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史的唯物論【してきゆいぶつろん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

史的唯物論
してきゆいぶつろん
historical materialism
1840年代にマルクスエンゲルスによって確立された世観。史的唯物論は,弁証法的唯物論の社会への応用である。その研究対象は,社会生活の個々の側面や社会的諸関係の一定の現象と種類ではなく全体としての社会である。そして,多面的で諸矛盾に満ちた全体としての社会を貫く発展諸法則,社会生活のありとあらゆる諸側面の交互作用を研究することにある。これによって初めて人間は複雑な社会の全発展を自然史的な過程として,単一の合理的な過程として,精密に認識することができ,社会の現状を分析し,その発展方向を予知することができるというものである。社会の一般的発展法則に関する科学として,マルクス=レーニン主義の構成部分の一つである史的唯物論は,他のマルクス主義理論と同様に,永遠不変の図式ではなく生きた行動の指針として生れたものであり,したがってそれは常に実践的活動とその成果を一般化し,公式化することによって創造的に発展していこうとする社会生活の認識方法であるといわれる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

してき‐ゆいぶつろん【史的唯物論】
《〈ドイツ〉historischer Materialismusマルクス主義歴史観。歴史の発展の原動力は、社会的生産における物質的生産力とそれに照応する生産関係とからなる社会の経済的構造にあるとする立場。その上に政治・法律・宗教・哲学・芸術などの制度や社会的意識形態が上部構造として形成され、やがてその生産関係は生産力の発展にとって桎梏(しっこく)(束縛するもの)となり、新しい、より高度の生産関係に変わるとされる。唯物史観。→弁証法的唯物論

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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世界大百科事典 第2版

してきゆいぶつろん【史的唯物論 historischer Materialismus[ドイツ]】
マルクス主義の社会・歴史理論ないし社会・歴史哲学を表す用語。ただしマルクス本人はこの表現を一度も用いておらず,マルクス主義者たちのあいだにおいてもこの言葉の概念内容の規定に関して見解がかなり分かれている。マルクスは彼の思想体系とその部門分類の構案を明示的な形では表明していない。が,後継者たちにおいては,弁証法的唯物論(唯物弁証法)という全般的世界観ないし第一哲学ともいうべきものがまずあって,これを自然界に適用することによって自然弁証法が成立し,人間界(社会・歴史の領域)に適用することによって史的唯物論が成立する,とするのが主潮である。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

してきゆいぶつろん【史的唯物論】
マルクス主義の歴史観。歴史発展の原動力は人間の意識・観念にはなく、社会の物質的な生産にあり、生産過程における人間相互の諸関係は、生産力との関係で弁証法的に発展すると考える立場。この物質的な生産の諸条件が全社会経済構成を規定すると同時に、宗教・哲学・芸術などの精神構造をも究極的に決定するとされる。唯物史観。歴史的唯物論。 → 弁証法的唯物論

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

史的唯物論
してきゆいぶつろん
historischer Materialismusドイツ語
マルクスとエンゲルスによって提唱された唯物論的歴史観=唯物史観のこと。史的観念論ないし観念論的歴史観ならびに非歴史的・機械論的唯物論に対立する。それは、マルクス主義ないし科学的社会主義の哲学の重要な構成部分である。[芝田進午]

