●塼【せん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
塼
せん
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世界大百科事典 第2版
せん【塼 zhuān】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
塼
せん
中国で焼成される立方体あるいは直方体の煉瓦(れんが)で、専、甎、磚とも書く。立方体のものは方塼、直方体のものは条塼あるいは長方塼の名があり、内部が中空のものを空塼または坑塼という。黒色か灰色を呈し、空塼は中国では戦国時代から墓室の構築に用いられ、このような墓は塼室墓とよばれる。方塼は床に敷くほか、秦(しん)・漢代以降は表面に文字や文様を刻んで壁面に用いたものがあり、唐代には浮彫りによる蓮華(れんげ)文や宝相華(ほっそうげ)文などの装飾が施された画像塼が出現する。もっとも一般的なものは条塼で、前漢末から城壁・家屋・墓室の構築に用いられた。わが国へは朝鮮から導入され、仏教建築の建立に伴い、基壇側面の化粧積みや床面に瓦(かわら)とともに利用された。これらのなかで壁面に用いたものとしては、奈良の岡寺出土の天人文塼・葡萄唐草(ぶどうからくさ)文塼・鳳凰(ほうおう)文塼が著名で、同じく川原(かわら)寺出土の緑釉(りょくゆう)波文塼は須弥壇(しゅみだん)上に蓮池(れんち)として敷かれたと考えられて注目される。
ほかに画像塼として塼仏がある。中国南北朝時代から三尊仏・五尊仏・千体仏などが制作されたが、わが国では奈良の川原寺・橘(たちばな)寺、三重の夏身廃寺(なつみはいじ)出土の三尊仏や五尊仏が代表的遺例で、千体仏では独尊・四尊・十二尊の形式がみられる奈良の山田寺出土のものが名高い。とくに山田寺出土の千体仏は独尊のスタンプが押し並べられ、上に金箔(きんぱく)をはって壁面を華麗に飾ったものと推定されている。
[工藤圭章]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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