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小腸腫瘍【しょうちょうしゅよう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

小腸腫瘍
しょうちょうしゅよう
tumor of the small intestine
原発性の小腸腫瘍は比較的少く,日本では消化管腫瘍全体の1%前後である。悪性腫瘍では癌腫が最も多くて過半数を占め,ほかに肉腫カルチノイドなどがある。一般的に癌腫は上部小腸に多く,十二指腸 40%,空腸 38%,回腸 22%という統計がある。肉腫は下部小腸ほど多い。良性腫瘍腺腫が最も多く,脂肪腫,筋腫,線維腫,血管性腫瘍,神経性腫瘍の順となっており,これらの大部分は無症状に経過する。腺腫は回腸に最も多く発生し,十二指腸,空腸の順になる。十二指腸腺腫の半数は粘膜下組織に存在する粘液腺であるブルンネル腺の腺腫である。脂肪腫は回腸に発生しやすい。治療には,病巣部切除と,必要に応じてのリンパ節郭清が行われる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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内科学 第10版

小腸腫瘍(腸疾患)
 小腸は解剖学的に幽門輪から回盲弁までの消化管であり,十二指腸,空腸,回腸に分けられる.小腸における腫瘍の発生頻度は比較的低く(全消化管の腫瘍の5%以下),また従来の内視鏡では検査が困難であったことから手術または剖検時に偶然発見されることが多かった.しかし,2000年以降カプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡という2つの新たな小腸内視鏡検査法が開発され,小腸全域にわたる内視鏡観察が可能となり,小腸腫瘍が発見される機会が増えている.
発生頻度
・臨床症状
 小腸腫瘍は悪性腫瘍の初期,良性腫瘍では無症状のことが多く,正確な発生頻度は不明である.発見される契機となる症状は下血,腹痛,腸閉塞による閉塞症状,腸重積による間欠的腹痛,嘔吐などである.
 2000年9月から2011年7月にわれわれの施設でダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行した 1285症例(2706件)のうち,小腸腫瘍と診断されたのは148例で,悪性は73例,良性は75例であった.悪性腫瘍73例の内訳は,悪性リンパ腫33例,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)13例,小腸原発癌11例,転移・浸潤性小腸癌15例,カルチノイド1例であった.詳細を表8-5-13に示す.
分類
 腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられるが,悪性腫瘍には小腸原発のものと他臓器からの浸潤や転移によるものがある.十二指腸の癌は乳頭部に生ずるものが多いが,乳頭部胆管・膵管,膵頭部癌と臨床病理学的共通点が多く,発生母地の同定も困難であるため膵頭部領域癌,乳頭部癌として別に取り扱われる場合が多い.
 小腸腫瘍の特徴として腺腫,癌などの上皮性腫瘍に対し,非上皮性腫瘍の占める割合が胃や大腸と比べて高いことが知られている.小腸原発の悪性腫瘍としては悪性リンパ腫,GIST,癌がおもなものであり,この3つの腫瘍で約90%を占める.