学説の概要

〔1〕宇宙・天体・地球・生命などについての自然史的世界観を前提として、人間社会をも自然史的過程としてとらえる。もちろん、人間は、自然界とは違い、意識をもち能動的に歴史をつくる。しかし、人間は、自然的諸条件と、先行する世代の達成とを前提とし、それに制約されて、歴史をつくる。また、人間は、能動的に行動するが、その行動が衝突し相殺しあって、無数の「力の平行四辺形」の合成力のように、人間の意識から独立した結果がもたらされる。このようにして、社会の歴史においては、無数の人間の行動、意欲、偶然性に媒介されつつ、自然史的・必然的な法則性が貫徹する。
〔2〕社会の歴史を究極的に規定するものは、人間の「現実の生活の生産と再生産」、より具体的には、(1)労働による生活手段・生産手段の生産、(2)生殖による次の世代の生命の生産という2種類の生産であるが、歴史の発展とともに、(1)が(2)を規定するようになる。
〔3〕類人猿から人間を発展させ形成させた活動は労働である。自然史的前提と労働が社会の発展のもっとも基本的な原動力である。労働が自然を支配する能力を(a)生産力という。この生産力は、生産諸力(具体的には、労働対象としての自然諸条件、人間の労働能力、技術、自然科学、その応用能力、人口、労働組織、交通手段など)によって決められる。この生産諸力の結合の様式が(b)生産様式ないし労働様式(たとえば、農業、手工業、大工業、大規模農業など)である。そして、この(a)(b)に規定されて、(c)生産諸関係すなわち生産手段の占有・所有諸関係が形成される。それぞれの社会におけるこの生産諸関係の総体が社会の「経済構造」ないし「経済的社会構成」とよばれる。それは、人間の意識から独立に形成される物質的社会関係である。
〔4〕人間社会は、初め、低い生産力に制約されて、すべての人が共同で労働する原始共同体であった。しかし、生産諸力の発展、分業、私的所有、商品交換の出現によって、共同体の崩壊が始まり、人々は諸階級に分裂し、階級社会が生まれた。私的所有の生産諸関係すなわち階級関係に照応して、(d)国家を中心とする法律的・政治的上部構造、(e)社会的意識諸形態ないしイデオロギー(社会心理、宗教、哲学、芸術など)が形成された。前述の物質的社会関係に対して、(d)(e)はイデオロギー的社会関係とよばれる。(a)(b)(c)が(d)(e)を基本的に規定するが、後者も相対的独自性をもち、前者に反作用する。
〔5〕この階級社会の主要な形態は、奴隷制、封建制、資本制であり、その出現以来、歴史は階級闘争の歴史である。階級闘争の形態は、(a)(b)(c)に規定される。(c)は(a)(b)の発展に規定されるが、(c)が(a)(b)の発展に照応できず、その桎梏(しっこく)になるとき、(c)はより適応できる形態に変革される。これとともに社会革命の時代が始まり、(d)(e)も徐々に、あるいは急速に変革される。
〔6〕資本制社会が敵対的階級社会の最後の形態である。その胎内で発展する(a)生産力ないし生産諸力(とくに多数の個性をもつ労働者主体の形成、技術革命、科学革命、労働の社会化、交通手段の全面的発展など)、(b)生産様式(大工業)が、この敵対の解決の物質的条件をつくりだす。それらを前提として、労働者階級が国家権力を掌握することによって、資本制社会は変革され、長期の過渡期を経て、搾取・収奪・暴力・階級支配がなく、「各人の自由な発展がすべての人の自由な発展の条件である」ような共同生産制社会が実現される。これとともに人類の前史が終わり、本史が始まる。
 このようにして史的唯物論は、社会の歴史の必然性と偶然性、個人と大衆の役割を初めて科学的に説明し、社会諸科学、歴史科学の科学的基礎を確立した。[芝田進午]

その後の発展

マルクスとエンゲルス以後、史的唯物論の研究は、とくに国家論、イデオロギー論、革命論などの分野でいっそう深められた。この点で、レーニン、グラムシ、ルカーチ、戸坂潤(とさかじゅん)、永田広志(ながたひろし)らの貢献が高く評価される。史的唯物論は完成されたドグマではない。その諸基本概念とそれらの相互関係のいっそうの解明をはじめとして、なお研究さるべき課題に満ちた発展過程の学説である。[芝田進午]
『マルクス、エンゲルス著『ドイツ・イデオロギー』(古在由重訳・岩波文庫/真下信一訳・大月書店・国民文庫) ▽マルクス著『経済学批判』(武田隆夫他訳・岩波文庫/杉本俊朗訳・大月書店・国民文庫) ▽エンゲルス著、藤川覚・秋間実訳『フォイエルバッハ論』(大月書店・国民文庫)』

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精選版 日本国語大辞典

してき‐ゆいぶつろん【史的唯物論】
〘名〙 (historischer Materialismus の訳語) マルクス主義の歴史観。歴史を発展させる原動力は、物質的生産諸力と生産諸関係とからなる経済的構造にあり、それが矛盾や対立を介して発展する諸段階に応じて政治や文化の上部構造が形成されると考える。唯物史観。
※真知子(1928‐30)〈野上彌生子〉「殊にブハーリンの史的唯物論と重なっていたことが、一層意外な、そぐわなさを感じさせた」

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旺文社世界史事典 三訂版

史的唯物論
してきゆいぶつろん

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