@niftyトップ

辞書、事典、用語解説などを検索できる無料サービスです。

井上光晴【いのうえみつはる】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

井上光晴
いのうえみつはる
[生]1926.5.15. 満州,旅順
[没]1992.5.30. 東京,調布
小説家。幼くして父母と生別し,貧困な少年時代を過した。 15歳で長崎県崎戸炭鉱で炭鉱員の生活を体験し,のちの文学の素材を得た。その後,独学で専検に合格し,電技術養成所などに学んだが,第2次世界大戦後日本共産党に入党し,詩作を始めた。小説の処女作書かれざる一章』 (1950) は共産党の内部批判として注目を集め,作家としての地位を定めた。未解放領域,朝鮮人原爆被爆者などを対象に,差別や搾取の実態を通じて日本の底辺をえぐった『死者の時』 (60) ,『地の群れ』 (63) などの力作を相次いで発表,『残虐な抱擁』 (68) など廃坑地帯を舞台にした作品も多い。ほかに,スターリン主義を批判した『黒い森林』 (66) ,退廃した日常生活を描いて戦後性の本質を問う『心優しき反逆者たち』上下 (73) などの作がある。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

いのうえ‐みつはる〔ゐのうへ‐〕【井上光晴】
[1926~1992]小説家詩人。中国、旅順の生まれ。荒野(あれの)の父。被差別部落在日朝鮮人、炭鉱の労働者などをテーマにした作品を多数発表。また、文学伝習所を開講して後進の育成にも尽力した。小説「虚構のクレーン」「地の群れ」「心優しき叛逆者たち」など。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル版 日本人名大辞典+Plus

井上光晴 いのうえ-みつはる
1926-1992 昭和後期-平成時代の小説家。
大正15年5月15日中国旅順生まれ。長崎県の炭鉱ではたらく。戦後,共産党にはいり「書かれざる一章」を発表するが,反党的と批判され離党。昭和45年季刊誌「辺境」を個人編集。社会の底辺にある差別,矛盾を追及しつづけた。平成4年5月30日死去。66歳。著作に「地の群れ」「ガダルカナル戦詩集」など。
【格言など】敵にする者を仕立てんと生きて行けんとよ(「胸の木槌にしたがえ」)

出典:講談社
(C)Kodansha 2015.
書籍版「講談社 日本人名大辞典」をベースに、項目の追加・修正を加えたデジタルコンテンツです。この内容は2015年9月に更新作業を行った時点での情報です。時間の経過に伴い内容が異なっている場合がございます。

世界大百科事典 第2版

いのうえみつはる【井上光晴】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

いのうえみつはる【井上光晴】
1926~1992) 小説家。旧満州旅順生まれ。日本共産党を批判した「書かれざる一章」以降、戦後社会の矛盾を批判的に描く。「虚構のクレーン」「地の群れ」「心優しき反逆者たち」など。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

