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動脈管開存症【どうみゃくかんかいそんしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

動脈管開存症
どうみゃくかんかいそんしょう
patent ductus arteriosus; PDA
ボタロ管開存症ともいう。大動脈肺動脈を直結する動脈管生後,生理的に閉鎖せず,遺残した状態をいう。先天性心疾患の 10~15%を占める。他の異常を合併することが少くない。残った動脈管が太い場合は,乳幼児期からうっ血性心不全や肺高血圧を呈し,予後はよくない。細い場合でも細菌性心内膜炎を併発する危険がある。合併症がなければ動脈管の結紮や切離手術は安全なので,小児期に手術を行うのが望ましい。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

どうみゃくかんかいぞん‐しょう〔ドウミヤククワンカイゾンシヤウ〕【動脈管開存症】
胎児期に特有の血管である動脈管が、出生後も開いたまま残ってしまう状態。動脈管は胎児肺動脈大動脈をつなぐ血管で、胎盤を通して母体から酸素や栄養を受け取る胎児期の血液循環に重要な役割を果たすが、出生後、肺呼吸の開始とともに自然に閉鎖して結合組織性のとなる。この動脈管が出生後も開存し続けると、通常なら左心室から大動脈を経て全身に送り出される血液が、肺静脈に流れ込み、の血流量が増加し、肺や心臓に大きな負担がかかる。さらに、肺の血管抵抗が上昇し、肺高血圧症を起こすと、肺動脈を流れる静脈血が大動脈に流入し、低酸素血症を生じる。乳幼児期に発症すると鬱血性心不全・発育不全、成人では感染性心内膜炎を起こしやすい。ボタロー管開存症

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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日本大百科全書(ニッポニカ)

動脈管開存症
どうみゃくかんかいそんしょう
patent ductus arteriosus
胎生期に肺動脈分岐部と左鎖骨下動脈分岐部よりやや末梢(まっしょう)の大動脈とを連絡する動脈管(ボタロー管)が、生後1~2年を経ても閉鎖されないで開存している先天性心疾患の一種。ボタロー管開存症ともいう。胎生期には、右心室から肺動脈に拍出された血液の大部分は肺に向かわないで、この動脈管を通って直接大動脈に入る。しかし、生後に肺呼吸が開始されるとともに血液は肺に向かうようになり、この時期以後には動脈管は不要となるため、生後まもなく閉鎖し索状物(動脈管索)として残存するのが普通である。ところが、この動脈管の閉鎖機転がなんらかの原因で妨げられて開存したままでいると、圧の高い大動脈から動脈管を通って圧の低い肺動脈へ多量の血液が流れ込み(短絡)、肺血流量が増加する。このため肺血管抵抗の増大とともに肺高血圧症をおこし、放置すれば心不全、細菌感染、動脈瘤(りゅう)様変化などをおこして長生きできなくなる。
 発生は先天性心疾患の約15%を占め、頻度が高い疾患である。聴診によって左第二肋間(ろっかん)、胸骨左縁に最強点をもつ連続性機械様雑音の聴かれることが特徴的で、聴診だけで診断がつけやすい。発見しだい手術するのが原則であり、肺高血圧症が進行して逆短絡すると手遅れである。手術方法は動脈管を結紮(けっさつ)するか、切断・縫合する。
 なお、ボタローLeonardo Botallo(1530―?)は、イタリア生まれでフランスのパリに住み、シャルル9世とアンリ3世の侍医を務めた医学者で、動脈管や卵円孔を記載したことで知られる。しかし、これらを最初に記載したのはベサリウスの弟子であるイタリアの解剖学者アランチウスJulius Caesar Arantius(1530―89)といわれ、こちらはアランチウス静脈管に名を残している。[竹内慶治]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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内科学 第10版

