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尿毒症【にょうどくしょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

尿毒症
にょうどくしょう
uremia
腎臓機能不全のために,尿中に排泄されるべき代謝老廃物などが,血液のなかに蓄積されて起る症候群。意識喪失にいたることの多い脳症状や,胃腸障害など全身に多彩な症状が出現する。血液から尿をろ過する糸球体の機能が 10%以下になると症状が出はじめる。急性尿毒症のなかには,はっきりした腎不全証明ができない場合もあり,また,脳動脈硬化のため発生する動脈硬化性脳症となされるものも含まれる。対策は原因療法のほか,輸液や透析療法が行われる。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

にょうどく‐しょう〔ネウドクシヤウ〕【尿毒症】
腎臓機能障害により、尿中のたんぱく質分解産物、特に窒素成分が十分体外へ出されないために起こる疾患頭痛嘔吐不眠などを伴い、進行すると昏睡状態になる。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

尿毒症
 腎不全の結果起こる症状で,皮膚変色,かゆみ,食欲不振,嘔吐などを呈する.血中の老廃物の排泄不全が原因とされる.

出典:朝倉書店
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家庭医学館

にょうどくしょう【尿毒症 Uremia】
[どんな病気か]
 慢性腎不全(まんせいじんふぜん)(「慢性腎不全」)の末期や、急性腎不全(「急性腎不全」)で腎臓(じんぞう)のはたらきが極端に落ちたために、尿中に排泄(はいせつ)されなければならない老廃物が、からだの中にたまった状態を尿毒症といいます。
 尿毒症では、腎臓のはたらきが正常の10分の1以下に低下しています。治療せず、そのままにしておけば、生命にかかわるような状態になります。
[症状]
 症状は多くの臓器にわたり、さまざまです。まず最初に、疲れやすい、だるい、思考力が低下するなどの症状が現われます。からだの表面のむくみ(浮腫(ふしゅ))や、胸に水がたまる(肺水腫(はいすいしゅ)(「肺うっ血/肺水腫」))などの症状も現われます。
 神経や筋肉症状としては、知覚異常、末梢神経痛(まっしょうしんけいつう)、筋肉のけいれん、全身のけいれんなどがおこることもあります。
 消化器症状としては、食欲低下、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)、口内炎(こうないえん)、口の中の味覚不良がみられます。尿毒症が進行すると、潰瘍(かいよう)や出血がみられます。また栄養不良となり、やせてきます。
 循環器症状としては高血圧がしばしばみられます。また、ひどくなるとうっ血性心不全(けつせいしんふぜん)、心膜炎(しんまくえん)が現われます。
 皮膚は黄褐色に変色し、ときには汗の尿素が皮膚に結晶を形成し斑点(はんてん)がみられます(尿毒素斑点(にょうどくそはんてん))。皮膚のがんこなかゆみも特徴的です。
 骨では発育障害、骨折、異所性石灰化(いしょせいせっかいか)(関節周囲、動脈壁、肺、心筋、眼球結膜(がんきゅうけつまく)に生じる石灰化)がみられることがあります。
 尿毒症は全身の消耗性の疾患ですので、男性ではインポテンスや精子濃度の低下、女性では無月経(むげっけい)になることがあります。
[検査と診断]
 血液検査では、尿素窒素(にょうそちっそ)やクレアチニンの値が基準値の10倍近くに上昇しています(高窒素血症(こうちっそけっしょう))。また動脈血中の炭酸ガスが増加したアシドーシス(酸性血症)の状態を示します。多くの場合、貧血がみられます(腎性貧血(じんせいひんけつ)(コラム「腎性貧血」))。血液のナトリウム濃度は正常か低値を示し、カルシウム値は低く、リン値は高い傾向にあります。
 尿検査では、たんぱく、クレアチニンをはじめとして、尿中に排泄される物質について測定が行なわれます。
 尿毒症では、多くの臓器でさまざまの障害が生じますので、X線検査、心電図、眼底検査など幅広い検査が行なわれます。
[治療]
 腎不全の状態を悪化させたり、原因となっている要素を取り除いたりすることがまず治療の最初です。たとえば、脱水、腎毒性物質、感染症、尿路閉塞(へいそく)などが原因となっているなら、その治療を行ないます。尿毒症が、根本的治療がむずかしい進行性の病気からきているのなら、透析が必要です。しかし、透析となるまでの期間を、保存的な治療を行なうことによって、ある程度延長できる可能性があります。
 保存的治療としての食事療法では、カロリーが十分な食事と、たんぱく、塩分、水分などの制限が必要となります。
 運動などについても、軽い運動にとどめたほうがいいでしょう。しかし、実際は疲れやすいため、具体的に制限しなくても、そんなに運動はできなくなります。腎臓のはたらきが高度に低下した透析導入前の慢性腎炎患者の生活指導基準を、日本腎臓学会では定めています。
 降圧薬、利尿薬、強心薬などは必要に応じて使用されます。
 保存的療法にも限界があります。限界となったなら、ただちに血液透析をしなければなりません。もとへもどらない進行性の腎臓病によって尿毒症になることが多いのですが、腎臓のはたらきが大きく低下した時点で、あらかじめ血液透析用の内(ない)シャントをつくっておきます。利(き)き腕でないほうの手首(多くは左手首)の動脈と静脈をつなぎ、腕の静脈を動脈化するわけです。そうすると静脈は太くなり、十分な血液が流れます。皮膚表面にある太くなった静脈に針を刺して、血液透析のための血流を確保します。この内シャントがあれば、いつでも血液透析ができるようになります。
 尿毒症では、医師から透析を勧められた場合、すぐ透析を開始しなければなりません。開始時期が遅れるとたいへん危険です。透析を続けていくことを維持透析(いじとうせき)といいますが、維持血液透析を週2~3回行ないます。多くの患者さんは、透析を始めると、それ以前よりからだが軽く感じられるようになります。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

