●天敵【てんてき】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
天敵
てんてき
natural enemy
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デジタル大辞泉
てん‐てき【天敵】
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世界大百科事典 第2版
てんてき【天敵 natural enemy】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
天敵
てんてき
ある生物を攻撃して殺すか繁殖能力を低下させる他種の生物で、一般には害虫や雑草など有害生物の個体数を低下させる有益生物をいう。天敵には次の種類がある。
[森本 桂]
有害動物の天敵
(1)寄生性天敵 生活の、ある時期を寄主である有害動物の体内で過ごしてこれを殺すか、または産卵数を減少させるもので、ノミやダニのように寄主の寿命や繁殖力に影響を与えない真の寄生虫と区別して、捕食寄生虫とよばれる。これには寄生バチ(ヒメバチ、コマユバチ、コバチ、タマバチ、ツチバチなど)、寄生バエ(ヤドリバエ、アタマアブなど)、寄生線虫などがあり、一頭の寄主を食べて育ち、種類ごとに寄主が決まっているものが多い。
(2)捕食性天敵 これは自分自身で餌(えさ)を探し、一生の間に一頭以上の有害動物を食べるもので、テントウムシ、ヒラタアブ、クサカゲロウなどがアブラムシやカイガラムシを捕食し、オサムシ、アリ、カマキリ、クモなどは多くの昆虫を餌とし、トカゲ、カエル、鳥なども捕食性天敵である。
(3)病原微生物 伝染性の病気をおこさせるウイルス、細菌、糸状菌、線虫などで、マイマイガ、マツカレハ、アメリカシロヒトリなどの多角体病、結晶性毒素を産出する芽胞(がほう)細菌の一種Bacillus thuringiensis、コガネムシ幼虫の防除に利用される黄(おう)きょう菌などがある。
[森本 桂]
雑草の天敵
(1)食植動物 雑草を食物とする動物で、ハムシ、ゾウムシ、ソウギョ、カブトエビなどである。
(2)病原菌 雑草に病気をおこさせるもので、さび病菌の一種で報告がある。
[森本 桂]
天敵による有害生物防除
これは一般に生物的防除とよばれるが、病原微生物による防除は方法が異なることから微生物的防除といわれる。その方法は三つに大別される。
(1)永続的天敵利用法 侵入害虫に対してその原産地から、また土着害虫も含めて原産地以外から天敵を導入するもので、導入天敵が永続的に有効に働くことを目的とし、1940年ごろまでは生物的防除の基本的な方法であった。イセリヤカイガラムシを捕食するベダリヤテントウ、ルビーロウカイガラムシに寄生するルビーアカヤドリコバチ、クリタマバチに寄生するチュウゴクオナガコバチなど多くの例がある。
(2)一時的定着法 天敵密度の低い害虫発生初期にこれを放飼したり、越冬できない天敵を春になって放す接種的放飼法と、人工増殖した天敵を大量に放す生物農薬的な利用法がある。前者の例としてマツバノタマバエに寄生するマツタマヤドリハラビロコバチ、後者の例としてオンシツコナジラミやクワコナカイガラムシの寄生バチがある。
(3)環境改良法 環境に人手を加えることによって天敵が有効に働くことを目的とするもので、代替寄主の加害する植物の混植や条(すじ)刈りなどによる天敵の温存、寄生バチの活動を高める蜜源(みつげん)植物の導入、天敵の活動を妨害するアリの駆除などの方法がある。これにはさらに、天敵に影響の少ない農薬の使用や、害虫を遺伝的に操作するような総合防除までも包含させることがある。その実例として、パセリ、ニンジン、野生のセリ科植物などを蜜源植物として導入することでコガネムシ幼虫に対するコツチバチの寄生率を高めたり、ミカン園にマメ科植物を植えることでその花粉も食べるハダニの天敵カブリダニを温存することや、牧草を帯状に順次播種(はしゅ)して収穫することで天敵を残す方法がある。また、果樹園では一列おきに殺虫剤を散布したり、周囲の生け垣に代替寄主のつく樹木を用いることで、カイガラムシの寄生バチや捕食虫を温存する方法が行われている。
[森本 桂]
微生物的防除
病原微生物は温度や湿度など環境の影響を強く受けるが、大量生産の可能なものが多いことから生物農薬的な利用が主となり、林地では短期間の流行を目的とした使用も行われている。日本では養蚕地域が広いことから、これら病原天敵はカイコに影響がないことが第一条件とされ、寄主範囲の限られたウイルス病、伝染範囲の狭い糸状菌、種特異的な毒素をつくるBacillus thuringiensisの系統が利用されている。これらは散布から有効に働くまでにある時間が必要であることから、集約的な農業体系のなかでは速効のある殺虫剤のようには利用できないが、被害許容水準の比較的高い樹木や殺虫剤散布のできない牧草地などでは効果的に利用され、マツカレハ、ハラアカマイマイ、マイマイガなどの幼虫に対して多角体ウイルスの空中散布が行われており、試験的には多くの害虫防除に成功している。
[森本 桂]
雑草の生物的防除
オーストラリアへ侵入したウチワサボテンにサボテンガを、またカリフォルニアの牧草地に広がったコゴメオトギリソウにオトギリソウハムシをそれぞれの原産地から導入して防除に成功して以来、帰化植物に対して原産地から食植昆虫の導入が本格的に研究され始めたが、人為環境下で害草化した土着植物に対する土着昆虫の利用も考えられている。日本では草地の造成で拡大したエゾノギシギシに土着のコガタルリハムシを放飼して制圧に成功し、また水田の雑草防除にカブトエビが有効なことが確かめられている。
[森本 桂]
『深谷昌次・桐谷圭治編『総合防除』(1973・講談社)』▽『平嶋義宏他著『新応用昆虫学』(1986・朝倉書店)』▽『石井象二郎編『昆虫学最近の進歩』(1981・東京大学出版会)』▽『村上陽三著『害虫の天敵』(1982・ニュー・サイエンス社)』▽『安松京三著『天敵 生物制御へのアプローチ』(1970・日本放送出版協会)』
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精選版 日本国語大辞典
てん‐てき【天敵】
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