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体外受精【たいがいじゅせい】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

体外受精
たいがいじゅせい
in vitro fertilization
卵巣または輸卵管から取り出した未受精卵精子と混和して受精させること。この受精を培養して桑実胚ないし胚盤胞まで発育させ,これを元の女性または別の女性の子宮に移植する。ウサギラットマウスなどの小動物のほか,ヤギ,ヒツジブタウシなどの家畜の育種の手段として長らく用いられてきた。ヒトについては,女性側の原因による不妊症などの対策として実施されており,1978年にイギリスで最初の体外受精児が生まれた。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

たいがい‐じゅせい〔タイグワイ‐〕【体外受精】
母体外で受精が行われること。魚類など水生動物に多い。⇔体内受精
卵巣から成熟した卵子を取り出して試験管の中で精子と受精させ、子宮内へ移して着床させる方法。不妊症の際などに行われる。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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世界大百科事典 第2版

たいがいじゅせい【体外受精 external fertilization】
体外受精とは,一般には精子と卵子合体,すなわち受精がその動物の体外,ふつうにはその動物のすむ水中で行われることをさす。しかし哺乳類など(たとえばヒト)で体外受精という場合には,これらの動物で自然に行われている体内受精internal fertilization,すなわち,雌雄交尾(男女の性交)によって(女性)の体内で行われる体内受精を人為的に生体外の場で行わせること,およびそのような受精を行わせる操作一般をさす。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

体外受精
たいがいじゅせい

生物学上の体外受精

動物における受精の一様式。体内受精の対語。生物学上は、卵と精子の融合(受精)が、その動物がすむ、すなわち体外にある水中で行われることをいう。受精のためには卵と精子が同じ液体の媒質中に置かれること(媒精、授精または助精という)が必要であるが、ウニ、ナマコ、ゴカイなどの無脊椎(むせきつい)動物、大多数の硬骨魚類、無尾両生類では卵や精子を水中に放ち(放卵、放精)、そこで受精がおこる。水中に出された精子は数時間は受精能力を失わないが、魚やカエルの卵はすぐその能力を失うので、雄は産卵と同時にその上に精子を放出する。

[内堀雅行]

ヒトの場合の体外受精・胚移植

体外受精・胚(はい)移植(in vitro fertilization-embryo transfer:IVF-ET)とは、体外に取り出した卵子の入った培養液に調整した精子を注入(媒精)し受精させる操作であり、分割胚を腟(ちつ)を通して子宮腔(くう)内に移植することである。卵管内での受精が不可能な不妊症に対する治療法である。

 1978年に世界初のヒト体外受精(IVF-ET)での妊娠・出産成功例が報告され、その後1983年に胚の凍結・融解での成功例が、さらに1992年に卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:ICSI、顕微授精の一種)での成功例が報告された。これらの医療技術は、生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)と総称される。ARTの進歩に伴い、凍結による余剰胚の保存が可能となり、治療の安全性や汎用(はんよう)性が向上し、また重症の男性因子や受精障害のカップルへの治療が可能になった結果、治療対象の患者が増加してきている。その背景には、女性の社会進出やライフスタイルの変化がもたらす晩婚化、および初産年齢の上昇がある。

[吉村泰典 2015年4月17日]

適応

〔1〕IVF-ET
卵管性不妊、男性不妊、免疫性不妊、原因不明不妊に加え、子宮内膜症など本法以外の治療によって妊娠の可能性がきわめて低いと判断される病態が適応となる。

 両側卵管閉塞(へいそく)の場合にはIVF-ETが絶対適応となる。また片側の卵管閉塞の場合でも、子宮内膜症や骨盤腹膜炎後など高度の癒着や変形が疑われる場合には相対的な適応となる。夫に対するホルモン療法、精索静脈瘤(りゅう)手術、配偶者間人工授精が無効な男性不妊症もIVF-ETの適応となる。一連の不妊検査で明らかな異常が認められない原因不明不妊に対して、まずはタイミング指導や人工授精が行われ、その後IVF-ETに移行することが多い。また43歳以上の女性におけるIVF-ETの妊娠率は、より若年の女性と比較して大きく低下することから、高齢女性に対しては早めのIVF-ETが提案される。

