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【つち】

日本大百科全書(ニッポニカ)

土(土壌)
つち
土は地面の表部を覆う自然物で、かつてその土地にあった岩石や砂礫(されき)の層が風化してできたものである。その色や硬さおよび乾湿の違いは、風化作用の原因となった気候の違いに由来し、植被の状態や人間の農耕と居住の営みなどの影響で、世界各地に特有の土がつくられた。地学的に土を研究する学問を土壌学とよぶ。[浅海重夫]
 人類は有史以前はるか昔から、土を用い、土とかかわって生活してきた。まず第一に、それは道具や装飾品を生み出すための素材であった。後期旧石器時代人は岩絵とともに粘土のレリーフ像を残したし、その後、新石器時代に入って世界各地に発生した土器の製作は、生活上有用な道具の誕生を意味するとともに、しばしば芸術ともいえる優美な作品を生み出すこととなった。石や骨のように利器としての価値はないが、可塑性の素材である土は、人間の創造力の自由な表現の対象の一つとなり、メソポタミアのように紙が発明される以前には、文字が粘土板の上に刻された例もある。また、地域によって土は住居の素材としても重要である。このほか、土はしばしば身体塗飾にも用いられている。赤土や白土が一種の顔料として塗られる場合もあるし、また衣服をもたない民族が、気温変化から身を守るために油を混ぜた土を身体に塗り付ける場合もある。土はしばしば呪術(じゅじゅつ)や占いの道具でもあり、たとえばアフリカでは土の上にビーズ玉や豆を投げて病気の原因を占ったりする「土占い」が多数みられる。
 中国の陰陽五行説のなかにみられるように、土を宇宙の構成要素の一つとする考え方も少なくない。また人類の創造に関して、最初の人間は土から生まれたとする神話も多い。たとえばメソポタミア人の伝承によれば、原初の人間は肉と骨と土からつくられた。『旧約聖書』のなかでもアダムは粘土からつくられたことになっている。
 人間と土との関係を考えるうえで、農耕のもつ意味は非常に大きい。それは人間の、きわめて直接的でかつ積極的な土への働きかけである。これは人間の信仰体系とも密接な関係を有し、一般に牧畜民族においては宗教は天界の神を中心として営まれる傾向が強いのに対し、多くの農耕民の宗教においては大地の神への信奉が重要部分を占める傾向がある。焼畑農耕民の多くは、畑を開く前に土地の神を祀(まつ)るし、日本の山地の焼畑でも、畑を開く前にその場所に注連縄(しめなわ)を張る所がある。大地は自然の再生、生殖力の源泉とみなされ、それゆえ大地の神はしばしば女性と結び付けられる。たとえばギリシアのデメテル、ローマのディアナ、インドのカリ、エジプトのイシスなどの諸神である。また、農耕作業を性行為に見立てることは、多くの文化にみられるところである。インドのある聖典のなかでは、大地は女性生殖器に、種子は精液に同一視されているし、「コーラン」のなかでも「汝(なんじ)の妻たちは汝の耕地である」と述べられている。それゆえ、農耕儀礼の一環として、大地の豊饒(ほうじょう)を促進するべく、儀礼的な性交やその模倣を行う文化も世界各地に存在する。一方、農耕を行わないか、あるいは行うにしても深耕を忌み嫌う民族のなかには、北米インディアンのある部族のように、大地を傷つけることを恐れるものもある。[瀬川昌久]

日本の民俗

建築をするとき地を画して地祭(じまつり)を行うことは全国一様である。地鎮祭(じちんさい)といって神職がきて地を清め、四方を固め、それが済むと地つきにかかる。福井県三方上中(みかたかみなか)郡若狭(わかさ)町常神(つねかみ)では新築に着手するときツチマツリをする。土地を塩で清め東西南北に幣(ぬさ)を立てて寺院の住職に拝んでもらう。火災にあった家では土を掘り取り清い山土と入れ換えることもした。地神(じがみ)、地主(じぬし)様を屋敷内に祀(まつ)っている例は全国各地にある。関東地方では簡単なワラミヤをつくって春秋の社日に祀っている。地神は土地の神であり、また先祖を祀ったものである。人が死んで33年か50年すると地神になるという。地神は土地の神なので、人が他へ移転しても地神はそこへ置いておく。島根県隠岐(おき)島では各戸で地主さんといって旧暦11月子(ね)の日に祀っている。やはり他へ移転しても地主さんは置いておき、祭日には他へ移った者も帰ってきて祭りに参加するという。地神の祭日にはどこでも土をいじることを禁じている。[大藤時彦]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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