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化学兵器禁止条約【かがくへいききんしじょうやく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

化学兵器禁止条約
かがくへいききんしじょうやく
Chemical Weapons Convention; CWC
毒ガスなどの化学兵器の開発,生産,保有を包括的に禁止し,世界中の化学兵器を廃絶することを定めた条約。正式名称は「化学兵器の開発,生産,貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」Convention on the Prohibition of the Development, Production, Stockpiling and Use of Chemical Weapons and on Their Destruction。1992年9月3日のジュネーブ軍縮会議(→軍縮会議)で採択,1993年1月13日調印,1997年4月29日発効。
化学兵器は,1925年のジュネーブ・ガス議定書で戦時の使用が禁止されたが,生産・保有までは禁止されず,その後の化学兵器拡散に歯止めがかからなかった。化学兵器保有を公式に認めているアメリカ合衆国,ロシア以外に,中東諸国などが潜在的保有国とみられる。化学兵器廃絶のための交渉は,1960年代末のアメリカの化学兵器生産停止,先制不使用宣言を皮切りにジュネーブで始まり,1969年の国連事務総長ウ・タントによる報告書(→生物・化学兵器の禁止)を契機として,1980年にジュネーブ軍縮会議に化学兵器特別委員会を設置,1984年にはアメリカのジョージ・H.W.ブッシュ副大統領が化学兵器包括禁止条約草案を提出して本格的な条約審議が開始された。一方,アメリカとソビエト連邦は 1990年6月,化学兵器の生産停止と廃棄に関する二国間協定を締結,これが全世界的な廃絶への先鞭となった。
化学兵器禁止条約は前文と本文 26ヵ条,三つの付属書からなり,(1) 化学兵器の開発・製造・貯蔵・使用の禁止,(2) 現存する化学兵器および製造施設の条約発効後 10年以内の廃棄,(3) 条約違反防止のための抜き打ち査察などの検証制度,などを定めている。特に,違反の疑いのある施設・工場に対する抜き打ち査察(チャレンジ査察)を可能にしていることが大きな特徴となっている。条約の実施にあたる国際機関として,1997年オランダのハーグに化学兵器禁止機関が設置された。日本は 1995年批准。2013年現在の締約国数は 190で,未署名国はアンゴラ,エジプト,朝鮮民主主義人民共和国,南スーダンのみ。(→生物兵器禁止条約大量破壊兵器

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

化学兵器禁止条約
化学兵器の開発、製造、貯蔵、使用を禁止する条約。現有の化学兵器と製造施設の10〜15年以内の廃棄、原材料物質の軍事転用の監視、化学施設への抜き打ち査察も規定。1993年調印、97年発効。米ソが協調して90年6月、化学兵器破棄協定を締結。さらに湾岸戦争後の91年、イラクによる大量の化学兵器製造が判明、化学兵器の拡散への懸念から、ブッシュ米大統領(当時)が化学兵器全廃を表明。80年以来、難航していたジュネーブ軍縮会議の交渉が急進展した。ハーグ化学兵器禁止機関(OPCW)を置く。
(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

化学兵器禁止条約
世界的な化学兵器の全面禁止と不拡散をうたい97年4月に発効し、今年5月29日現在で184カ国が締約。日本は発効前の95年に批准している。締約国には米英仏ロ中の国連安保理常任理事国のほか、インドパキスタンイランなどの主要国も含まれるが、北朝鮮ミャンマー(ビルマ)、イスラエル、イラクなどは未締約国。
(2008-06-07 朝日新聞 朝刊 1社会)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

かがくへいき‐きんしじょうやく〔クワガクヘイキキンシデウヤク〕【化学兵器禁止条約】
《「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」の通称》サリンなどの毒ガスや枯れ葉剤など、化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用を禁止し、保有する化学兵器の廃棄を定めた条約。廃棄は原則として発効後10年以内。1992年国連総会で採択、1993年1月130か国により調印、1997年発効。締約国は192か国(2017年現在)。査察を担当するOPCW(化学兵器禁止機関)がハーグに設立されている。CWC(Chemical Weapons Convention)。
[補説]未批准国のうちイスラエルは1993年に署名済み、エジプト・北朝鮮・南スーダンは署名していない。

出典:小学館
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日本大百科全書(ニッポニカ)

化学兵器禁止条約
かがくへいききんしじょうやく
Chemical Weapons Convention

化学兵器の開発、生産、貯蔵、使用などを禁止し、化学兵器および原材料化学物質、その生産設備の廃棄を規定する、特定カテゴリーの兵器に限った実質的な軍縮条約。正式には「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」。欧文表記の頭文字よりCWCという。第一次世界大戦で化学兵器(毒ガス)が大量使用され、その残虐性が認識されたことから、1925年に戦場での使用を禁止する議定書(化学兵器使用禁止議定書)が成立した。第二次世界大戦後、使用だけでなく生産も含む全面的な禁止条約に向けた交渉が続いたが、使用の経験から兵器として有用との認識があったことや冷戦下での他国の開発・貯蔵に対する疑心暗鬼から、アメリカとソ連が一方的な放棄を嫌ったこと、および除草剤や暴動鎮圧剤(催涙弾など)などとの区別があいまいなこと、工業、農業、食品、製薬など化学剤の民生利用への支障の懸念などが障害になり、難航した。しかし1980年以降のイラン・イラク戦争でマスタードガス(イペリット)が使用され、さらに冷戦後に化学兵器など大量破壊兵器の拡散が懸念されるようになったことから条約実現への機運が高まり、1993年1月に調印され、1997年4月29日に発効した。同年5月に条約の実行・検証機関として化学兵器禁止機関(OPCW)がオランダのハーグに設立された。禁止対象は毒性化学物質とその前駆物質で、大まかにはマスタードガスなどのびらん剤、ホスゲンなどの窒息剤、青酸などの血液剤、サリンなどの神経剤等である。これらの化学兵器について加盟国は保有内容の申告(冒頭申告)を行い、それに基づくOPCWによる申告内容の検証(冒頭査察)を受ける。そして、条約発効後10年以内(2007年4月まで)にその廃棄を完了しなければならないとした(4条、5条)。また締約国は、老朽化した化学兵器や1925年以降に締約国の領域に同意なく遺棄した化学兵器も廃棄しなければならない。日本は中国に遺棄兵器があることを申告しており、1999年(平成11)に中国と覚書を交わし兵器の回収・廃棄を継続している。2017年(平成29)時点で6万2000発発掘・回収、4万9000発を廃棄し、2022年までの完了を目ざしている。

 産業活動の面では、締約国は兵器の原料となりうる化学物質を民生用に扱う事業者の活動について申告し、物質および関連施設に検証措置を受け入れなければならない。対象化学物質(表Ⅰ~Ⅲ剤に分類)は、兵器への転用リスクに応じて生産、移転(貿易)に異なる検証と規制が実施される。

 2018年6月時点で、193か国・地域が加盟し、未署名はエジプト、南スーダンと北朝鮮、イスラエルは署名のみで未批准である。2017年9月にロシアは貯蔵分廃棄を完了、ドイツ国内で行われたリビアの化学兵器の廃棄も同年11月に完了した。アメリカは2022年の廃棄完了を目ざしている。このような状況を踏まえ、2017年締約国会議では「ポスト(化学兵器)廃棄過程」に入ったとの認識が強まった。しかし2013年以降のシリア内戦、イラク・シリアでの「イスラミック・ステート」との戦闘では、OPCWの事実調査団(FFM)、国連との合同調査メカニズム(JIM)は何度も化学兵器使用の疑惑を指摘した。しかしシリアをめぐる米ロの対立から事実確定、制裁の合意は得られなかった。アメリカは、2017年4月、シリア政府の北部ハマなどでの反政府勢力への化学兵器使用に対して、抑止のためとして59発の巡航ミサイルでシャイラート空軍基地を攻撃した。既存化学兵器の廃棄は進んでいるが(2017年12月に申告兵器の96%完了)、紛争が続く限り使用の可能性があり、監視を怠ることはできない。

[納家政嗣 2019年7月19日]

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