〔2〕ICSI
受精障害、通常のIVF-ETで受精が困難と思われる重症の乏精子症、精子無力症、抗癌(がん)剤治療後や無精子症などがICSIの対応となる。精子数に関しては、運動精子200万/mL以下はICSIの積極的な適応となる。精液所見正常の患者でのICSIは、通常の体外受精と受精率、妊娠率に差はないとされるが、精液所見が悪い患者ではICSIのほうが受精率が高い。その他、運動精子数に限りがある場合などでも、積極的にICSIを考慮する。

 現在では精液中に精子がなくても精巣内にごく少量の精子があれば、ICSIを用いて妊娠が可能である。精巣組織を採取して、精子を回収する精巣内精子回収法(testicular sperm extraction:TESE)が行われる。しかしこの方法では、精子回収率が低く、また採取する精巣組織が大きく、精巣に障害を与えるため、顕微鏡を用いた精巣内精子回収法(microdissection testicular sperm extraction:MD-TESE)が開発されている。

[吉村泰典 2015年4月17日]

卵巣刺激法

体外受精では通常、複数の卵胞発育と、排卵を起こす内因性のLHサージ(脳の下垂体から、排卵時に黄体形成ホルモンluteinizing hormone(LH)が大量に放出される現象)抑制を目的とした調節卵巣刺激が行われる。複数の卵胞発育には、排卵誘発剤であるゴナドトロピン製剤、クロミフェンあるいは両者の併用が用いられ、LHサージの抑制には、gonadotropin releasing hormone(GnRH)アゴニスト(点鼻薬)またはGnRHアンタゴニスト(注射剤)が用いられる。両者とも、排卵誘発剤で育てた卵子が、採卵の前に自然排卵するのを防ぐ薬である。2010年以降では自然周期に近い低刺激法が用いられることが多くなっている。

〔1〕GnRHアゴニスト法
GnRHアゴニストにより、内因性ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)を抑えてしまうので、連日ゴナドトロピン製剤の注射が必要である。GnRHアゴニスト投与を卵胞期初期より始めるショート法と、前周期の黄体期中期より始めるロング法がある。卵巣の低反応が予想される高齢女性にはショート法が、若い女性にはロング法が推奨される。どちらの方法も卵巣過剰刺激症候群(卵巣が腫大(しゅだい)したり、腹水が貯留したりする症状)のリスクは他の刺激法より高いので、症例選択に注意が必要である。

〔2〕GnRHアンタゴニスト法
ゴナドトロピン製剤で卵巣を刺激し、卵胞が14ミリメートル程度になった卵胞期の中期にGnRHアンタゴニストを開始し、LHサージを抑制する。アンタゴニスト開始後にエストロゲン(女性ホルモン)が低下することがあるので、ゴナドトロピン投与量は適宣増量する。

〔3〕低刺激法
通常の卵巣刺激で反応しない場合または卵巣機能が低下している場合は、低刺激法を選択する。クロミフェン単独、あるいはクロミフェン投与しながらゴナドトロピン注射を追加する。卵胞が18ミリメートル以上に達した時点で排卵を誘起する。高齢者に対する卵巣刺激法として広く利用されている。

[吉村泰典 2015年4月17日]

採卵と精子調整法

静脈麻酔下、経腟超音波診断装置で採卵する。以前は腹腟鏡下で採卵が行われていたが、1980年代後半より経腟採卵がほとんどである。少ない穿刺(せんし)回数で効率的に卵胞液を吸引し、卵胞液中に含まれている卵子を採取する。卵巣を何回も穿刺すると出血のリスクが増加し、穿刺針を卵巣内で大きく動かすと裂傷を生ずることがある。採卵による合併症として穿刺による卵巣出血、腟壁からの出血、腸管や膀胱(ぼうこう)骨盤内臓器の損傷、感染、膿瘍(のうよう)などがある。