動脈管開存症(先天性心疾患)
概念
 動脈管は胎生期には肺動脈と大動脈をつなぐ太い血管である.胎生期には血液は右室から肺動脈,動脈管を通って下行大動脈へ流れる.生後,血中酸素分圧の上昇に伴って閉鎖し,消滅するのが普通であるが,閉鎖しない場合には大動脈から肺動脈への左-右短絡をきたす.本症は先天性心疾患の5~10%を占める頻度の高い疾患である.
病態
1)左-右短絡量が多い場合:
左室の容量負荷をきたし,動脈管が太い場合には肺高血圧をきたす.治療なしでは本症の約40%が45歳までに死亡する.大きな動脈管開存(肺動脈圧が大動脈圧とほとんど同じ)の場合,乳児期に心不全に陥り,治療なしでは心不全で死亡するか,肺血管抵抗が高いままに保たれ,生後数年(早ければ1~2年,通常4~5年以降)で肺血管閉塞性病変をきたす.
2)動脈管が太くない場合:
動脈管の大きさに応じて容量負荷の有無がきまり,動脈管が小さい場合には容量負荷がない場合もある.容量負荷がある場合,中年(40歳代)以降に死亡が多くなる(毎年4%が死亡).高齢者になってから長年続いた容量負荷で心不全に陥ることもある.高齢者でも年齢による治療適応除外とはならないが,長年続いた容量負荷の場合,左室機能不全は治療後も持続する可能性がある.
臨床
症状
 太い動脈管開存の症状は,心室中隔欠損の大欠損と似ている.生後2~3カ月で多呼吸,哺乳力低下などの症状が強くなる.2音の亢進,胸骨左縁に収縮期雑音,心尖部に拡張期雑音を聴取する.脈は跳脈(bounding pulse)となる. 動脈管が太くない場合には,通常,無症状で経過する.連続性心雑音を聴取する. 成人における病型は,①肺高血圧があり,右-左短絡となってEisenmenger症候群となっているか,②肺高血圧が比較的軽度で,左室容量負荷がかかっているか,③動脈管が小さく,ほとんど雑音が聴取されないくらいかのいずれかである.成人では無症状のことが約40%,有症状が約60%である.症状は運動能低下が最も多い.
 Eisenmenger症候群では連続性雑音はなく,上肢に比べ下肢の酸素飽和度が低くなる.
検査成績
1)心電図:
中等度までの大きさの動脈管開存では左室の容量負荷を示す.太い動脈管では両室負荷を示す.
2)胸部X線:
左-右短絡量が多い場合には肺血管陰影の増強と心拡大を認める.
3)心エコー:
動脈管を描出できる.カラードプラ心エコーで動脈管を通る血流が確認できる(図5-8-14).短絡方向,右室圧,左室容量負荷の有無が診断できる.
4)心臓カテーテル検査:
肺高血圧の有無が不明瞭の場合には心臓カテーテル検査を行うが,左右肺動脈血酸素飽和度が異なる場合には,肺血管抵抗の正確な測定は不可能である.
治療適応
 本症が治療できなかった時代には,動脈管が大きくない場合でも,多くの患者が心内膜炎で死亡していた(毎年,総患者の0.4%が罹患).そのためたとえ比較的小さな動脈管でも治療の適応があるとされる.肺血管閉塞性病変がある場合や,ごく小さな動脈管の場合を除いては,カテーテル治療,手術ともに適応となる.
 動脈管が太い場合には,(まれに新生児期に),通常,乳児期に治療する.ただし妊娠満期で生まれてきた子供では生後3~5カ月まで,未熟児で生まれてきた子供ではもう少し遅くまで自然閉鎖がありうる. 動脈管が太くない場合や肺高血圧がない場合,新生児期や乳児期に治療する適応はない. 肺血管閉塞性病変がある場合には,カテーテル治療,手術ともに適応とはならない.通常8〜10 Wood単位・m2
以上は肺血管閉塞性病変があると判断する. 小さな動脈管の場合,治療の適応の1つの目安は,雑音があることである.連続性雑音を聴取しない,いわゆる silent PDAの治療適応は議論があるところである.
治療
 治療法には手術とカテーテル治療がある.両者ともに利点,欠点があるが,カテーテル治療できない動脈管に対してのみ,外科治療の適応があるといってよい.
1)外科治療:
動脈管開存症の治療は1938年ボストン小児病院のGrossの結紮術の成功以来外科的治療に委ねられてきた.動脈管を切断することが多いが,鉗子がかけられない場合には結紮する方法がとられる.手術は,左胸部に手術創が残ることを除けば,手術死亡率はほとんど0%で,予後良好の疾患となっている.安定した成績で手術治療がなされているが,手術直後には当然手術創の痛みがあること,手術創の治癒に1~2週間かかること,手術創が生涯残ること,出血のリスク,反回神経麻痺の可能性など,患者の負担が大きい欠点がある.小児では人工心肺を使わないで動脈管を切断することが多い.50~60歳以降は石灰化をきたして組織がもろくなっていることが多いので,人工心肺下にパッチ閉鎖することが多い.
2)カテーテル治療:
カテーテル治療は,短期間の入院ですむこと,手術創がつかないことの利点がある.これまでのカテーテルによる経皮的動脈管閉鎖術の試みには,Porstmannの方法,Rashkindの方法,Gianturcoコイルを用いた閉鎖術,デタッチャブルコイルを用いた閉鎖術,Amplatzer閉鎖栓などがある. a)コイル塞栓術:径2 mm以下の小さな動脈管はコイル塞栓術を行うことが多い.わが国ではGianturco コイルに改良を加えた,デタッチャブルコイルを用いることが多い(図5-8-15). 成人の場合,動脈管径は4~5 mmのことが多く,小児に比べ径の絶対値は大きく,次に述べるAmplatzer閉鎖栓を用いることが多い.  b)Amplatzer閉鎖栓:Amplatzer閉鎖栓(図5-8-16)を用いると,2~10 mmくらいまでの動脈管は閉鎖できる.国際多施設研究では,年齢20日から75歳の316例の集計で,10.6 mmまでの動脈管を閉鎖できたという(図5-8-17).[中西敏雄]
■文献
Campbell M: Natural history of persistent ductus arteriosus. Br Heart J, 30: 4-13, 1968.
Fisher RG, Moodie DS, et al: Patent ductus arteriosus un adults-Long-term follow-up: Nonsurgical versus surgical treatment. J Am Coll Cardiol, 8: 280-284, 1986.
Faella HJ, Hijazi ZM: Closure of the patent ductus arteriosus with the Amplatzer PDA device. Cath Cardiovasc Interv, 51: 50-54, 2000.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

