@niftyトップ

辞書、事典、用語解説などを検索できる無料サービスです。

培養【ばいよう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

培養
ばいよう
culture
微生物,小型の植物,動物卵,ときには動植物組織の一部分や組織から分離した1個だけの細胞を,実験室などで育てること。そのためには人工的に温度,湿度,浸透圧,pH,栄養などの条件を制御しなければならない。栄養分は培養液もしくは培養基 (培地) として調製したものを与える。液体中に培養する場合,好気性のものは表面に発育し,いわゆる表面培養が行われるが,液を絶えず振動して培養することができるものもある。この方法は振盪培養といい,培養液の節約ができる。培養基 (固形培地) にはゼラチン寒天などを加え,目的によって試験管,シャーレ,エーレンマイヤーフラスコに分注して固めて用いる。この際,細菌などの嫌気性のものは,穿刺培養といって針で寒天に差込んで接種することがある。微生物などの保存を目的とする培養は,従来は綿栓を施した試験管に培養基を斜めに固めた斜面培養基を用いた。これは場所をとらないわりに表面積が大きいなど,便利な点もあるが,長期間の保存では乾燥したり,栄養分を用いつくして枯死するような不便も多い。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

ばい‐よう〔‐ヤウ〕【培養】
[名](スル)
草木を養い育てること。「花卉(かき)を培養する」「培養土」
動植物の胚や組織または微生物を人工的に生活・発育・増殖させること。「癌(がん)細胞を培養する」
物事の根本を養い育てること。「観察力を培養する」

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

ばいよう【培養 culture】
微生物,動・植物の細胞,組織,器官を人工的に生育,増殖させること。
【微生物の培養】
 微生物の生育に必要なブドウ糖のような炭素源,ペプトン硫酸アンモニウムのような窒素源,その他リン酸塩のような無機塩類,アミノ酸やビタミンのような生育因子などの栄養素を混合したものを培地culture mediumといい,微生物の培養に用いる。栄養素を水に溶かしたものを液体培地,それをゼラチンや寒天で固めたものを固形培地という。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

培養
ばいよう

動植物体あるいは動植物の胚(はい)より切り離された器官、組織、細胞などを人工的な環境のもとで生かし続け、発生あるいは増殖させたりすること。また微生物や原生動物の遺伝的に単一な集団を維持、増殖することも培養に含められる。微生物の培養では、他の種を混じえず一種だけ培養することを、純粋培養あるいは純培養とよぶ。培養は癌(がん)細胞を含め各種の組織細胞の生理・生化学的特質、細胞分化の機構、器官や組織の発育と細胞増殖、組織間の相互作用、組織構築の原理などの研究や、また薬物に対する細胞の反応性の検査、あるいは発生工学、遺伝工学などの基礎技術として、生物学、医学、薬学、農学で広く用いられている。培養は、その対象によりそれぞれ特有の方法が講じられているため、細胞培養、組織培養、器官培養と区別されるのが普通である。いずれにせよ培養の成功は、培養される対象が本来置かれていた環境にできるだけ近い環境を再現できるか否かによる。このため、シャーレ、フラスコをはじめ培養に使用される器具などは、細菌類の汚染を防ぐためすべて無菌化され、温度、光、気相(酸素、二酸化炭素の分圧など)も細心・緻密(ちみつ)な管理のもとに置かれ、細胞などが直接触れる液的環境は、体内での環境になるべく近いようにくふうされている。

[竹内重夫]

培養法と培養液(培地)

動物細胞はすべて、さまざまな物質群を溶かしているリンパ液あるいは血リンパ液中で生活しているので、これとよく似た組成をもつ液体がくふうされ、培養液(培地)として使用される。培養液は総じて細胞と浸透圧が同じ(等張)であること、適当な割合で無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)を含むこと、水素イオン濃度(pH)を7.2~7.4に維持できること、ブドウ糖をはじめアミノ酸類、ビタミンなど各種の栄養をバランスよく含むことなどを基本条件としている。このほか、培養液中に各種ホルモン、成長因子などが加えられることがある。

 植物細胞は細胞壁があり光合成により栄養を自給できるので、植物組織の培養には少量の無機塩類と簡単な窒素化合物を含む組成の単純なクノップ液などが、植物細胞の培養にはビタミンなど他の成分も加えた、より複雑な培養液(ムラシゲ‐スクーグ、リンスマイヤ‐スクーグなどの研究者が考案したもの)が用いられる。

