●勢力均衡【セイリョクキンコウ】
デジタル大辞泉
せいりょく‐きんこう〔‐キンカウ〕【勢力均衡】
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世界大百科事典 第2版
せいりょくきんこう【勢力均衡 balance of power】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
勢力均衡
せいりょくきんこう
balance of power
共通の権力の存在しない不均質な国際社会で、多数の主権国家がそれぞれの国益を追求しながら、いずれの国家(群)が優越的なヘゲモニーを握ることをも排除し、国際間に均衡を図ることによって相互に攻撃ができないような状況をつくり、国家さらに国際社会の平和と安定に寄与する国際政治上の原理ないし政策を勢力均衡という。
勢力均衡の下では、各国は自国の安全を高めるために軍事力を増強したり、逆に軍縮をしたり、あるいは自由に同盟関係を組み替えることができる。そのタイプには直接的対峙(たいじ)と間接的競合の二つがある。政治技術としての勢力均衡の歴史は古いが、注目すべきは近世初頭以後である。ウェストファリア会議後のヨーロッパ国際社会成立から第一次世界大戦前まで、勢力均衡は、国家主権の概念、国際法の原則とともにヨーロッパ安定の原理として機能した。その理由として、ヨーロッパの主要主体間の力がほぼ同等であったこと、各国の軍事力と政治的意図が限定的であったこと、共通の文化・制度の存在、それにイギリスが「均衡調整者」の役割を果たしたことなどをあげることができる。そのイギリスもヘンリー8世以来の「光栄ある孤立」を捨て、19世紀末にはドイツとの軍備競争に突入し、第一次大戦の勃発(ぼっぱつ)を促した。
現実の国際政治は依然として勢力均衡に依拠している。しかしそれによって国際社会の平和を追求・維持することには問題がある。勢力均衡による平和は現状維持にすぎず、またそれは、国力が計量可能であるという擬制のうえに成り立っているが、現実には各国は均衡ではなく相手の力以上の力を求めようとする。つまり勢力均衡のなかには軍拡のメカニズムが内包され、それはつねに緊張を増幅させ、戦争の原因となる。それゆえ勢力均衡下の平和は、きわめて不安定なものである。第一次大戦後、勢力均衡への批判が高まり、集団安全保障理論が登場したが、国際連盟の失敗に示されているように、勢力均衡にとってかわるものとはなりえなかった。
20世紀に入り、国際政治の舞台の非ヨーロッパへの拡大、技術革新と核の出現、国際主体の多様化などによって、それまでヨーロッパの勢力均衡を支えていた基盤は崩れ、現在、勢力均衡の存立の構造的条件は摩滅したといえる。その意味において、新しいグローバルな安全保障パラダイムが模索されねばならない。
[臼井久和]
『F・L・シューマン著、長井信一訳『国際政治』上下(1973・東京大学出版会)』▽『H・モーゲンソー著、現代平和研究会訳『国際政治』(1986・福村出版)』▽『高柳先男著『パワー・ポリティクス』(1991・有信堂)』
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典
せいりょく‐きんこう ‥キンカウ【勢力均衡】
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旺文社世界史事典 三訂版
勢力均衡
せいりょくきんこう
balance of power
ウィーン会議の際のヨーロッパの国際関係,第一次世界大戦前の三国同盟対三国協商の対立,第二次世界大戦前の枢軸国対連合国両陣営の対立,戦後の米・ソを中心とする国際関係などがその例。
出典:旺文社世界史事典 三訂版
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