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学校心理学【がっこうしんりがく】

日本大百科全書(ニッポニカ)

学校心理学
がっこうしんりがく
school psychology

学校心理学とは

これまで蓄積、発展させてきた教育心理学、発達心理学、臨床心理学などの知識や諸原理・方法を用い、学校や家庭において、児童・生徒が直面している学習・発達上の諸問題(学習不振や学習障害等)、学校生活での適応上の諸問題(いじめ、不登校、虐待等)の解決に役立たせることを指向している心理学の新しい一分野。研究の対象・領域は、教育心理学とかなり重なるが、教育心理学が、児童・生徒の学習や発達の諸過程に認められる、より一般的な合法則性を明らかにすることを指向しているのに対して、学校心理学は、学校・家庭・社会生活で、現実に困難な問題に直面している子供たちを支援する立場から教育と研究を行う。
 問題を抱える子供たちに心理学の立場から援助サービスを行う専門家を、アメリカ等多くの国ではschool psychologists、イギリスおよびイギリス圏の文化をもつ国や地域(ニュージーランド、香港等)ではeducational psychologistsとよんでいる。日本では「学校心理士」という用語を用いている。ただし、日本では学校心理士は、まだ高度な心理学専門職としての社会的認知が得られておらず、たとえ学校心理士として十分な力量があると認定されてもそれに見合った職が用意されているわけではない。今日、学校心理士は、教育相談や特別支援教育等を担当したり、非常勤のスクールカウンセラーとして学校に派遣されている場合が多い。そこでは特定の児童・生徒が抱える問題を解決するために、クラスの担任教師、その他の教師、専門家とチームを組み、より適切な心理教育的援助サービスを行うことが求められている。[天野 清]

学校心理士の養成と資格認定

この専門家の養成には、大学院修士課程のカリキュラムの充実と改善が必要とされた。そこで、日本教育心理学会のなかに、学校心理学実行委員会が設置され、毎年総会時に各大学院の担当者と協議が行われた。そして大学院修士課程で、(1)教育心理学、(2)発達心理学、(3)臨床心理学、(4)教育評価・心理検査(実習を含む)、(5)学校カウンセリング(実習を含む)、(6)障害児の教育と心理、(7)生徒指導・進路指導の各領域の授業を含むこととされた。また、その各領域にわたって必要な単位を修得した場合は、教員の専修免許状に、主たる専攻分野として、「学校心理学」の名称を付記することができるように、都道府県教育委員会と交渉する運動が1990年(平成2)より始められた。その結果、1993年度に、大阪教育大学で学んだ院生に「学校心理学」と付記された最初の専修免許状が授与された。1992年3月までに、29大学、20道府県教育委員会が協議を終え、学校心理学の発展に向けて新しい体制がつくられることになった。
 しかし、この方法だけに限ると、すでに大学や教育相談センター等で学校心理学の実践に携わり、十分な実績をもっている者に学校心理士の資格を認定することができないことになる。そのため、1997年より日本教育心理学会が中心となって学校心理士の資格認定の業務を始め、さらに2002年度(平成14)から、日本教育心理学会、日本特殊教育学会、日本発達障害学会、日本発達心理学会および日本LD(学習障害)学会を母体とする、学会連合資格「学校心理士」認定運営機構(2011年4月に一般社団法人化)が組織された。そして、2007年度から日本学校心理学会、日本応用教育心理学会、日本生徒指導学会、日本学校カウンセリング学会が、2010年度からは、日本コミュニケーション障害学会、日本学校メンタルヘルス学会も、この認定事業に参画することになった。これらの経緯を踏まえて、学校心理士の養成と資格認定の仕事は社会に広く開かれたものとなり、学会に所属していなくても、また、学校や教育センター、教育相談所等で長く相談業務に携わってきた教師等でも、資格認定の申請を行うことができるようになった。これまで認定された学校心理士は、2011年1月段階で、4000名を超えている。1999年には日本学校心理士会が発足し、地域ごとにその支部をもち、ニューズレターを発行するとともに、専門的力量を高めるための種々の研修会が組織されている。
 なお、2011年度以降の大学院入学者と2012年度の資格認定からは新基準が適用されることになった。新基準では、大学院で学ぶ(1)学校心理学、(2)教授・学習心理学、(3)発達心理学、(4)臨床心理学、(5)心理教育的アセスメント、(6)学校カウンセリング・コンサルテーション、(7)特別支援教育、(8)生徒指導・教育相談、キャリア教育の8領域と、二つの基礎実習科目(1)心理教育的アセスメント基礎実習、(2)学校カウンセリング・コンサルテーション基礎実習を修得することが求められている。[天野 清]
『石隈利紀著『学校心理学――教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス』(1999・誠信書房) ▽天野清著『学習障害の予防教育への探求――読み・書き入門教育プログラムの開発』(2006・中央大学出版部) ▽学校心理士資格認定委員会編『学校心理学ガイドブック』第2版(2007・風間書房)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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デジタル大辞泉

がっこう‐しんりがく〔ガクカウ‐〕【学校心理学】
学校生活において児童生徒が直面する学習・生活・発達上の問題状況への対応と解決を援助する心理教育的援助サービスの理論実践を支える学問体系。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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最新 心理学事典

がっこうしんりがく
学校心理学
school psychology
学校教育に心理学的な知見を取り入れ生かそうという試みは,いろいろな形で行なわれてきた。その一つとして,石隈利紀(1999)は「学校教育」と「心理学」を統合する学問体系として学校心理学を提唱した。その定義については「学校教育において一人ひとりの児童・生徒が学習面,心理・社会面,進路面における課題への取り組みの過程で出会う問題状況の解決を援助し,成長を促進する心理教育的援助サービスの理論と実践を支える学問体系である」とされる。心理教育的援助サービスは,教師と学校心理学の専門家(スクールカウンセラーなど)が保護者と連携して行なうものであり,以下に示す3段階の援助サービスからなる。まず,入学時のオリエンテーションやソーシャルスキルを高めるための授業実践など,すべての子どもを対象とする促進的・開発的活動(1次的援助サービス),そして次に,援助ニーズの大きい一部の子どもに対して主として担任教師が行なう予防的サービス(2次的援助サービス),さらに,不登校・いじめ・発達障害・非行など,特別な援助ニーズをもつ子どもを対象としてスクールカウンセラーなどを交えた援助チームで行なう活動(3次的援助サービス)である。また,その対象も子ども・家庭(保護者や家族)・教師から学級・学校という組織までも含む。つまり,学校心理学は,子どもの適応面や進路面だけでなく学習面や発達面までも含めた幅広い援助を包含しているといえる。

 具体的な実践としては,①子どもと子どもを取り巻く環境理解のための心理教育的アセスメント(子どもが課題に取り組むうえで出会う問題や危機の状況についての情報の収集と分析を通して,心理教育的援助サービスの方針や計画を立てるための資料を提供するプロセス),②直接的な援助サービスとしてのカウンセリング,③間接的な援助サービスとしての,教師・保護者へのコンサルテーション(異なった専門性や役割をもつ者同士が子どもの問題状況について検討し今後の援助のあり方について話し合うプロセス),④連携を通してのチーム援助,⑤学校組織へのコンサルテーション,⑥心理教育的援助サービスのコーディネーションという多岐にわたっている。

 学校心理学の活動内容としては,①学校教育相談(学級担任による学校教育相談,教科担任による学校教育相談を生かした授業,教育相談係による学校教育相談,養護教諭による相談活動など),②障害のある子どもの特別なニーズに応じる教育(障害のある子どもへの心理教育的援助サービス,個別教育計画(IEP)に基づく教育,学習障害(LD)の子どもの支援など),③適応指導教室(現,教育支援センター)における教育(不登校の子どもに対して学習面,心理・社会面,進路面にわたる幅広い心理教育的援助サービスが展開されている),④スクールカウンセラー活動の4領域がある。2000年代に入り,教師に対する教育相談ニーズはますます増大し,発達障害を抱える子どもを含め,特別なニーズをもつ子どもたちを正しくアセスメントする力量が必要とされるようになっている。それとともに学校現場には,スクールカウンセラーをはじめ,学習支援員,介助員,スクールソーシャルワーカーなど多くの支援者が投入されるようになった。こうしたさまざまな支援者と教師とが連携協力しながら新しい学校教育サービスがめざされている。多様化し複雑化する子どもたちの課題に応えるためにも,教師,養護教諭,スクールカウンセラーを含めた校内でのチーム支援体制とともに,学校と家庭,そして専門機関・支援機関とが連携ネットワークを組むことが必要とされている。 →心理アセスメント →スクールカウンセラー →生徒指導
〔伊藤 美奈子〕

出典:最新 心理学事典
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