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十字架【じゅうじか】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

十字架
じゅうじか
crux; cross
古代世界のあらゆる文化層において,装飾形態あるいは象徴形態などなんらかの印としてしばしば表わされている。なかでもエジプト美術においてはアモン神レーが上部に輪のついた十字アンクを持つ図で表現されており,その十字架は永遠の生命を象徴するものであり,のちのキリスト教の十字架が意味するものと最も近い例である。東方においては古来,木で組まれた十字架は磔刑の道具であり,キリスト教ではキリストの磔刑を記念し,キリスト自身の印であると同時に信徒の信仰の印でもある。図像としては,(1) ギリシア形 (+) ,(2) ラテン形 (✝) ,(3) T字形,(4) アンデレ形 (×) の4種が基本形で,17~18に及ぶ変形がある。十字は,古代の各地域で太陽,火,生命の象徴として用いられていたが,初期キリスト教では墓標などに (3) がおもに描かれた。4世紀以前は迫害を恐れて暗示的代替物 (いかり,おの,卍など) が用いられ,画像忌避から十字の印を切ることが典礼的に行われた。4世紀,コンスタンチヌス大帝の十字架幻視,キリスト教公認,十字架磔刑廃止などを契機に,十字架は悪魔と死に対するキリストの勝利,信仰のシンボルとして旗,武具,紋章,葬祭具の装飾などに流行,教会建築にも十字架形が現れてきた。十字架像も5世紀頃盛んになり,その上のキリストの姿は東方形では袖なしの長衣を着,西方形では腰布だけの裸像が普通で,以後芸術的主題ともなっている。キリストの十字架発見 (320頃) は十字架崇敬を促進し,335年から9月 14日が聖十字架称賛の祝日となった。十字軍はこの聖十字架奪回をも目指すものであった。キリストの十字架は聖遺物として崇敬され,一般に十字架の印,ロザリオなどでは準秘跡として重視される。各教会堂では,十字架は献堂式,降福式,聖体行列に用いられ,またイエスの苦難を忍ぶ信心業として,イエスの裁判から埋葬までの 14場面をたどる十字架の道 (行) が行われる。プロテスタントでは一部宗派を除き,十字架は崇敬の具体的対象としては用いないが,キリスト信徒の印としては使用する。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

じゅうじ‐か〔ジフジ‐〕【十字架】
木を十字形に組み、罪人を磔(はりつけ)にするときに用いた処刑道具。
《イエスが磔にされたところから》キリスト教を象徴する十字形のしるし。贖罪(しょくざい)の犠牲、罪や死に対する勝利、また苦難を表す。早くから礼拝の対象とされた。クロス。クルス。
罪の意識や課せられた苦難などをたとえていう語。「重い十字架となって背中にのしかかる」

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

じゅうじか【十字架 Cross】
古代地中海世界に見られた磔刑具であるが,とくにイエス・キリストがかけられたものをいう。十字架を重罪人の磔刑具として用いたのはおそらくフェニキア人が最初であろう。それはのちにひろく各民族間にも用いられるようになったが,ローマ人はそのありさまがあまりに残酷なので,奴隷や凶悪犯人のほかは磔刑に処さなかった。キリストもまた大罪人として十字架にかけられた。キリスト教を公認したコンスタンティヌス1世(大帝)は,337年,磔刑を禁止し,そののち十字架はキリスト教世界で人類救済の犠牲祭壇,また死と地獄に対する勝利の象徴となった。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

じゅうじか【十字架】
罪人をはりつけにした処刑具。木を十文字に組み合わせたもの。 -にかける
イエスが磔刑たつけいにされたことから 十字の形をしたもの。キリスト教の象徴。特に、贖罪・自己犠牲・愛などのしるしとして崇敬の対象とされる。クロス。クルス。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

十字架
じゅうじか
Staursギリシア語
cross英語
十字に組み合わせた木を用いた処刑の道具。これによりイエス・キリストが処刑されたことから、キリスト教の象徴になる。[鈴木範久]

苦難や死・罪からの解放

十字架に罪人の体を縛り付け、ときには両手を釘(くぎ)で打ちつけたりする処刑方法は、フェニキアをはじめ古代諸国で行われていた。ローマでは、奴隷や凶悪犯に使われた。ユダヤ地方を治めていたローマ総督ピラトにより、イエスは強盗犯人2人とともに十字架で処刑された。このことは、イエスが卑しい人間の扱いを受け、極刑に処せられたことを表す。『新約聖書』のイエスの伝記である福音書(ふくいんしょ)では、十字架ということばが、早くも重荷・苦難などを意味するものとして用いられている(「マタイ伝福音書」10章38、16章24)。あるいはまた、恥多き死や屈辱に対する忍耐(「ヘブル書」12章2)を表すこともある。同じ『新約聖書』の「パウロの書簡」になると「わたしの内の古き人はキリストと共に十字架につけられた」(「ロマ書」6章6)のように、古きものの死、罪からの解放を表すものになっている。この世的なるものや肉の情欲にとらわれていた自己に、死んで新しい生の世界が与えられたことのしるしとされる。「エペソ書」や「コロサイ書」では、イエスの十字架の死が、神との和解であるという贖罪(しょくざい)思想がみられる(「エペソ書」2章16、「コロサイ書」1章20)。
 十字架をもってキリスト教の象徴としたことは、迫害下に地下の墓地(カタコンベ)に設けられた教会の壁などに、その形が描かれていることでわかる。コンスタンティヌス帝が、空に十字架のしるしと「このしるしで勝て」と書かれた文字を見て、十字架を軍旗としたという話は名高い。[鈴木範久]

礼拝の対象

十字架は、やがてキリスト教の象徴であるだけにとどまらず、礼拝の対象となった。初めは十字架だけが祭壇に置かれたが、のち、キリストの磔(はりつけ)像を伴うようになった。そのキリスト像には王冠をつけ、罪・死に対する勝利者としてのキリストから、人類の救済のため、贖罪の苦難のキリストへ、という変遷もみられる。
 復活祭前の金曜日は、キリストが十字架につけられた受難日、受苦日とされ、ローマ・カトリック教会では十字架に接吻(せっぷん)する儀式が執り行われる。指で十字架のしるしをつくる儀礼は、「父と子と聖霊の御名(みな)によりて」を唱え、ローマ・カトリックでは額、胸、左肩、右肩の順、東方教会では額、胸、右肩、左肩の順でなされる。十字架のしるしを切ることは、神の恩寵(おんちょう)にあずかる秘蹟(ひせき)(サクラメント)に準ずるものとされている。また、ときには、十字架が悪魔払いに用いられることもある。なお、プロテスタントでは、この十字架のしるしをつくらないし、十字架像を崇拝の対象とすることもしていない。[鈴木範久]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

じゅうじ‐か ジフジ‥【十字架】
〘名〙
① 罪人をはりつけにする刑具。柱の上部に横木を添えて十字形に作り、罪人の両手を左右に開かせてくくりつけ、鎗(やり)などで突き刺したり、火をかけたりして殺すもの。
※自由之理(1872)〈中村正直訳〉二「十字架に死したる教祖の記録は」
② イエス‐キリストがはりつけにされたところから、キリスト教徒が尊敬・名誉・贖罪(しょくざい)・犠牲・苦難の表象として礼拝し、また装飾として用いる十字形の標識。イエス‐キリストの十字架上の死で、神への完全な従順と、人間へのもっとも現実的な愛を示すものとなった。クロス。クルス。
※琵琶伝(1896)〈泉鏡花〉四「其一端には新らしき十字架ありて建てるを見たり」

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