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原発性線毛機能不全症

内科学 第10版

原発性線毛機能不全症(嚢胞および拡張性気管支・肺疾患)
概念
 従来,上,下気道粘膜線毛,卵管の線毛,精子の鞭毛など全身の線毛の先天的機能異常を呈するものとしてimmotile cilia症候群とよばれてきたが,微弱で不完全な線毛運動を示すものや線毛運動の協調性を欠くものなども明らかになり現在ではprimary ciliary dyskineasia(PCD)としてまとめられている.PCDは,先天性の粘液線毛クリアランス異常から慢性の気道炎症を起こし,気管支拡張症を呈することから気管支拡張症の関連病因の1つとして位置づけられている.
病因
 常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性疾患である.現在まで線毛のダイニン(dynein)関連蛋白をコードする3つの遺伝子DNAI1,DNAH1,DNAHI1の異常が劣性遺伝形式をとるPCDで明らかになっているが,ほかの遺伝子の関連性も指摘されている.特に内臓逆位,慢性副鼻腔炎,気管支拡張症を呈するものをKartagener症候群(報告者にちなんでAfzelius症候群ともよばれる)とよび,先の3つの遺伝子は,この症候群で同定された.ダイニンの欠損や機能異常により線毛運動の異常が生じ,気道の線毛による粘液排出の障害(粘液線毛クリアランスの低下)が起こり,その結果感染症が反復して,慢性の炎症による副鼻腔炎や気管支拡張症が生じる.内臓逆位については,胎生初期におけるノード細胞の線毛の回転運動の異常により生じることが明らかになっている.
疫学
 米国においては2万から3万人に1人の割合で発症し,男女差はないことが明らかになっている.わが国における有病率は明らかでない.
臨床症状
 ダイニンの完全欠損,不完全欠損,これに不随する蛋白の異常により臨床症状も一様ではないが,粘液線毛クリアランスや全身の線毛を有する器官の機能異常に由来する症状が中心となる.慢性上気道感染症(慢性副鼻腔炎,滲出性中耳炎)および慢性下気道感染症(気管支拡張症,慢性気管支炎,慢性細気管支炎),不妊症(特に男性不妊)が高頻度に認められる.慢性の気道感染症,特に気管支拡張症は,小児期から発症しやすい.子宮外妊娠や色素性網膜症,水頭症などの合併もある.内臓逆位は,約半数の症例で認められる.
診断
 臨床症状から本症が疑われる場合,呼気nasal NO(nNO)と粘液線毛クリアランスを調べることが有用である.PCDの場合,nNOは著しく低値をとることが多く,特異度,感度とも90%以上である.また粘液線毛クリアランスは,サッカリンテストや99Tcでラベルしたコロイドアルブミンの吸入で調べられる.形態学的異常は,鼻粘膜,気管,気管支粘膜の線毛上皮の光学顕微鏡下の観察や電子顕微鏡を使ったダイニン構造が調べられる.PCDの3%にダイニン構造異常を認めない症例も存在する.家族歴で不妊症や血族結婚の有無も調べることは有用である.内臓逆位については,認めなくとも小児期から反復する気道感染症や気管支拡張症がある場合は疑って検査することも重要である.
治療・予後
 去痰薬,気管支拡張薬,急性増悪時には,抗菌薬の投与を行うなどの対処療法が中心となる.増悪の予防としては,肺炎球菌ワクチンの接種,マクロライド系抗菌薬の少量長期投与,禁煙などがあげられる.予後は,比較的良好であるが,長期経過の後に高度の呼吸機能障害を呈することもある.[瀬戸口靖弘]

出典:内科学 第10版
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それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

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