●実在論【じつざいろん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
実在論
じつざいろん
realismus
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デジタル大辞泉
じつざい‐ろん【実在論】
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世界大百科事典 第2版
じつざいろん【実在論 realism】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
実在論
じつざいろん
realism
哲学上のリアリズムrealismの訳語。認識論の考え方で、意識、主観とは独立の客観的存在を認め、それを正しい認識の目的、基準とする立場。観念論と対立するが、普遍概念の実在を認める意味での実在論はかならずしも観念論と対立しない。すなわち、個々の机や三角形の図形などの個物に対して、机一般、三角形一般などの抽象的普遍概念の実在を認める立場も実在論とよばれるときがある。しかし、それは経験的実在としての個物とは異なった、超越的、観念的対象を認める点では観念論的である。そこで、この傾向には、個物以外に普遍の実在を認めない唯名(ゆいめい)論に対立する用語としての「実念論」という名称が適切である。普遍の問題を別にして、実在論には次のような立場と問題が指摘される。
〔1〕素朴実在論 知覚、経験をそのまま実在と考える立場。素朴な形而上(けいじじょう)学的唯物論などにみられる傾向だが、心理的な「錯覚」などに基づく直接所与(しょよ)の主観性、相対性を理由に疑問視されることがまれでない。
〔2〕科学的実在論 色、匂(にお)い、寒暖などの主観的な第二性質の背後に、実在の客観的性質として物理的な延長、固体性、運動などの第一性質を考える傾向(ガッサンディ、ロックら)があり、認識の近代科学による説明と物質の機械観的な考察の進展に応じて有力となった。しかし、経験的対象としては、第一性質が第二性質と同様に主観と相対的なことも明らかであり、延長や運動それ自体は経験からの抽象の所産である。しかも、科学的探究は実在的性質の定義を不断に変化させる。以上の点で、この立場も問題をもつ。
〔3〕カントとそれ以後の立場 そこで、さらにカントは第一性質も含めた経験的認識の全対象を「現象」として、その背後に認識の可能性を超えた「物自体」を想定した。カント以後の多様な実在論の立場は、物自体という問題の概念をめぐって生まれたともいえる。さらに19世紀から20世紀にかけて、ヘーゲルを頂点とするドイツ観念論への反動、批判として、全ヨーロッパに多彩な実在論、実証主義の立場が生じた。カントをいちだんと実在論的に解釈しようとする新カント学派のある者(A・リール、N・ハルトマンら)、唯物論、模写説を主張しながらも、素朴実在論と客観の静的な認識という考えを捨てて、動的な科学的実在論の立場をとる弁証法的唯物論などがその例である。
〔4〕現代英米哲学の実在論 以上のヨーロッパ大陸、とくにドイツを中心とした流れのほかに、英米に有力な現代実在論がある。すなわち、20世紀初頭のケンブリッジ分析学派(ラッセル、ムーア、ウィットゲンシュタインら)は、イギリス・ヘーゲル学派の観念論への批判として台頭し、アメリカの現代実在論とともに新実在論とよばれる。後者は共同論集『新実在論』The New Realism(1912)を刊行したペリー、スポールディングら6人の見地で、彼らはプラグマティズムの真理観も主観的と考え、抽象的対象も含めた広義の客観が意識から独立であることを認め、それと外的関係において認識は成り立つと考えた。以上は一括して批判的実在論ともいわれるが、この名称は、狭くはイギリスのヒックスと、とくに『批判実在論論集』Essays in Critical Realism(1920)を共同研究の成果として刊行した7人のアメリカ哲学者(サンタヤーナ、ラブジョイら)をいう。彼らは主観主義の誤謬(ごびゅう)を指摘するとともに、ペリーらの極端な実在論も批判し、知覚作用、性質複合としての所与、知覚の対象の三者の区別と存在を認める。
プラグマティズムも一種の経験的実在論といえるが、さらにケンブリッジ分析学派の影響を受けた論理実証主義、また同学派のムーアと、後期ウィットゲンシュタインの流れをくむイギリス日常言語学派の傾向は、経験的実在論としてもきわめて重要な論点を宿す。論理実証主義は、実在論と観念論および両者の対立そのものが、言語の用法の混乱から生ずる形而上学的擬似問題と考える。また後期ウィットゲンシュタインは、外的対象の実在の確実性はもはやその証拠の底がつき、正当化を不要、不可能とする生(せい)の根源的形式と考える。また日常言語学派のなかには、哲学用語による非日常的な抽象的概括化を離れれば、経験的対象の実在を認める常識的立場を自然と考える者、オースティンのように「錯覚」による実在論の批判を不当とする見地もある。
前記の傾向の意義としては、以下のような点があげられる。(1)常識哲学の実在論の洗練であり、(2)経験の背後の原理的に非経験的な実在との関係を論ずる、伝統的傾向の根本的難点を排し、(3)概念実在論のように科学的諸性質や法則を実体化せずに、それらを経験から抽象され構成された記号体系と考える。とくにプラグマティズムは、この種の契機を経験理解のための道具、手段とみる柔軟で融通の効く観点をとっている。
[杖下隆英]
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精選版 日本国語大辞典
じつざい‐ろん【実在論】
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旺文社世界史事典 三訂版
実在論
じつざいろん
realism
個物を実在とし,普遍を名目にすぎないとする唯名 (ゆいめい) 論と対立,普遍論争を展開した。11世紀のアンセルムス・ドゥンス=スコトゥスが代表。
出典:旺文社世界史事典 三訂版
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