動脈管開存症
どうみゃくかんかいぞんしょう
Patent ductus arteriosus (PDA)
(循環器の病気)

どんな病気か・原因は何か

 動脈管は下行大動脈と主肺動脈をつなぐ太い血管で、母親の胎内にいる時には開存していますが、生まれてすぐ(1~2日)に収縮して閉鎖します。閉鎖が不十分であると「動脈管開存症」となります(図19)。

 原因として風疹ウイルスの感染(先天性風疹(せんてんせいふうしん)症候群)、出生後に続く低酸素血症(ていさんそけっしょう)が知られています。単独病変での原因は不明です。

 太い動脈管開存では、生後2~3カ月に心不全を生じます。中等度以下の太さの場合は心不全を生じませんが、学校健診の際の心雑音で発見されます。

症状の現れ方

 心不全を生じた乳児はやせて呼吸が速く、脈が跳ねるように触れます(バウンディングパルス)。聴診器をあてると、特徴的な連続性の雑音を聴取できます。

 心不全を生じた動脈管開存症は早急に、また心不全がなくても肺高血圧がある場合は1~2歳までに手術をすることが望ましいとされています。4~5歳までにアイゼンメンジャー症候群(肺高血圧の末期像)に至ることもあります。

検査と診断

 心臓超音波(心エコー)、または心臓カテーテル、心血管造影検査で確定します。区別すべきものとしては、連続性雑音がある静脈雑音、肺動静脈瘻(はいどうじょうみゃくろう)大動脈肺動脈中隔欠損(だいどうみゃくはいどうみゃくちゅうかくけっそん)冠動静脈瘻(かんどうじょうみゃくろう)などがあげられます。

治療の方法

 最近では、直径3~5㎜までの動脈管はカテーテルによる閉鎖法が可能となっていますが、動脈管の形態によっては手術的に閉鎖するほうが望ましい場合もあります。胸を開かないで、内視鏡による手術で動脈管を閉鎖する方法も普及し始めています。

 おのおのの症例で「リスクと利益」は異なるので、どの方法をどの時期に選択するかは、循環器小児科医または循環器小児外科医と相談のうえ、判断する必要があります。

新岡 俊治

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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