井上光晴
いのうえみつはる
(1926―1992)
小説家。旅順(現、中国大連(だいれん)市)に生まれる。少年時代から尼崎(あまがさき)共和製鋼所や長崎県の炭鉱などで少年工として働きながら旧制中学卒業資格検定試験に合格。陸軍の電波兵器技術養成所卒業。第二次世界大戦中は軍国少年であったが、戦後は天皇制否定の論理への関心から19歳で日本共産党に入党。長崎地区、九州地方委員会などの常任として活躍。それらを素材にして党の官僚制のもとでの下部党員の苦しみを描いた『書かれざる一章』(1950)や『病める部分』(1951)を『新日本文学』に発表する。それらは文壇的には好評をもって迎えられたが、共産党内から激しく批判され、党から除名される一因となった。悪質な反党分子として当時のいわゆる所感派といわれた党主流派から糾弾された。だがスターリン主義批判の先駆者として若い世代を中心に熱狂的支持を受け、その間に『双頭の鷲(わし)』(1952)や太平洋戦争前夜の九州の海底炭鉱で働く朝鮮人炭鉱夫の悲惨な運命を描いた『長靴島』(1953)や長編小説『虚構のクレーン』(1960)などの力作を次々に発表する。それらに共通するのは社会の底辺で生きる人々への共感と彼らを虐げているものへの怒りであった。それらのテーマを集約した作品としては被差別部落問題、在日朝鮮人問題、被爆者差別の問題を正面から扱った『地の群れ』(1963) や朝鮮戦争を扱った『他国の死』(1965)、『赤い手(てまり)』(1966)の廃鉱の痛烈な現実風景などがある。その他にスターリン主義下のモスクワを背景にソビエト内部の矛盾点を描いた国際小説『黒い森林』(1967)、あるいは唯一の時代小説『丸山蘭水楼の遊女たち』(1976)や現代の東京の若者群像を扱った『心優しき叛逆者(はんぎゃくしゃ)たち』(1973)、さらには殺人の冤罪(えんざい)で7年間も拘置所につながれた男の孤独な内面を描いた長編小説『憑(つ)かれた人』(1981)なども重量感のある力作。詩集としては『井上光晴詩集』(1976)、『十八歳の詩集』(1998)などがある。
 その後の作品に、原子力発電所をテーマにした『西海原子力発電所』(1986)、『輸送』(1989)がある。そのほかに、長編『地下水道』(1987)、作品集『サラダキャンプ、北へ』(1987)、『虫』(1988)などがあり、さらに1988年(昭和63)には『暗い人』第1部が刊行された(第2部は1989年、第3部は亡くなる半年ほど前の1991年刊行)。没後の1992年(平成4)にも、長編『自由をわれらに』や『詩集 長い溝』が刊行されている。これらの創作活動と並行して全国各地に文学伝習所を開設し、没するまで長年後輩の育成に努めたことも特記に値しよう。[松本鶴雄]
『『井上光晴作品集』全3巻(1965・勁草書房) ▽『井上光晴新作品集』全5巻(1974~1980・勁草書房) ▽『井上光晴第三作品集』全5巻(1974~1980・勁草書房) ▽『井上光晴詩集』(1976・思潮社) ▽『井上光晴長編小説全集』全15巻(1983~1984・福武書店) ▽『西海原子力発電所』(1986・文芸春秋) ▽『地下水道』(1987・岩波書店) ▽『サラダキャンプ、北へ』(1987・筑摩書房) ▽『虫』(1988・潮出版社) ▽『暗い人』第1~3部(1988、1989、1991・河出書房新社) ▽『輸送』(1989・文芸春秋) ▽『自由をわれらに』(1992・講談社) ▽『詩集 長い溝』(1992・影書房) ▽『十八歳の詩集(書誌・年譜付き)』(1998・集英社) ▽『書かれざる一章』『荒廃の夏』『死者の時』『明日 一九四五年八月八日・長崎』(集英社文庫) ▽『丸山蘭水楼の遊女たち』『地の群』(新潮文庫) ▽『残酷な抱擁』(講談社文庫) ▽『胸の木槌にしたがえ』(中公文庫) ▽『新編・ガダルカナル戦詩集』(朝日文庫) ▽『眼の皮膚』(講談社文芸文庫) ▽高野斗志美著『井上光晴論』(1972・勁草書房) ▽影書房編集部編『狼煙(のろし)はいまだあがらず――井上光晴追悼文集』(1994・影書房) ▽原一男著『全身小説家――もうひとつの井上光晴像』(1994・キネマ旬報社) ▽山川暁著『生き尽くす人――全身小説家・井上光晴のガン一〇〇〇日』(1997・新潮社) ▽井上光晴著、松本健一編・解説『人間図書館 井上光晴』(1998・日本図書センター) ▽片山泰佑著『「超」小説作法――井上光晴文学伝習所講義』(2001・影書房)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

いのうえ‐みつはる【井上光晴】
小説家、詩人。中国旅順生まれ。日本共産党九州地方常任委員として活動したが、処女小説「書かれざる一章」が反党的作品と批判された。作品「ガダルカナル戦詩集」「地の群れ」「虚構のクレーン」など。大正一五~平成四年(一九二六‐九二

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

井上光晴」の用語解説はコトバンクが提供しています。

井上光晴の関連情報

関連キーワード

五所平之助島津保次郎清水宏溝口健二斎藤寅次郎衣笠貞之助田坂具隆プドフキン山本嘉次郎バルトーク

他サービスで検索

「井上光晴」のスポンサー検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE GROUP, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.

アット・ニフティトップページへ アット・ニフティ会員に登録

ウェブサイトの利用について | 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation