や乳輪(にゅうりん)を清潔に保つことが大切ですが、授乳ごとの清拭(せいしき)は、抗菌作用や乳頭を保護する効果があるといわれている母乳や皮膚常在菌をも取り除いてしまうとされており、乳頭が割れてしまったりする原因にもなるため、最近では勧められていません。(1)
 一方、細菌感染によって乳腺に炎症がおこるのが、急性化膿性乳腺炎(きゅうせいかのうせいにゅうせんえん)です。出産後3~6週間後の授乳期によくみられます。乳房が赤く腫れ上がり、しこりができ、熱をもったり、強い痛みをもったりします。また、悪寒(おかん)やふるえとともに発熱がみられ、炎症が進むと化膿して膿瘍(のうよう)ができます。乳汁に血液や膿(うみ)が混じることもあります。この場合は、授乳をせず、乳汁をたまらないようにするために、授乳と搾乳(さくにゅう)を続け、抗菌薬によって炎症を抑えます。(2)
 授乳中の女性の2~10パーセントがうっ滞により乳腺炎をおこしますが、化膿して膿がたまるのは0.4パーセントというコホート研究による報告があります。(3)

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 出産後は、乳汁の分泌(ぶんぴつ)が盛んになりますが、乳管が十分に開いていなかったり、乳児のお乳を吸う力が弱かったりすると乳汁がたまっていき、乳腺組織を圧迫して炎症をおこすのが急性うっ滞性乳腺炎です。
 乳汁のうっ滞に加え、乳頭の亀裂(きれつ)や乳輪の小さな口などから、ブドウ球菌や連鎖(れんさ)球菌が侵入して炎症をおこすのが急性化膿性乳腺炎です。

●病気の特徴
 急性うっ滞性乳腺炎は、乳房の管理に不慣れな産後の女性に多くみられます。また、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)、舌小帯の短い新生児では、母乳をうまく飲めず、乳首を傷つけてしまうこともあり、この乳腺炎の原因となります。(1)
 喫煙、糖尿病のある女性ではおこりやすいので注意が必要です。(3)


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]授乳を続け、乳頭・乳房をマッサージし、搾乳をする
[評価]☆☆
[評価のポイント] 乳房のマッサージや搾乳などが有効であることを明確に支持する臨床研究は見あたりません。しかし、たまった乳汁が炎症の原因と考えられることから効果は期待でき、専門家の意見や経験もそのことを支持しています。授乳を続け、搾乳し、乳房に乳汁をためないことが大切です。乳汁がたまると膿がたまる(膿瘍)原因となります。 (1)(2)(4)

[治療とケア]解熱鎮痛薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 発熱や痛みがある場合は、解熱鎮痛薬の内服も必要でしょう。(5)

[治療とケア]原因菌に有効な経口抗菌薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 授乳中の乳腺炎について、抗菌薬を用いない場合に改善したのは8パーセント、抗菌薬の塗布では16~29パーセント、経口服薬では79パーセントであったと、非常に信頼性の高い臨床研究で示されています。なお、原因菌としては黄色(おうしょく)ブドウ球菌である可能性がもっとも高いとされています。(6)(7)

[治療とケア]針穿刺(せんし)または切開ドレナージを行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 皮膚のなかに膿がたまってしまった場合(膿瘍形成)、局所麻酔下に針穿刺または切開ドレナージを行うことがあります。(4)


よく使われている薬をEBMでチェック

鎮痛薬
[薬名]アセトアミノフェン(アセトアミノフェン)(5)
[評価]☆☆
[薬名]ブルフェン(イブプロフェン)(5)
[評価]☆☆
[薬名]ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)(5)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 解熱鎮痛薬を服用することは、発熱や痛みを抑えるために有効です。

抗菌薬
[薬名]ケフレックス(セファレキシン)(6)(7)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ダラシン(クリンダマイシン塩酸塩)(6)(7)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 原因菌としては黄色ブドウ球菌による可能性がもっとも高いとされているため、セファレキシンなどのセフェム系薬剤が有効であると考えられています。βラクタム系(セフェム系やペニシリン系などが含まれる)の抗菌薬にアレルギーがある場合は、クリンダマイシン塩酸塩などが用いられます。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
たまっている乳汁を出す
 乳房が腫れて痛んだり、熱をもったりする乳腺の炎症は、産後、授乳期の女性にしばしばみられる病気です。
 炎症の原因が細菌性のものでなく、乳腺に乳汁がたまったためにおきる場合をうっ滞性乳腺炎(乳房緊満)といいます。
 薬を使うほどの症状でないときには、まずお乳は規則的に与え、なるべく乳児に吸わせるようにして、ためないようにします。ただし、どうしても乳児のお乳を吸う力が弱かったり、乳管が十分に開いていなかったりして、たまってしまうときには乳頭・乳房を軽くマッサージし、搾乳によってたまった乳汁を出して、うっ滞を解消するようにします。乳房に腫れや熱を感じるときには、冷やすのもよいでしょう。いずれも炎症を抑える方向に作用する処置と考えられ、理にかなっています。

解熱鎮痛薬を内服する
 乳腺の炎症によって発熱や、痛みがある場合は、解熱鎮痛薬の内服も必要でしょう。

細菌感染が疑われたら早期に治療を開始する
 乳腺におきる炎症は乳汁のうっ滞によるものだけではなく、細菌感染による化膿性乳腺炎もあり、うっ滞性乳腺炎から移行する場合もあります。
 授乳中の女性で、乳頭に痛みと上皮のひび割れをきたした場合、黄色ブドウ球菌の感染である可能性がもっとも高いと考えられます。早期に経口の抗菌薬で治療を開始しないと、化膿性乳腺炎を発症する可能性が高いことが非常に信頼できる臨床研究によって示されています。
 乳房の腫れや痛みがひどく、赤味をおびている場合や、発熱を伴う場合には、うっ滞性乳腺炎に細菌感染をきたしたものと判断し、抗菌薬での治療が必要になります。

(1)Spencer JP. Management of mastitis in breastfeeding women. Am Fam Physician. 2008;78:727-731.
(2)WHO:Department of Child and Adolescent Health and Development. Mastitis cause and management. Publication Number WHO/FCH/CAH/00.13. Geneva. WHO, p25. http:// whqlibdoc.who.int/hq/2000/WHO_FCH_CAH_00.13.pdf
(3)Dixon JM, Khan LR. Treatment of breast infection. BMJ. 2011;342:d396.
(4)Dixon JM. Breast abscess. Br J Hosp Med. 2007;68:315-320.
(5)Mangesi L, et al. Treatments for breast engorgement during lactation. Cochrane Database Syst Rev. 2010; CD006946 PMID: 20824853.
(6)Jahanfar S, Ng CJ, Teng CL. Antibiotics for mastitis in breastfeeding women. Cochrane Database Syst Rev. 2009;21:CD005458.
(7)Livingstone V, Stringer LJ. The treatment of Staphyloccocus aureus infected sore nipples: a randomized comparative study. J Hum Lact. 1999;15:241-246.

出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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