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吸収【きゅうしゅう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

吸収(物理、化学)
きゅうしゅう
物質中を放射線や電磁波、あるいは音波が通過する際、その一部が物質中で消滅するために強度がしだいに弱くなる現象。光波の場合は電子またはイオンの振動を励起するためにおこる。吸収される量は入射量に比例するので、入射強度I0の光が厚さdの均質物質を通過したときの強度をIとすると、
  I=I0e-μd
で表され、μを吸収係数という。吸収された光のエネルギーはふたたび光となって放出される場合(蛍光、燐(りん)光)もあるが、多くは物質中の原子やイオンの運動エネルギーに変換されるので、光の吸収によって物質の温度は上昇する。とくに赤外線の場合は直接物質中のイオンの振動を励起するので、熱作用が強い。量子論によれば、光の吸収は二つのエネルギー準位間の遷移に伴うもので、低い準位より高い準位への遷移に伴うものが吸収であり、その逆過程が放射である。物質のエネルギー準位の分布は一様ではなく、また遷移にも関係準位の組合せによって遷移確率(遷移のむずかしさ)が異なるので、吸収も放射もともに物質固有のスペクトル分布を示す。この分布から物質の種類や状態を見分けることが行われている。[尾中龍猛・伊藤雅英]
 化学の場合、気体分子が液体または固体の内部にまで移動することをさすことが多く、それらの表面付近にとどまっている場合を吸着といっている。吸収係数の実際の測定には、
  I=I010-ad (a=μlog10e=0.4343μ)
の式を使うことが多い。また溶液などのように媒質中で一様に分布している試科を使って測定することがもっとも普通であり、aはその濃度cに比例し、a=εcと書くことができるので、
  I=I010-εcd
という式を用いる。cをモル濃度で表したときのεをモル吸光係数といっている。モル吸光係数は物質に特有の数値である。
 音の吸収は一種の緩和現象である。気体の中を音波が通過するとき、温度が上下するが、これは断熱的な圧縮・膨張のためである。そのとき分子の運動エネルギーは気体の回転や振動の内部エネルギーに分配されて平衡に達しようとする。平衡に達するまでには時間がかかるので気体の体積変化が圧力変化より遅れる。
 この遅れを緩和するために圧力の変化を少なくするよう、気体は音を吸収する。このように、音の吸収は物質の体積粘性がおもな原因である。[下沢 隆]
『大津元一著『光科学への招待』(1999・朝倉書店)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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