 精子の調整法として現在用いられているのは、スイムアップswim-up法、パーコールpercoll密度勾配(こうばい)法、および両方をあわせた方法である。精子調整の前後には全精子濃度、運動精子濃度などの基本的な精子評価を行う。スイムアップ法は、精液、または洗浄精子に培養液を重層し、30~60分間培養液の中で静置する。運動性良好な精子が培養液中にスイムアップして(泳ぎ上がって)くるため、これを回収、洗浄し、媒精に供する。パーコール密度勾配法は、密度勾配担体であるパーコール(コロイド状シリカをポリビニールピロリドンでコーティングした粒子)を用い、密度の高い成熟した精子を分離する方法である。またパーコール密度勾配法で成熟精子を回収し、さらにその精子をスイムアップさせ、運動性良好な精子を選別し、媒精に供する方法もある。

[吉村泰典 2015年4月17日]

媒精と胚培養

媒精のときの精子濃度は、培養液中の精子濃度が10万~40万/mLになるように調整する。精子濃度が低いと受精しない可能性があり、高いと培養環境の悪化につながり、多精子受精の率も高くなる。一般に37℃、5%O2、5~6%CO2下のインキュベーターで培養する。通常、媒精後受精確認まで17~20時間、精子と卵子をいっしょに媒精用培養液で培養し、雌雄前核の有無や第2極体放出の有無により受精の確認を行う。

 以前は媒精後48~72時間、4~8細胞の初期胚までの胚培養が多かったが、ヒト胚の体外培養技術の進歩により、長期培養が可能となってきている。現在では良好な胚を評価するために、着床前の胚盤胞まで5~6日間培養することが多くなっている。

[吉村泰典 2015年4月17日]

胚移植と黄体補充

胚移植には、採卵の2~5日後に行う新鮮胚移植と、凍結しておいた胚を融解して移植する凍結融解胚移植がある。胚移植あたりの妊娠率は凍結融解胚移植のほうが高く、移植しなかった形態良好な全部の胚を凍結保存する。新鮮胚移植をし妊娠した場合、卵巣過剰刺激症候群を起こすことがある。このため2000年以降は、新鮮胚移植を行わず、全胚凍結保存後、1個の凍結融解胚を移植するケースが増えてきている。

 凍結胚を融解し子宮内膜に移植するときには、移植時に胚のステージと子宮内膜を同期させる必要がある。移植周期には、自然周期とエストロゲン剤とプロゲステロン剤を用いて子宮内膜を調整するホルモン周期とがある。自然周期で移植する場合には、卵胞径と血中あるいは尿中のLH測定により、排卵日を確認し、4細胞期胚なら排卵2日後、8細胞期胚なら排卵3日後、胚盤胞なら排卵5日後に移植を行う。

 ARTにおける卵巣刺激周期においては、黄体機能不全が起こりやすく、胚移植後に黄体機能賦活法あるいは黄体ホルモン補充療法が用いられている。黄体機能賦活法として、ヒト絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotiopin:HCG)が用いられる。採卵2日後にHCG5000単位を注射する。黄体ホルモン補充法としては、プロゲステロン剤の筋肉注射、腟座剤、内服薬を使用する。

[吉村泰典 2015年4月17日]

治療成績

2012年(平成24)現在、日本で1年間に生殖補助医療(ART)で生まれた3万7953人のうち、2万7715人が凍結胚を用いた治療で誕生している。凍結胚で生まれた子どもが3分の2以上を占めている。日本の総出生児数に占める割合は1999年より1%を超え、いまや欧米並みの3.66%と27人に1人の時代になってきている。これまでに全世界で500万人以上、日本では約34万人が、ARTにて誕生している。

[吉村泰典 2015年4月17日]

 人工受精(人工授精・体外受精)の法律問題については「人工受精」の項目を参照。

[編集部]

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精選版 日本国語大辞典

たいがい‐じゅせい タイグヮイ‥【体外受精】
〘名〙
① 動物の雌雄がそれぞれ水中に卵・精子を放出し、体外で受精を行なうこと。水生動物にみられる。⇔体内受精
② 卵巣から成熟した卵子を取り出して、試験管の中で受精させ、子宮内へ移して着床させること。

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