●人情本【にんじょうぼん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
人情本
にんじょうぼん
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デジタル大辞泉
にんじょう‐ぼん〔ニンジヤウ‐〕【人情本】
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世界大百科事典 第2版
にんじょうぼん【人情本】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
人情本
にんじょうぼん
江戸後期の小説の一ジャンル。洒落本(しゃれぼん)の後を受け、洒落本と違っておもに婦女子を読者とし、文政(ぶんせい)初年(1818)から明治初年(1868)にかけて江戸で流行した、写実的な恋愛小説の名称である。市井の青年男女を主人公に、多くは1人の男性に配するに2人ないし3人の女性をもってし、三角関係、またそれ以上にわたる情痴的恋愛の種々相を描くものである。背景となる江戸市井の風俗の的確な描写に加えて、会話と地の文を対等に扱う近代的な表現様式も樹立し、明治の風俗小説、硯友(けんゆう)社の文学を生む役割をも果たしている。ただ、以上のように定義づけられるのは、天保(てんぽう)(1830~44)に入って為永春水(ためながしゅんすい)が人情本をリードするようになってからの作品で、それ以前の文政期の人情本は、音曲、演劇、講釈などに取材した未熟な伝奇小説であった。人情本の名称も、春水が『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』四編序で彼自身の作品を人情本(もの)と称してから一般化したもので、普通にはその書型から滑稽(こっけい)本とともに中本(ちゅうほん)とよばれ、本屋仲間の公的な称呼としては中型絵入読本(ちゅうがたえいりよみほん)、さらにその内容から初期においては泣本(なきほん)とも称されていた。
人情本は洒落本からテーマや表現技術を多く受け継ぎながら、なお書肆(しょし)の要求で婦女子を読者と予想することでそれにふさわしい題材や表現を加え、洒落本と違って遊里から離れ、中型絵入読本の名称が示すように、通俗的な世話読本として執筆されたところに成立する。一般にそれは、無名作者の草稿を十返舎一九(じっぺんしゃいっく)が校合して出版した『清談峯初花(せいだんみねのはつはな)』(1819)を最初とするが、2世南仙笑楚満人(なんせんしょうそまひと)(為永春水)や鼻山人(はなさんじん)らの作品によってしだいに現実主義的な傾向を強め、曲山人(きょくさんじん)の『仮名文章娘節用(かなまじりむすめせつよう)』(1831)を経て『春色梅児誉美』(1832~33)以下の春水の作品で、他の江戸小説に対して完全に独自性を主張する位置を確保した。鼻山人や松亭金水(しょうていきんすい)らも活躍するが、天保の改革の風俗取締りによって弾圧され、幕末になって復活するものの、そのまま維新開化の波にのみ込まれ、「続きもの」とよばれる明治の小新聞(こしんぶん)の風俗読み物へと解消していった。
[神保五彌]
『『人情本について』(『山口剛著作集4』所収・1972・中央公論社)』
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精選版 日本国語大辞典
にんじょう‐ぼん ニンジャウ‥【人情本】
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旺文社日本史事典 三訂版
人情本
にんじょうぼん
別名中本 (ちゆうほん) 。19世紀初期から明治初期まで続いた。風俗小説の洒落本から派生し,主として男女の情愛を写実的に描写した。代表作に為永春水の『春色梅児誉美 (しゆんしよくうめごよみ) 』など。天保の改革で風俗を乱すと処罰の対象とされた。
出典:旺文社日本史事典 三訂版
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