にょうどくしょう【尿毒症 uremia】
高度の腎臓障害によって全身的な臓器症状を起こした状態をいう。急性または慢性腎不全の進行した状態で起こる。腎臓のおもな機能には老廃物のろ(濾)過,体液調節(酸塩基平衡と電解質の調節),内分泌作用の三つがある。これらの機能が障害されるために,下記のような種々の障害が発生する。まず,ろ過作用の障害によって,代謝産物が体内に異常に蓄積する。これらの物質を尿毒症性毒素と総称するが,尿毒症性毒素のうち最も重要なものはタンパク質代謝産物で,尿素,クレアチニンなどがあり,これらの蓄積によって,幻覚などの中枢神経症状をはじめ,胃腸症状,肺水腫,心不全などの心肺症状,貧血,皮膚症状,出血を起こす。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

尿毒症
にょうどくしょう

腎(じん)機能不全が進行すると尿量が減少し、また腎臓が有する体液の性状(量の分布、イオン組成、酸塩基平衡など)を一定に保つことが不可能となり、尿成分が血液中にたまってくる。そのために中毒様の脳および胃腸症状をはじめとして全身の諸臓器の機能障害による症状を呈する状態を、尿毒症という。慢性腎炎の末期、高血圧による腎硬化症、痛風・糖尿病などの末期、女性に多い膠原(こうげん)病、尿路の通過障害(前立腺(せん)肥大症)などが原因となる。そのほか、急性腎炎、中毒、脱水症、低血圧、両側上部尿路結石で著明な乏尿が1週間くらい続くと、急性に尿毒症状を呈することがある。

 元来、尿毒症は緩徐漸進的に発症するもので、初期には口が渇き、舌苔(ぜったい)が著しく、食欲不振となり、疲労しやすく、嗜眠(しみん)性であるが安眠できない。やがて吐き気、嘔吐(おうと)がおこり、また胃腸カタルを伴い、鼓腸や下痢が現れ、腸に潰瘍(かいよう)を生ずるために血便を排出することもある。四肢のけいれんをおこすことはあるが、全身的なけいれんはない。さらに進行すると、昏迷(こんめい)・昏睡に陥り、ついには心不全や脳血管障害のために死亡する。

 慢性腎炎や高血圧によるものは治癒の望みはまずないが、中毒や尿路障害によるものは救命の可能性がある。安静と保温に注意し、タンパク質を強く制限し、強心・利尿剤を投与し、瀉血(しゃけつ)、輸血、リンゲル液、ブドウ糖液の注射を行う。人工腎臓、腹膜灌流(かんりゅう)によって症状を緩解させることもできるが、それ以外は腎移植によるほかない。

[加藤暎一]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

にょうどく‐しょう ネウドクシャウ【尿毒症】
〘名〙 腎不全の究極の状態。腎臓の機能が著しく低下し、尿中に排泄されるはずの尿素などが血液中にたまって、体液の異常や全身臓器の機能が低下し、だるさ、浮腫、食欲不振、高血圧、はき気、嘔吐(おうと)、下痢などの症状が起こり、ついには意識もにぶる。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

