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唯物論【ゆいぶつろん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

唯物論
ゆいぶつろん
materialism
物質 (ラテン語 materia) を意識に対して根源的であるとし,感覚,知覚,表象など一般に人間の意識を客観的存在の反映としてみる物質一元論的世界観。したがって観念論とは根本的に対立する。古来唯物論は観念論と並んで哲学の発生以来さまざまな形をとって哲学史を貫いている。そのおもなものには前5世紀ギリシアの原子論者たち (レウキッポスデモクリトスなど) ,17世紀のイギリス唯物論 (R.ベーコン,T.ホッブズ,J.ロックなど) ,18世紀のフランス唯物論 (D.ディドロ,J.ラ・メトリ,C.エルベシウスなど) ,19世紀ドイツの生物学的唯物論 (K.フォークト,J.モーレショット,E.ヘッケルなど) が数えられる。 19世紀後半ヘーゲル左派より出たマルクスエンゲルスはこれらの唯物論が科学的成果に立っていることを評価しながらも,それらが虚妄な哲学的世界像を含んでいることを批判し,より科学的な弁証法的唯物論を提唱し,これが今日の哲学界では唯物論の最も大きなものとされている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

ゆいぶつ‐ろん【唯物論】
哲学で、精神的なものに対する物質的なものの根源性を主張し、精神的なものはその現象ないし仮象と見なす認識論的、形而上学的な立場。この考え方は古代のインド・中国や初期ギリシャ哲学にもみられるが、近代以後では18世紀のイギリス・フランスの唯物論、19世紀のフォイエルバッハの唯物論を経て、マルクスエンゲルスにより弁証法的唯物論として確立された。マテリアリズム。⇔唯心論。→観念論

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

ゆいぶつろん【唯物論 materialism】
一般に,唯心論,観念論に対して世界の根本的原理ないし実在を物質とみなす立場をいう。原語は,〈木材〉〈素材〉〈質料〉〈物質〉の意味のラテン語materiaにさかのぼるが,materia自身,〈母〉を意味するギリシア語mētēr,ラテン語materに由来し,かつギリシア語で〈形相〉〈形式〉に対して〈質料〉〈素材〉の意味をもつhylēのラテン語訳として用いられた。原語は17世紀の成立で,materialistという言葉はH.モアやR.ボイルさらにライプニッツによって使用された。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

ゆいぶつろん【唯物論】
物質を根本的実在とし、精神や意識をも物質に還元してとらえる考え。唯物論的思想は古代ギリシャ初期、中国・インドなどにも現れているが、近代以後では一八世紀フランスの機械的唯物論、一九世紀のマルクスの弁証法的唯物論などが代表的。マテリアリズム。 ⇔ 唯心論観念論

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

唯物論
ゆいぶつろん
materialism英語
matrialismeフランス語
Materialismusドイツ語
物質を第一次的、根本的な実在と考え、心とか精神を副次的、派生的なものとみなす哲学説をさすが、精神をただちに物質とするもの、物質(脳)の状態、属性、機能とするものなど、さまざまな立場を含んでいる。[加藤尚武]

用語

元来、哲学用語としては、世界の本性に関する存在論上の立場として、「唯物論」と「唯心論」を対立させ、認識の成立に関する認識論上の学説として、「実在論」と「観念論」を対立させるのが正しい用語法であるが、実際には「唯物論」は「観念論」の対語として用いられている。これは、根本的には、近世哲学において、唯物論―実在論的立場が、世界を構成する「物質的実体」に基づいて存在論という形で自己主張を行ってきたのに対して、観念論―唯心論的立場が、「思考するわれ」に基づいて認識論的に展開されてきたためと考えられる。また、「唯物論」を主張して、19世紀から20世紀にかけて非常に大きな影響力をもったエンゲルスが、用語法として「唯物論と観念論」という対語を用いていること、それを継承したレーニンが「誤解を招くもの」として「実在論」という用語を排斥したという事情もある。マルクス主義者は、物質の本性に対立物の統一を認めないラ・メトリらの立場を、しばしば機械論的唯物論とよび、19世紀後半に活躍したフォークト、モレスコット、ビュヒナーらの生物学的唯物論も、これに数える。[加藤尚武]

