●判例【ハンレイ】
デジタル大辞泉
はん‐れい【判例】
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
世界大百科事典 第2版
はんれい【判例】
出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.
日本大百科全書(ニッポニカ)
判例
はんれい
先例として一般性をもつ裁判。これに対し「判決」とは、ある特定の事件につき裁判所が下した法判断のことをいうから、両者は概念的に区別されなければならない。わが国では、憲法第76条により裁判官は憲法および法律のみに拘束されるから、同種の事件につきある裁判所の法判断(判決)が存在するからといって、他の裁判所はこれに拘束されないのが原則である。ただ、この原則は司法の独立または裁判官の独立を保障するためのものであり、同種の事件につきある裁判所が他の裁判所の判決を参考にしたり、これに従うことを禁止する趣旨でないことはいうまでもない。むしろ、逆に、法的安定性の見地から、同種の事件につき裁判所により法判断が異なることは好ましいことではない。そこで、裁判所は同種の事件につき他の裁判所の法判断がある場合には、これを参照すべきであろうし、現に、この判決が程度の差こそあれ一定の規準として後の判決形成に事実上の影響力をもっている。とりわけ、同趣旨の判決が繰り返されていたり、上級裁判所(とくに最高裁判所)の判決がすでに存在する場合には、これらの判決は先例として後の判決に拘束力をもつといってよい。このことは、判例違背が上告理由とされていたり、最高裁判所が従来の判例を変更する場合には、大法廷を開くべきものという慎重な手続を要求していることなどから判断しても、法制上も認められているといえよう。このような事実上または実定法上の根拠に基づき、「判例」という概念が成り立ちうるのである。
前記のような「判例」は法として法源性をもちうるか。この問題は「法」をどのように理解するか、ということに帰着する。この点につき、英米法系における判例法主義のもとでは、法制上、判例が法源の基本をなし、「判例法」、すなわち判例が法であるという考え方が当然の前提とされているのに対し、大陸法系では、三権分立の原則のもとに立法機関の定める法(法規)のみが法源とされるから、判例の法源性は一般に否定される。ただ、わが国は大陸法系に属するとしても、前述したように、裁判規範のレベルでは、事実上または法制上、判例には規準として一定の拘束力を認めざるをえない。しかも、わが国では、「法の解釈」または「法の適用」という名のもとに、実定法の明文に反するような判例が存在するという事実も否定できない。そうだとすれば、判例法という観念を認めるか否かは別として、法を国家意思の発現として実体的・機能的に理解するならば、実定法研究とともに判例研究の重要性が指摘されなければならない。
[名和鐵郎]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
精選版 日本国語大辞典
はん‐れい【判例】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
「判例」の用語解説はコトバンクが提供しています。
●判例の関連情報