尿毒症(腎・尿路系の疾患の病態生理)
(7)尿毒症(uremia)
概念
 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を有する患者では,徐々に腎機能が低下すると初期には無症状だったものが,糸球体濾過値(GFR)が<30 mL/分以下の腎不全に進行すると,尿毒症の慢性症候である高血圧,高カリウム血症,腎性貧血,末梢神経障害,腎性骨異栄養症,代謝性アシドーシスなどが観察されるようになる.さらにGFR<5 mL/分以下の末期腎不全に至ると急性症候が出現する.尿毒症症状としては食欲不振,悪心,嘔吐,心外膜炎,集中力低下,痙攣発作,昏睡などの中枢神経症状がみられる.血中の尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cr)の絶対値とこれらの症候の発現の間には直接的な相関は存在しない.BUNやCrが低い場合にも尿毒症の症候が出現することもあるし,逆にBUNやCrが高い場合でも症候が出ない場合もある.いずれにしても尿毒症の急性症候が出現したら延命のためには透析療法や腎移植などが必要である.すべてのCKD患者が進行性腎障害を呈するわけではなく,腎不全の原因疾患,合併症,治療,社会経済的状況,遺伝,民族性などによって異なる.
病態
 BUN,Crや尿酸など窒素化合物の最終代謝産物のほとんどは腎から排泄され,GFRが低下すると高窒素血症(azotemia)を呈する.従来,尿毒症は窒素化合物の代謝産物が異常に蓄積した結果と考えられ,これらの物質を総称して尿毒症物質(uremic toxins)とよぶ.最近では尿毒症物質は,小分子量物質,中分子量物質,蛋白結合物質に分類され,各物質の正常値,尿毒症状態での値なども判明しつつある.尿毒症の病態は,腎が司るすべての機能障害によって生じると考えられ,水・電解質異常,代謝性アシドーシス,副甲状腺ホルモンの産生亢進,活性型ビタミンDの欠乏,Ca,P代謝異常,エリスロポエチンの産生低下など多くの要因が関連する.
臨床症
状・対策
 尿毒症の臨床症候は大きく慢性症候と急性症候に分けられる.慢性症候は,GFR 30 mL/分以下程度の腎不全状態でみられる症候である.急性症候は腎不全末期や急性腎不全でGFRが5 mL/分以下に低下し,急激で高度のazotemiaが出現した場合にみられ,ときに致命的であるが透析療法によって是正可能である.
1)慢性尿毒症症候:
慢性尿毒症症候はGFRが30 mL/分以下に低下した頃より出現する症候で,エリスロポエチン産生低下による腎性貧血,ビタミンD活性化障害による二次性副甲状腺機能亢進症,Na排泄障害による細胞外液量増加による高血圧やうっ血性心不全などがあり,発症機序が明らかでない症候としては末梢神経障害などが代表的である.
a)尿の変化:慢性腎不全では浸透圧利尿,Na利尿,尿細管障害により尿濃縮能と希釈能が低下し等張尿となるが,末期に至るまで乏尿をきたすことはまれである.この頃から夜間尿がみられる.この時期の極端な塩分制限や利尿薬投与は,細胞外液量やGFRの低下をきたす.
 b)心血管系症候:
 ⅰ)高血圧:この時期には高血圧を高頻度に合併する.高血圧の成因は大きく,容量依存性高血圧(volume-dependent hypertension)と,レニン-アンジオテンシン系(RAS)の活性化による高血圧(renin-dependent hypertension)に分けることができるが,一酸化窒素やプロスタグランジン,カリクレイン,キニンなどの降圧系の異常も関与している.高血圧は腎不全の進展,増悪因子であるのみならず,動脈硬化症の進展に寄与し,脳・心血管系合併症の最大の危険因子である.CKDに合併する血圧の治療はRAS系阻害薬が有用で,第一選択薬である.容量依存性高血圧にはCKD 3期以上ではループ利尿薬を追加する.また,脳・心血管系合併症が懸念される場合にはカルシウム拮抗薬を追加する.RAS系阻害薬の使用に際しては腎機能の急激な低下や高カリウム血症を予防するために少量から始めるのがよい. ⅱ)心不全:保存期腎不全では貧血により高拍出性心不全(high output failure)を呈する症例がある.臨床的には無症状であることが多く,超音波検査により駆出率の低下を認める.心筋虚血,冠動脈石灰化,腎性貧血,細胞外液量増加,高血圧性心疾患,動脈硬化症などが病態に寄与している.一方,高度の心拡大,低血圧,不整脈,右心不全などを呈する場合には尿毒症性心筋症(uremic cardiomyopathy)と呼称される.
