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人種主義【じんしゅしゅぎ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

人種主義
じんしゅしゅぎ
racism
ヒトは「人種」という別個の独立した生物学的存在形態に分類されるという考えから生まれた,ある人種は別の人種より本質的に優れているという思想。遺伝による身体的特徴と,性格や知性,その他文化的行動の間に関係があると考える。北アメリカの奴隷制度や,西ヨーロッパ諸国による植民地化の中核をなした。人種という概念は,ヨーロッパ系アメリカ人と,アメリカ南部に奴隷として連れて来られた人々を先祖にもつアフリカ系アメリカ人との差異を誇張するためにつくり出された。奴隷制度の擁護者は,アフリカ人とその子孫を劣等な人間と位置づけることによって,この搾取システムの正当化と維持をはかった。19世紀には人種主義はほぼ確立し,世界中に広がった。その実践方法は多様で,北アメリカやアパルトヘイト下の南アフリカ共和国では,異なる人種の合法的な分離(隔離)を特徴とした。法律によって,水飲み場やトイレなどの公共設備,学校や教会,病院などの公共機関はすべて白人用と非白人用に分けられた。南アフリカでは居住地も人種別に分離され,結婚をはじめ,異人種間の社会的接触はほとんど禁止された。
人種主義を主張する者は,優位な人種だけが,さまざまな特権や政治権力,経済的資源,教育の機会,および制限のない市民権をもてると考える。これは劣等な人種とされた者にとって,日常的に侮辱的で無礼な言動にさらされることになり,社会関係に重大な影響を及ぼしてきた。アパルトヘイト廃止後の南アフリカに根強く残る人種間の壁,アメリカ合衆国などにおける社会的不平等や社会不安,イギリスでかつての植民地からの移民に向けられる嫌悪感などは,人種や民族集団間の対立がもたらした,ほんの数例にすぎない。
人種主義は,身体的(したがって変えることのできない)差異と考えられるものに結びついている点で,エスノセントリズム(自民族中心主義)とは異なる。エスニック・アイデンティティは後天的なものであり,民族的属性は習得された行動形態である。これに対し,人種は生得的で不変なものと認識される。20世紀後半,世界で起こった紛争の多くは,民族間の敵意に起因していたにもかかわらず,人種的な観点から解釈された。(→ゴビノーチェンバレンブーランビリエモートン

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

じんしゅ‐しゅぎ【人種主義】
人種間には本質的な優劣の差異があるとする見解に基づく態度政策。19世紀末のヨーロッパで広まり、優秀民族支配論・有色民族劣等論などを生み出した。レイシズムラシスム

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

じんしゅしゅぎ【人種主義】

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

人種主義
じんしゅしゅぎ
racism

発生的にせよ環境の作用であるにせよ、諸人種の間には優劣の差があり、優秀な人種が劣等な人種を支配するのは当然である、という思想ないしイデオロギー。人種の優劣説にはまったく科学的根拠がないにもかかわらず、最盛期の19世紀ほどではないにしても、人種主義はいまなお根強く信奉されている。人種主義は、同一人種から構成される一部の部族社会に身体上の特徴(身長や皮膚の色)に基づいて現れたり、また一部の社会にそれぞれ独立して局地的に現れる場合もあるが、人種主義を世界規模に拡大し定着させたのは植民地主義である。その意味で人種主義は、人類史を通じて全地球上に現れる普遍的な思想ではない。これに対して、エスノセントリズムethnocentrism(自己集団中心主義。人種・民族を含めてあらゆる異質集団に対して、自分の属する集団を中心に据え、これを尺度として評価を下す態度ないし思想)、および、ある集団または個人が身体的ないし文化的特徴の著しく違う者に違和感・距離感を抱くのは自然の現象であり、普遍的である。もともと人種という概念が科学的に明らかにされ、人間の類別を意味するようになったのは19世紀であり、こうして西ヨーロッパに発達した人種思想と結び付いて、人種主義は政治・経済上の諸条件に基づいて歴史的に形成されたのである。科学的人種主義という皮肉な呼称もこうした歴史的事情から生まれた。

 こうして形成された人種主義はやがて、思想ないしイデオロギーのレベルを超えて、現実の慣行や態度をも含めて、人種差別、ないし人種上の不利益を生む諸要因を包摂した複合体をもさすようになった。もともと人種主義が生まれるのは、ある社会に異なる複数の人種、または同一人種内の集団差が存在し、その身体的特徴の集団差が不平等な社会的地位や文化の相違と結び付く場合である。歴史的には、軍事的征服、植民地や支配地域の拡大、および強制を伴う移民や奴隷に付随して、白人の有色人に対する人種主義として現れる場合が多いが、しばしば黄色人の黒人に対する人種主義も現れる。このことは、人種主義を大規模に展開したのが主として植民地主義ないし帝国主義であることを物語っている。これを推進した思想家は、フランス人のゴビノーとイギリス人のチェンバレンHouston Stewart Chamberlain(1855―1927)である。ヒトラー、T・ルーズベルト、南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策の生みの親であるフルウールトらは、大衆操作のイデオロギーとして人種主義を利用した典型的な政治家である。

 イギリスの詩人キップリングに代表されるように文学の世界はもちろん、一般的な世論においても、人種主義は、大衆の心に深く浸透し、世界の全域に行き渡っている。日本におけるアイヌ系、朝鮮人・韓国人、アジア系、および黒人についても、日本人の人種主義は深く作用している。最近、とくに第三世界では、有色人は白人よりも優秀だとする対抗人種主義counter racismが台頭している。こうした現状から推して、人種主義を克服するには多くの困難が横たわっている。

[鈴木二郎]

『鈴木二郎著『人種と偏見』(1969・紀伊國屋書店)』『L・ブルーム著、今野敏彦訳『人種差別の神話』(1974・新泉社)』『R・シーガル著、山口一信・榛名善樹訳『人種戦争』上下(1971・サイマル出版会)』『C・レヴィ・ストロース著、荒川幾男訳『人種と歴史』(1970・みすず書房)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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