 培養液は濾過(ろか)され無菌化して使用されるが、培養中の雑菌などによる汚染を防ぐためペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質が加えられるのが普通である。このように化学的性質がはっきりしている薬品類だけでつくられた培養液を合成培養液とか合成培地とよび、生物体から抽出し化学的な組成が不明の天然培地と区別する。現在までに、多くの研究者によりさまざまな優れた合成培地が処方されているが、完全に生体内の環境を再現しているものはまだできていない。細菌、植物の器官や組織、両生類の胚組織などは合成培地で培養可能な場合が多いが、動物の細胞や組織などは、合成培地のみで培養できる例はごくまれで、多くは5~20%程度の血清などを加えるのが普通である。このような血清を含んだ培養液でも、正常な組織から取り出したばかりの細胞の性質、機能をそのままに培養し続けることはむずかしい。このため、継代培養され商品化されている細胞の多くは、哺乳(ほにゅう)動物の癌化した組織か、胚の組織から得られたものである。このように継代培養される培養細胞はなにか特別の性質をもつ細胞として、正常な組織細胞から区別されることがある。胚の細胞でも、中胚葉起源の繊維芽細胞は、ほかの組織細胞に比べて培養細胞になりやすい傾向がある。動物の細胞培養では、培養中その代謝作用により培養液が酸性になるのを防ぐため、二酸化炭素と重曹による緩衝作用を利用することが多く、このため空気中の二酸化炭素を5~10%のレベルに保つ培養装置が用いられる。

 組織培養、器官培養にはさらに別な条件が要求される。組織、器官を構成する数種の細胞の三次元的な配列を乱さず、組織、器官の統一性を維持する支持体が必要である。このため、培養液に寒天を加え適当な固さにしたものや、凝固した血漿(けっしょう)など固形培地とよばれるものを使うことがある。また、レンズペーパー(長いセルロース繊維を緩く漉(す)いたもの)、メンブランフィルター(セルロースとセルロースアセテートの混合物で、小孔が多数ある)、コラーゲン・ゲル(動物結合組織にあるタンパクのコラーゲンをゲル化したもの)などを支持体として用い液体培地内で培養されることもある。この際、血管による栄養補給のできない組織や器官片の内部に、つねに新鮮な培養液を供給し老廃物を除去するため、培養液が培養片の周囲を流れるように、培養中の試験管などを回転させる回転培養法、あるいは高速回転培養法などが採用されることがある。また、酸素の十分な供給のため酸素分圧を高めた空気を流すようなことも行われる。しかし、これらのくふうにもかかわらず、動物体から切り出した組織なり器官の培養は十分な成功を得るまでに至っていない。一方、植物の細胞では、単離された1個の細胞を培養、増殖させ、それから新しい個体、すなわちクローン植物をつくりあげることに成功している。最近いろいろな性質をもつ細胞を融合させ細胞の雑種をつくりだす技術が細胞工学の一手段として利用されている。たとえば培養細胞の増殖しやすい性質を、特別な抗体をつくりだす細胞に導入して大量に増殖させ、単一の抗体を入手するのに利用するなどがその例である。

[竹内重夫]

『岡田節人著『試験管のなかの生命――細胞研究入門』(岩波新書)』『ミシェル・シゴー著、水野丈夫訳『発生のしくみ』(白水社・文庫クセジュ)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

ばい‐よう ‥ヤウ【培養】
〘名〙
① 草木を育て養うこと。
※玩鴎先生詠物雑体百首(1794)蕭寺菊「叢菊多時培養加、秋風果媚満籬花」
② 物事の根本を養い育てること。根本精神を養うこと。
※翁問答(1650)上「全孝のみちをくちにかたり身におこなひて、をしへの根本を培養(バイヤウ)すべし」 〔朱熹‐鵝湖寺和陸子寿詩〕
③ 微生物や動植物の組織の一部などを人工的に生育・増殖させること。
※一年有半(1901)〈中江兆民〉附録「是れ又土溝の中に掃き込みて、亦黴菌の培養に加功するを常とせり」

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

培養」の用語解説はコトバンクが提供しています。

培養の関連情報

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.

アット・ニフティトップページへ アット・ニフティ会員に登録

ウェブサイトの利用について | 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation