●古事記【こじき】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
古事記
こじき
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朝日新聞掲載「キーワード」
古事記
(2011-12-29 朝日新聞 朝刊 3社会)
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デジタル大辞泉
こじき【古事記】
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世界大百科事典 第2版
こじき【古事記】
【成立】
これまで《古事記》は史書とされてきたが,全巻ひっくるめて本質的には神話とみなした方がよい。編纂が最初に企てられたのは天武朝(673‐686)である。壬申の乱を経過して聖化された王権の由来を語るためにつくられた天皇家の本縁譚,それが《古事記》である。
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日本大百科全書(ニッポニカ)
古事記
こじき
現存最古の歴史書。序文および上・中・下の3巻よりなる。
[黛 弘道]
書名
神代から推古(すいこ)天皇に至るまでの古事を記録したところから『古事記』と命名されたのであろうが、これを「こじき」と読んだか、「ふることぶみ」と訓(よ)んだかについてはいまだ定説はない。
[黛 弘道]
成立
『古事記』の成立過程はその序文に詳しい。序文を疑う説もあるが、とりあえず序文によってその経緯を紹介しよう。
天武(てんむ)天皇は、諸家に伝える帝紀(ていき)および旧辞(きゅうじ)が正しい史実に違い虚偽を加えるところが多いのを慨(なげ)き、いまにしてこれを正さなければ真正の所伝は幾(いくばく)もなくして滅びてしまうであろうと憂え、ここに自ら帝紀・旧辞を検討し、虚偽を削り真実を定めて後世に流伝させようと決心し、稗田阿礼(ひえだのあれ)に命じてこれを誦(よ)み習わせたのであった。しかるに、やがて天武天皇は世を去り、持統(じとう)・文武(もんむ)朝となったが、この時期は律令(りつりょう)制の完成・施行に忙しく、その初志を実現することができなかった。文武の後を受けて即位した元明(げんめい)天皇はこれを遺憾とし、711年(和銅4)9月18日、太安万侶(おおのやすまろ)(安麻呂)に詔して、稗田阿礼の誦み習うところを筆録し献上せよと命じた。そこで安万侶は種々くふうを凝らしてこれを筆録し3巻の書物とし、翌年正月28日に奏上した、という。
なお、このことに関連して『日本書紀』天武10年3月丙戌(ひのえいぬのひ)条の「天皇御于大極殿、以詔川島皇子・忍壁皇子・広瀬王・竹田王・桑田王・三野王・大錦下上毛野君三千・小錦中忌部連首・小錦下阿曇連稲敷・難波連大形・大山上中臣(なかとみ)連大島・大山下平群臣子首、令記‐定帝紀及上古諸事。大島・子首親執筆以録焉」という記事を、帝紀と旧辞とよりなる『古事記』編纂(へんさん)事業そのものであるとする平田篤胤(あつたね)の説があるが、陣容に差がありすぎ、同事とはとうてい考えられない。これはむしろ『日本書紀』につながる事業の発端を示すものであろう。
[黛 弘道]
内容
上巻は神代、中巻は神武(じんむ)から応神(おうじん)まで、下巻は仁徳(にんとく)から推古までの記事を収める。上巻は天地初発(あめつちはじめてひらくる)ときの造化三神、神世七代(かみのよななつぎ)、天照大神(あまてらすおおみかみ)、出雲(いずも)の国譲(くにゆず)り、天孫降臨(てんそんこうりん)、日向(ひゅうが)三代などの物語を載せ、天地・万物の生成、天皇支配の起源と正当性などを説明する。中巻は神武東征(とうせい)に始まり、欠史(けっし)八代を経て、四道将軍(しどうしょうぐん)、倭健命(やまとたけるのみこと)、神功(じんぐう)皇后、応神天皇ら英雄的な人物の伝説を中心に王権の拡大強化と皇統譜の展開を跡づけている。下巻では聖帝仁徳の王統が暴君武烈(ぶれつ)に至って絶えるまでの内紛を軽太子(かるのたいし)の悲話、二王子(顕宗(けんそう)・仁賢(にんけん))の流離譚(りゅうりたん)などを絡めて叙述し、継体(けいたい)の登場から推古の治世までを付加して終わる。中巻の欠史八代と下巻の仁賢以後の部分には旧辞の要素はまったくみえず、帝紀的な記事のみであることが注目される。前者については、八代天皇の実在性に疑いがもたれていることと関連して、もとより旧辞などなかったとも考えられるが、後者については、もはや旧辞がつくられるような口承(こうしょう)文学の時代は終わったのだと理解されている。
