@niftyトップ

辞書、事典、用語解説などを検索できる無料サービスです。

偶然性の音楽【ぐうぜんせいのおんがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

偶然性の音楽
ぐうぜんせいのおんがく
random composition
J.ケージの 1950年頃以降の独特な音楽思想に基づいて発想された作曲法。作曲様式,曲種,曲態,演奏形態などの総称。五線紙上に音符で音高,時価を確定する従来の作曲法に比べ,音の選択,組合せの選択,形式の構成などについて,演奏のたびごとに自由な選択を許すもので,不確定性の音楽,偶然音楽とも呼ばれる。アメリカにおけるケージの一派は M.フェルドマン,C.ウォルフ,E.ブラウンら。ヨーロッパでもこの思想は K.シュトックハウゼンとその派によって取入れられている。今日では,器楽の奏者や歌い手に一定の範囲で自由に演奏させるなど,前衛音楽のなかに広く浸透している。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

ぐうぜんせいのおんがく【偶然性の音楽 chance operation】
作曲や演奏に偶然性を取り入れた音楽。ドイツ語ではアレアトーリクAleatorik。音楽に一種の偶然性を利用することは,民族音楽における即興演奏や西洋古典派音楽のカデンツァに見られるように,東西を問わずに古くから存在していた。アメリカの作曲家ケージは,1951年,中国の易の方法を用いてピアノ曲《変化の音楽Music of Changes》(《易の音楽》)を作曲し,以後,欧米の現代音楽の分野で偶然性を利用する音楽活動が活発に行われるようになった。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

偶然性の音楽
ぐうぜんせいのおんがく
aleatory music 英語
music of chance operation 英語
musique al00075Fatoire フランス語
Aleatorik ドイツ語
alea イタリア語

作曲と演奏のどちらか、または両方において不確定な部分を残したままにされた音楽。つまり偶然性が入り込んでいる音楽の総称。作曲における偶然性には二種類あり、一つは「完全な偶然性」、もう一つは「管理された偶然性」とよばれる。完全な偶然性とは、たとえばコイン投げなどによって、まったく無作為に音高、音価、強さなどを決めていく作曲法で、1950年代にアメリカのジョン・ケージが導入して衝撃を与えた。具体的な例としては、ケージの『易の音楽』『ピアノのための音楽』などがある。彼はこのような作曲法を、中国の易学の影響から、チャンス・オペレーションとよんだ。ただし、これは従来の意味での「作曲」や「創作」ではない。なぜなら、作曲者が自己の内面を表現するために必然的かつ論理的に音を構築していくのが作曲であり、そのようにして結晶したものが「作品」とみなされたのに対し、完全な偶然性ではいっさいの作為が否定され、論理性も拒絶されているからである。これは伝統的な芸術概念を根底から否定するものであり、西洋の音楽美学は存立の危機を迎えることになった。

 一方、ヨーロッパ大陸の作曲家たちは、もっぱら管理された偶然性(狭義のaleatory)によっている。管理された偶然性では、作曲家が部分部分を従来の意味で「作曲」しておくが、各部分の演奏順は演奏者の選択に任される。したがって、音の構成は確定されてはいるものの、作品の形式は、演奏されるたびに可変的に現れることになる。つまり、管理された偶然性では作曲行為そのものは否定されておらず、むしろ演奏家に自由で創造的な余地を残すものといえよう。こうした作品例には、古くは18世紀のモーツァルトらの「さいころ音楽」などもあったが、20世紀の偶然性の音楽では、ブーレーズの『ピアノ・ソナタ』第3番や2台のピアノのための『ストリュクチュールⅡ』、シュトックハウゼンの『ピアノ曲Ⅺ』などがある。なお、偶然性の作法は記譜法にも影響をあたえた。すなわち従来の五線楽譜ではなく、作曲家ごとにまったく異なるさまざまな記号や形を用いた「図形楽譜」が生みだされることになった。

[野本由紀夫]

『近藤譲編訳『音楽の零度――ジョン・ケージの世界』(1980・朝日出版社)』『W・ギーゼラー著、佐野光司訳『20世紀の作曲――現代音楽の理論的展望』(1988・音楽之友社)』『庄野進著『聴取の詩学――J・ケージから、そしてJ・ケージへ』(1991・勁草書房)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

偶然性の音楽」の用語解説はコトバンクが提供しています。

偶然性の音楽の関連情報

関連キーワード

新藤兼人斎藤寅次郎ロック(ポピュラー音楽)アフリカン・アメリカン音楽マキノ雅広電気機械器具工業成瀬巳喜男黒澤明大庭秀雄森一生

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.

アット・ニフティトップページへ アット・ニフティ会員に登録

ウェブサイトの利用について | 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation