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完全習得学習【かんぜんしゅうとくがくしゅう】

ナビゲート ビジネス基本用語集

完全習得学習
学習者のほぼ全員が教育内容を完全に習得するための学習理論。「出来不出来の差は、学習者個人の資質によるものではなく、学習に必要な時間をかけなかったことによる」という考え(キャロルの時間モデル)に基づいて、ブルームが提唱した。 具体的には、学習の過程でテスト(形成的評価)を行い、学習者が教育目標を達成できているかを確認する。達成できていない学習者に対しては、補充教材を与えたり個別に指導を行う。これを繰り返すことで、完全な習得を目指す。 マスタリー・ラーニング、習熟学習とも呼ばれる。

出典:ナビゲート
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かんぜんしゅうとくがくしゅう
完全習得学習
mastery learning
一人の教師が多数の生徒を教える一斉指導では,授業のスピードについていけない,いわゆる落ちこぼれの生徒が生じやすい。完全習得学習は,このような一斉指導の問題点を解決するために,大多数の生徒に一定水準の学習内容を習得させることをめざしてブルームBloom,J.S.が提唱した理論と方法を指す。

【理論的背景】 完全習得学習は,一般にキャロルCaroll,J.A.(1963)に始まり,ブルーナーBruner,J.S.,ブルーム,グレーサーGlaser,R.らの支持を得て発展したとみなされている。しかし,エーベルEbel,R.L.によれば,それより50年前のモリソンMorison,H.C.の構想が背景になっているという。すなわちモリソンは,すでに20世紀の初頭に,「教授→テスト→再教授→再テスト」という方法を用いることによって,すべての生徒を教育目標に到達させることが可能だと主張していた。しかし,このモリソンの構想は一時注目されたものの,やがて衰微し,長い間忘れられていた。それをキャロルが再評価し,完全習得学習として復活させたのである。

【理論と方法】 キャロルの完全習得学習の理論は,その当時一般的であった適性についての考え方とは相反する考え方に立脚している。すなわちキャロル(1963)は,「適性とは学習課題をするのに学習者が必要とする時間の量である」と定義し,「もし十分な時間が与えられれば,学習者はだれもが学習課題を習得することができる」と主張した。この主張は,次の四つの仮説から構成されている。すなわち,⑴学習者の数学・理科・社会科など教科に対する適性は正規分布に従うと仮定できる。⑵したがって,教材の質と量・学習時間などがまったく均一な一斉指導を行なえば,適性と成績は高い相関(0.70以上)を示すであろう。⑶しかし,教材の質と量および学習時間を学習者の適性に応じて変化させれば,大多数の学習者に学習内容を習得させることが期待できる。⑷したがって,適性と成績の相関は限りなく0に近づき,成績の分布は通常の正規分布ではなく,幅の狭い(分散の小さな)分布になるはずである。

 ブルームは,このキャロルの仮説を支持し,キャロルの考えを一斉指導の形式において実現するために,次のような授業設計に基づく完全習得学習を提案・実践した。⑴各単元ごとに教育目標の詳細な分析と授業内容の具体化を行ない,学習内容と行動を縦・横に配列した教育目標の細分化表を作成する。算数の「百分率と歩合」の単元を例に挙げれば,「用語・記号の知識」(百分率とは割合をパーセントで表わしたものであることをいうことができる),「概念の理解」(X%という場合には,基にする量が100で,比べられる量がXであることがわかる),「原理・法則の知識」(集団の中の一部分の資料がしだいに大きくなれば,その割合は一定の値に近づくことがわかる),「手続きを利用する技能」(四捨五入の手続きが正しくできる),「変換」(小数を百分率に変換できる),「応用」(a,bがわかっているとき,cを百分率で求めることができる)のように,「学習内容」×「行動」のマトリクスを作成する。⑵各単元の指導を始める前に診断的評価を実施し,学習者のレディネス(学習の前提条件)を学習者個人ごとにもクラス全体としても把握しておく。この診断的評価の結果に基づき,必要であれば学習者のグループ分けやクラス分けを行なう。⑶単元ごとの到達目標を学習者に提示し,動機づけや学習の持続力を高めるようにする。⑷指導過程では,一斉指導の後にきめ細かく形成的評価を実施し,目標の到達度を学習者にフィードバックする。この形成的評価は単なる小テストではなく,単元全体の問題を網羅しているので,学習内容のどこが習得できているか,どこが習得できていないかを把握することができる。⑸形成的評価に基づいて一斉指導の方法を修正したり,必要があれば教育目標への到達が不十分だと評価された学習者には個別または少人数による補充学習に取り組ませる。なお,補充学習では,小集団を編成して学習者同士に教え合いをさせたり,教師が個人指導をしたり,視聴覚教材を用いたり,プログラム学習を導入したり,というように,利用可能なあらゆる方法を活用する。また,形成的評価で教育目標に十分到達していると評価された学習者には,発展学習コースで,その単元の内容についての理解を深化・発展させるための学習に取り組ませる。⑹各単元の指導が終了した段階で総括的評価を実施し,指導の成果を最終的に確認するとともに,次の単元の指導のための参考資料を得る(図)。

【意義と問題点】 完全習得学習の理論は,すべての子どもに一定水準の学力を保証するという高邁な教育理念の実現をめざす理論であるが,単なる理想論ではなく,到達目標の具体化,診断的評価,適性処遇交互作用,形成的評価など教育方法上の創意を伴った実践的理論でもある。そのため,教授学習および教育評価の理論の発展に大きな影響を及ぼし,今日の学校教育で重視されている「すべての子どもたちへの支援」「個に応じた指導」「指導と評価の一体化」などの教育理念の多くは,完全習得学習の理論に端を発している。しかし,完全習得学習を完全な形で実施しようとすれば,教師の負担が著しく増大するため,すべての授業で完全習得学習の方法を適用するのは現実的とはいいがたい。また,完全習得学習は,すべての学習者を共通の教育目標に到達させることをめざす教授法であるため,教育目標を具体化することが可能なスキル中心の学習の場合に有効な教授法だと考えられている。したがって,教育目標の具体化が難しい教科の学習や,多様な個性の学習者が交流することによって理解が深まる理解・思考中心の学習の場合には,交流型学習など他の教授法を併用する方が効果的であろう。 →教育評価 →教授学習 →適性処遇交互作用
〔森 敏昭〕

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