特徴

(1)科学主義 唯物論の根本主張は「存在するものはすべて物質的である」ということであるが、「物質」とは何かという点については、さまざまの立場がある。「物質」の特質としては多く、質料、不可入性、慣性などと一般に自然科学的に記述され、規定されるものが考えられる。唯物論者はおしなべて、その時代の自然科学の成果をもって哲学的な立場の根本に据えるという「科学主義」の態度をとっている。マルクス主義においては、物質を「われわれの意識から独立した客観的実在」とみなし(物質の哲学的概念)、物質についての科学的認識内容から原理的に区別している。しかし、その場合でも自然科学の成果に依拠するという「科学主義」に貫かれている。(2)決定論 この「科学主義」と関連して、唯物論には一種の「決定論」がある。すなわち「あらゆる物事の変化は、先行する物質的条件と、それを含む法則性をもとにして決定される」という、存在する事物に対する因果律の支配を認める考え方である。簡単にいえば、「何事にも原因がある」ということで、これにより人間の自由意志をまったく認めないか、さもなければなんらかの法則性に従うものとみる。マルクス主義では「自由とは必然性の認識である」として、法則的必然性の認識に基づく、法則性の技術的利用を人間の自由とみなしているが、この場合でも「法則に従う」自由であって、根本的には決定論とみなすことができる。(3)感覚論 こうした法則性の認識に関して、唯物論では感覚だけを認識の源泉として認める感覚論の立場をとる。これは、認識内容の源泉を物質的外界からだけ求め、内的、主観的なものの混入を排除しようとするためである。したがって、一般に、想像力に由来するもの、感覚的経験に依存しない先験的なものの役割は否定される。唯物論者エンゲルスがイギリスの経験論を評して「はにかみやの唯物論」と述べたように、唯物論は経験論とともに感覚論の立場をとるという点で近い。しかし、経験論では、感覚の原因として、それ自体としては非感覚的な実体(唯物論の認める「物質」)を認めるようなことはない。(4)無神論 存在するもののすべてが物質的であるとき、神とか精霊とかの非物質的存在は認められえない。しかも、世界の事象が物質的法則性によって決定されているとき、世界の変化をつかさどり、それに目的を与える神的なものは、説明の便法としても排除される。こうして、唯物論はつねに無神論のための強力な論拠となってきた。唯物論者はいずれも無神論者であり、思想史上両者を区別することはほとんどできない。[加藤尚武]

史的唯物論

物質的なものを根本的であるとみなし、それを自然科学によって認識された対象と同一視するのが自然科学的唯物論である。しかし史的唯物論の根本には、一定の社会関係にある「人間から切り離されて形而上(けいじじょう)学に改作された自然」を認めない考え方(マルクス)がある。自然科学的自然と、歴史に媒介された自然との統一的把握は、未解決の問題である。[加藤尚武]

歴史

唯物論という名称は18世紀に成立したものであるが、その考え方は初期ギリシア哲学にすでにみられる。デモクリトスの原子論によれば、原子と空間以外には何物も存在しない。世界のいっさいの事物の性質は、これらの事物を構成する原子の形、大きさ、位置およびその結合の粗密から説明される。いっさいの現象は原子の機械的な作用によって起こり、必然的に決定されている。霊魂の作用も、原子の作用の一種と考えられていた。ソクラテス、プラトン以後、さらに中世を通じて唯物論は衰退したが、近世に至り、F・ベーコン、ガッサンディを先駆者として、18世紀イギリス、フランスにはそれぞれ独自の唯物論が発展した。ドイツでは、ヘーゲルの観念論を批判したフォイエルバハがあり、その影響を受けて、マルクス、エンゲルスが弁証法的唯物論を確立し、今日の思想にも大きな影響力を失っていない。[加藤尚武]
『F・A・ランゲ著、川合貞一訳『唯物論史』上下(1948、1949・実業之日本社) ▽ルフェーブル著、森本和夫訳『マルクス主義の現実的諸問題』(1958・現代思潮社) ▽マルクス、エンゲルス著、廣松渉訳『ドイツ・イデオロギー』全2巻(1974・河出書房新社) ▽エンゲルス著、松村一人訳『フォイエルバッハ論』(岩波文庫) ▽レーニン著、寺沢恒信訳『唯物論と経験批判論』全2巻(大月書店・国民文庫)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

ゆいぶつ‐ろん【唯物論】
〘名〙 (materialism の訳語) 精神の実在を否定して、物質の根源性、独自性のみを主張する哲学の理論、または立場。宇宙の本質は物質であり、物質とは別物の霊魂・精神などは実在せず、意識は高度に組織された物質である脳髄の所産であり、認識は客観的実在である脳髄による反映であるとする説。唯心論(観念論)に対していう。いぶつろん。〔哲学字彙(1881)〕

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旺文社世界史事典 三訂版

唯物論
ゆいぶつろん
materialism
物質を根本的実在と考え,精神あるいは意識・観念なども物質から導きだされるとする考え方
唯心論あるいは観念論に対する言葉。18世紀後半のヨーロッパで使われるようになったが,歴史的にみれば古代ギリシアにまでさかのぼり,デモクリトスやヘラクレイトスらは物質を宇宙の根源ととらえた唯物論者であり,中世末期の唯名論も唯物論の性格をもっていた。近代にはいると,フランシス=ベーコン・ホッブズを先駆者とするイギリス唯物論,ディドロらを中心とするフランス唯物論をへて,ドイツのフォイエルバッハ,ロシアのゲルツェンらに継承され,マルクスとエンゲルスによって弁証法的唯物論に高められた。

出典:旺文社世界史事典 三訂版
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