1)悪性リンパ腫:
消化管悪性リンパ腫は節外性リンパ腫のなかで最も頻度が高い.消化管のなかで最も頻度の高い臓器は胃であり,小腸がそれに次ぐ.一方原発性小腸腫瘍のなかではリンパ腫は癌,GISTと並んで高頻度であり,なかでも回腸に多い.性別では男性優位の報告が多く,多発性やびまん性の症例も多く認められる. 小腸では胃や大腸に比しT細胞性リンパ腫が多いとされているが,頻度はやはりB細胞性リンパ腫の方が高く,80%以上を占めている.そのなかではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)が最も多く,ついでMALTリンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma)が多い.マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)や濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)は原則的に節性のリンパ腫であり,消化管原発のものはまれと考えられてきたが,最近の小腸内視鏡検査の進歩によりfollicular lymphomaの発見頻度が増加している. 肉眼型としては隆起型,潰瘍型,multiple lymphomatous polyposis(MLP)型,びまん型,混合/そのほかに分けられる.diffuse large B-cell lymphoma, MALTリンパ腫は隆起型または潰瘍型を示すことが多く,マントル細胞リンパ腫はMLP型を示す.消化管follicular lymphomaの多くは白色顆粒状隆起の集簇として認められ,十二指腸や小腸に多発するが,MLP型を示すものもある. 免疫増殖性小腸疾患(immunoproliferative small intestinal disease:IPSID)はMALTリンパ腫の特殊型であり,地中海周辺諸国に多く,小腸全体にびまん性に病変を認め,吸収不良を主徴とするなど特異的な臨床像を示す疾患である.light chainの欠如した異常α鎖を産生するα鎖病としても知られており,緩除な臨床経過を示す.T細胞性リンパ腫はびまん型が多く,intestinal T-cell lymphomaもしくはenteropathy-type T-cell lymphomaとよばれ,セリアック病に合併することが多く,進行が早く予後不良である. 小腸悪性リンパ腫の治療としては病変の範囲,組織型および病期に応じて,手術・化学療法・抗菌薬治療・経過観察などが選択される.単発で限局性のものは外科的切除および術後化学療法が一般的である.化学療法のレジメは6~8コース前後のCHOP(cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone)療法が基本であるが,B細胞性リンパ腫に対しては,抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブを併用するR-CHOP療法が標準的治療として確立されている.IPSIDに対しては,以前から抗菌薬治療の有効性が知られていたが,最近十二指腸MALT リンパ腫に対するHelicobacter pylori除菌療法の有効性も報告されている.
2)消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST):
従来平滑筋腫,平滑筋肉腫として分類されてきた腫瘍のほとんどは近年GISTとして分類されるようになった.GISTは腸管の運動を制御するペースメーカ細胞であるCajal介在細胞由来の間葉系腫瘍であり,消化管に生ずる間葉系腫瘍のうちで最も頻度の高いものである.GISTはc-kit遺伝子産物(KIT)が陽性であることが特徴であり,診断のためのマーカーとしても,また,切除不能の転移性GISTの治療においても重要である.GISTの場合良性,悪性の明確な区別は難しく腫瘍の大きさ,核分裂数によって悪性度が判断される.5 cm以上のもの,10/50HPF(high-power fields:400倍視野)以上の腫瘍細胞分裂像数を示すもので悪性度が高い.腫瘍径と核分裂数が同等であっても小腸GISTは胃GISTに比較して悪性度が高い.
 小腸GISTの発生部位としては約3/4が空腸に生じ,悪性リンパ腫が回腸に多いのと好対照をなす.
 GISTは血管増生に富み,粘膜下腫瘍の形態をとるが粘膜側に潰瘍を形成することが多く,消化管出血を初発症状とすることが多い(図8-5-24).
 治療は原則的には病変部を含んだ外科的切除が第一選択である.リンパ節転移は非常にまれであり,通常,リンパ節郭清は行われていない.通常の化学療法,放射線療法は無効である.メシル酸イマチニブはKITチロシンキナーゼの競合的阻害薬であり,GISTの切除不能例や再発例,姑息切除例に有効である.
3)小腸癌(small intestine carcinoma):
欧米では小腸悪性腫瘍のなかで最も頻度が高いのは腺癌だが,わが国の統計では腺癌,悪性リンパ腫,GISTはそれぞれ約30%でほぼ同頻度とされてきた.最近は内視鏡で偶然発見されるfollicular lymphomaなどの悪性リンパ腫の頻度が増加した.小腸癌はCrohn病に伴うものを除き,近位空腸,十二指腸に生ずることが多い.大腸癌同様散発性に生ずるものが多いが家族性大腸腺腫症に伴う小腸腺腫の癌化としても認められる.初発症状としては閉塞症状,出血が多い.治療は完全摘除が唯一の根治的手段であり,大腸癌同様リンパ節郭清も必要である.放射線療法,化学療法の有用性は確立していない.粘膜層に限局する早期癌の場合は内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)やポリペクトミーで根治可能と考えられている.
4)カルチノイド:
小腸のカルチノイドは欧米では癌に次いで2番目に頻度の高い小腸腫瘍だが,わが国では非常にまれな疾患である.消化管カルチノイドの発生頻度は欧米では虫垂,回腸,直腸の順に多いのに対し,わが国では直腸,胃,十二指腸の順で,虫垂,回腸には少ない.カルチノイドは神経内分泌顆粒含有細胞すなわち内分泌細胞で構成され,特徴的な組織構築を示す低異型度の腫瘍である.セロトニンなどの消化管アミン,ペプチドホルモンを産生分泌し,他臓器転移を起こすと特徴的なカルチノイド症候,すなわち顔面紅潮,下痢,喘息発作を呈する.発生部位としては空腸に少なく,回腸に多い.多発例も少なくなく,約1/3を占めるとの報告もある.空腸・回腸カルチノイドは直腸,胃のカルチノイドに比して転移率が高く,10 mm以下であってもそのリンパ節転移陽性率は平均44%(5〜85%)であり,注意が必要である.直腸,胃(types ⅠandⅡ:高ガストリン血症に随伴するタイプ)においては10 mm以下の場合内視鏡的切除の適応とする考えがあるが,空腸・回腸カルチノイドにおいては腫瘍の大きさにかかわらず,所属リンパ節郭清を伴う手術が必要とされる【⇨8-9-7),12-10】.
5)二次性の腫瘍:
他臓器からの二次性の腫瘍としては血行性転移,直接浸潤,腹腔内播腫によるものがある.膵臓癌はしばしば十二指腸に直接浸潤を起こし,大腸,卵巣,子宮,胃の癌は直接浸潤もしくは腹腔内播腫により小腸に及ぶ.乳癌,肺癌,悪性黒色腫は血行性に小腸転移をすることが知られている.肺癌の小腸転移は特に大細胞癌で認められることが多い.
6)そのほかの良性腫瘍および腫瘍様病変:
小腸の良性腫瘍は無症状のものが多く,正確な有病率を算出できる資料はない.以前は,ほかの疾患の手術時や剖検時に偶然発見されることが多かったが,カプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡の普及に伴い,内視鏡で発見される機会が増えている.小腸の良性腫瘍の中で比較的頻度の高いものとしては腺腫,脂肪腫,過誤腫,血管腫,リンパ管腫,炎症性線維性ポリープ(inflammatory fibroid polyp:IFP)などが知られている.散発性に生ずるもののほかに家族性大腸腺腫症に伴う腺腫やPeutz-Jeghers症候群に伴う過誤腫のようにポリポーシス症候群に伴う多発性のものもある.
 良性でも腫瘍が大きくなると内腔を狭小化し,閉塞症状を現したり,腫瘍を先進部とした腸重積による腸閉塞の原因となったりする.そのほか,顕性,不顕性の出血の原因となることもある.腺腫とPeutz-Jeghers症候群に伴う過誤腫は悪性化の危険性がある.出血や腸重積の合併や悪性化の危険性がある場合は治療の適応となり,外科手術が行われる.最近はダブルバルーン内視鏡により深部小腸へも内視鏡的アプローチが可能となり,粘膜もしくは粘膜下層に主座を置く小病変はポリペクトミーやEMRで対処可能となった.[山本博徳]
■文献
GIST研究会:GIST診断・治療.http://www.gist.jp
菅野健太郎監修:ダブルバルーン内視鏡―理論と実際―,南江堂,東京,2005.
消化管follicular lymphoma―診断と治療戦略.胃と腸,43(7),2008.

出典:内科学 第10版
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それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

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