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唯心論【ゆいしんろん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

唯心論
ゆいしんろん
spiritualism
精神の独立した存在と優位を説く学説。精神を物質との対立でとらえる場合と,生命との対立でとらえる場合とがある。前者唯物論の対極に立つものである。心論は必ずしも物体の存在を否定しない。精神と物質の2実体を認めるデカルト的二元論も唯心論である。メーヌ・ド・ビラン主意主義に始り,F.ラベッソン,J.ラシュリエ,E.ブートルー,H.ベルグソンと続くフランス形而上学の系譜は特にフランス新唯心論と呼ばれるが,ここでは生命を精神より根源的な現象と考える傾向がみられる。 spiritualismという言葉を哲学に導入し,おのれの哲学を唯心論とした最初の哲学者は V.クーザンで,新唯心論という名称もクーザンの折衷主義に対するものとして理解される。他方精神と生命を対立的にとらえる唯心論 (精神主義) もある。 spiritualismeという語が 17世紀フランスで使われ始めたときには,浅薄な神秘家に対する蔑称であったことからわかるように,この宗教的な意味のほうが歴史的には原初的である。すなわち肉体に対する精神,動物的生命に対する霊性の優位を主張する立場であり,キリスト教をはじめ多くの宗教がこの意味で唯心論 (というより精神主義) であり,道徳論や社会学の問題にも関係する。

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デジタル大辞泉

ゆいしん‐ろん【唯心論】
哲学で、世界の本質と根源を精神的なものに求め、物質的なものはその現象ないし仮象と見なす形而上学的、世界観的な立場。プラトンライプニッツヘーゲルらがその代表者。⇔唯物論。→観念論

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世界大百科事典 第2版

ゆいしんろん【唯心論 spiritualism】
原語は,空気,風,呼吸のち霊気,精霊,精神を意味するラテン語spiritusにさかのぼり,今日では唯物論に対して精神ないし精神的なものを原理または実在とする立場をいう。日本では,明治期には〈心即理也〉という見方からidealismの訳語として多く用いられたが,観念論と唯心論とを訳し分け,前者を実在論後者を唯物論と対比するのは,20世紀初頭以来である。カントは独断的唯心論者とは,〈思惟する実体を自我において直接に知覚しうると考え,この思惟する実体の統一性が人格の不変の統一性を成す〉と主張する者であり,伝統的な合理心理学の説く非物体的・不朽的・人格的な実体としての精神Seeleの精神性Spiritualitätを肯定する者として,物質のみを認める唯物論者を退けるのと同様にこれを退けた。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

唯心論
ゆいしんろん
spiritualism 英語
spiritualisme フランス語
Spiritualismus ドイツ語

唯物論に対する形而上(けいじじょう)学的見地で、精神を存在の根源とみなす。物質、生命、精神を存在論的に考えるとき、次のように比較することができよう。三者の独立を認める立場。物質だけを真の存在者とし他をその現象とする唯物論。物質に生命原理を対立させ、精神は生命の発展上に考える生命主義。生命は物質の一現象とし(動物機械論)、物質と精神とをたてる二元論。精神で生命を説明しつつ物質を対立者とするアニミズム。最後に、精神を第一義的存在とし、物質と生命とは精神がいまだ眠り、あるいは無意識的に活動している段階と位置づける唯心論。ところで認識論上、知識の成立を実在論とは逆方向に観念から存在への道ととらえる観念論は、かならず精神の存在を前提するのに、物質等の独立的存在は認めるにしてもその証明が課され、その証明の困難さから容易に非物質主義に至るため、観念論と唯心論とはしばしば混同される。唯心論が倫理的、宗教的実践の文脈でいわれるときは、自発性をもつ精神の他への還元不能性が問題で、このとき、物質、生命は自然、肉体等として精神に対し、価値の対極をなすものと考えられる。

[松永澄夫]

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精選版 日本国語大辞典

ゆいしん‐ろん【唯心論】
〘名〙 物質に対する精神の根源性、独自性を主張する哲学の理論、立場。物質の実在を認めず、外界は主観の観念であるとする説。唯物論に対していう。観念論。〔哲学字彙(1881)〕

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