総じていえば、上巻は純粋な意味で神々の時代を扱い、中巻は神と人間の未分化の時代を、下巻は純粋に人間の時代を扱ったものといえるであろう。
では、なぜ推古天皇までで筆を止め、舒明(じょめい)天皇以降に及ばなかったのであろうか。それには、舒明以後の天皇がすべて舒明の後裔(こうえい)で、蘇我(そが)氏を母にもつ推古天皇とは別系であることが大きな要因となったと思われる。天武天皇にとって父舒明天皇の即位は自らが天皇となりえた根源である。それゆえ、舒明即位の経緯は改めて詳細に記述する必要があるとし、さしあたり『古事記』には推古までを収録することとしたのであろう。記紀成立期の天皇にとって推古以前はいわば前近代、舒明以後こそ近・現代であった。『日本書紀』に舒明以後を収める理由もここにある。
[黛 弘道]
筆録の方法
本書の内容が古伝承を主とするだけに、所伝の本姿を失うことなく筆録するにはくふうを要した。万葉仮名だけでは冗長にすぎるし、漢文では本旨を損なうおそれがある。そこで両者を折衷し、必要に応じて注を施し、日本語特有の敬語や助動詞の表記には格別の注意を払った。漢文体の『日本書紀』との相違の一つはここにある。
したがって、国文体の最古の古典として国文学・国語学上の貴重な文献であるのはもちろん、その内容は神話学・民族学・歴史学の研究資料ともなる。そのため『古事記』の専門研究者も多いが、これを研究の一素材とする各種の研究者もまた多く存在する。
[黛 弘道]
作成の目的
『古事記』作成の目的は、諸家に伝える各種の帝紀・旧辞を天皇の権威によって整理統一し、それによって天皇の権威をいっそう強め、天皇支配の正当性を歴史的に証明し合理化しようとするところにあった。
そのため、『日本書紀』とともに天皇制存立の根本聖典として神典と崇(あが)められ、中世までは神秘的・神道的な解釈がもっぱら行われたが、近世以降、文学的・儒学的な研究も現れ、ことに本居宣長(もとおりのりなが)は文学的・神道的研究を『古事記伝』において集大成し、研究史に一期を画したが、なお神秘主義的傾向から脱却できなかった。
近代になると、大正期の自由主義の風潮を背景に津田左右吉(つだそうきち)、折口信夫(おりくちしのぶ)らの批判的研究が公表されたが、昭和に入るとそのような研究は圧迫され、国家主義的・神がかり的な風潮が高まった。1945年(昭和20)第二次世界大戦の敗戦により研究の自由が保障されると、古代史研究のタブーはいっさい排除され、それに伴って『古事記』の研究も客観的・科学的な立場から再開されたが、近時は、それに加えて、大正期の業績の再評価とその克服を志向する空気が強まりつつある。
[黛 弘道]
偽書説
『古事記』の批判的研究の一つの成果として江戸後期からある偽書説は、近代に入ってその論拠をさらに加えたが、今日までのところでは、いまだ決定的なものはなく、学界の大勢はこれを認めるに至らない。
[黛 弘道]
『大野晋編『本居宣長全集9~12 古事記伝』(1989・筑摩書房)』▽『『日本古典文学大系 古事記・祝詞』新装版(1993・岩波書店)』▽『『新編日本古典文学全集1 古事記』(1997・小学館)』
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精選版 日本国語大辞典
こじき【古事記】
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ふることぶみ【古事記】
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旺文社日本史事典 三訂版
古事記
こじき
712年成立。3巻。天武天皇の命により稗田阿礼 (ひえだのあれ) が暗誦,これを元明天皇の詔により太安万侶 (おおのやすまろ) が撰録したもの。『帝紀』『旧辞』を検討し,その正説を定めるという編集の根本方針により,神代から推古天皇までを内容とし,天皇の支配による国家の建設という意図により構成されている。
出典:旺文社日本史事典 三訂版
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