c)尿毒症性末梢神経障害(uremic neuropathy):知覚神経と運動神経ともに障害され,両側対称性で下肢に高度で,遠位部にはじまり上行する.振動覚や深部知覚の低下,腱反射の減弱・消失,末梢神経伝導速度の遅延をきたす.自覚的には,下肢静止不能症候群(restless legs syndrome)と呼称され,「足のおきどころがない」と訴え,夜間に高度で,体動時に楽になる.その他,しびれ感,灼熱感(burnig foot syndrome),脱力,筋痙攣などがある.透析療法を含め,治療には抵抗性であるが,最近ドパミンアゴニストが有効とされている.
d)消化器症状:慢性腎不全では,しばしば悪心,嘔吐,食欲不振を訴えるようになる.尿毒症物質の蓄積による延髄外側毛様体の嘔吐中枢の刺激や自律神経障害による消化管運動障害が発症機序として提示されている.ガストリン代謝障害による高ガストリン血症,低蛋白血症,貧血による胃粘膜の血流低下などは,胃・十二指腸のびらんや潰瘍の発症に寄与している可能性がある. e)皮膚症状:慢性腎不全では皮膚瘙痒症が高頻度に発現する.皮膚瘙痒症の原因は多彩で,尿毒症物質の蓄積,Ca・P代謝異常,汗腺の減少や萎縮,末梢神経障害,マスト細胞からのヒスタミン放出の関与などが指摘されている.皮膚瘙痒症は治療抵抗性で,止痒薬の塗布や抗ヒスタミン薬の頓用で対応することが多いが,透析療法によっても改善しない例が多い.選択的オピオイドカッパ受容体作動薬が治療抵抗性の透析瘙痒症に有効とされているが,保存期腎不全では検討されていない. f)腎性貧血(renal anemia):GFRが30 mL/分以下に低下すると貧血が明らかになり,腎不全の進行とともに増悪する【⇨11-1-2)-(4)】.主因はエリスロポエチン産生低下であるが,赤血球寿命の短縮や尿毒症物質による造血抑制も関与している.基本的に正球性正色素性貧血であるが,時折鉄欠乏性貧血を合併し小球性低色素性貧血を呈することもある.また,二次性副甲状腺機能亢進症,低栄養なども貧血に寄与する.治療に関しては,遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤に始まり,長時間作用型の製剤の開発で管理が容易となり,輸血の必要性の減少に伴い肝炎発症の危険性が激減した. g)腎性骨異栄養症(renal osteodystrophy):慢性腎不全患者では腎性骨異栄養症と総称される特徴的な骨病変が出現し,線維性骨炎と骨軟化症が代表的病態である【⇨11-1-2)-(5)】. ⅰ)線維性骨炎(osteitis fibrosa):副甲状腺機能亢進症に基づく,骨吸収を主体とする骨病変である.骨X線上,手指骨,中指骨の橈骨側の骨膜下吸収像,指尖骨の消失,頭蓋骨の斑点状陰影(salt and pepper像),恥骨結合の開大などがみられる.脊椎骨では椎体の上下部に骨硬化像が生じてrugger jersey像が特徴的である.病態はビタミンDの活性化障害とリン排泄障害による高リン血症,低カルシウム血症により副甲状腺ホルモンの過剰分泌が持続し,骨代謝回転が促進する結果,骨吸収が亢進し,骨梁が線維化することである.
 ⅱ)骨軟化症:活性型ビタミンDの欠乏,低カルシウム血症による類骨組織の石灰化障害による.副甲状腺機能亢進症を伴い,自覚的には,全身,特に下半身の骨痛が特徴的で,骨X線上,X線透過性の亢進,病的骨折がみられ偽骨折像があれば診断的意義が大きい.
 h)その他の症候:長期に経過した慢性腎不全患者では,腎不全に起因する病態として,耐糖能障害,脂質代謝異常,甲状腺機能低下症,性腺機能障害,感染症などを高頻度に合併する.
2)急性尿毒症症候:
a)消化器症状:初期には食欲不振,末期に至れば悪心・嘔吐,下痢,吐血,下血をきたす.
 消化管粘膜は浮腫状となり多数のびらんを認める.これらの変化は厳重な蛋白制限や透析療法によって消失することから,成因は尿毒症物質が考えられている.消化器症状が高度であれば透析療法の適応となるが,臨床現場では尿毒症の明確な臨床症候である.
b)心血管系障害:
 ⅰ)肺水腫・心不全:末期腎不全では細胞外液量が増加し,肺水腫を伴う左心不全を呈する.
 著明な起坐呼吸,血痰,泡沫状の痰などの症状を呈し,胸部X線写真で心拡大と肺門部陰影の増強(butterfly shadow)が特徴的である.発症には細胞外液量の増大,アシドーシス,RAS系の亢進,高血圧などが寄与し主因は細胞外液量の増大である.通常は透析療法により過剰な細胞外液量を除去することで劇的に改善する.透析療法のみで改善しない場合には器質的な心筋障害を鑑別する必要がある. ⅱ)尿毒症性心外膜炎(uremic pericarditis):発症には尿毒症物質と出血傾向が関与すると考えられているが,ウイルス感染を契機として発症することもある.発熱,胸痛,低血圧,脈圧減少,心膜摩擦音,胸部X線写真で心陰影の拡大などがあれば本症を疑い心エコー検査で確認する.通常,心膜液は血性で,高度になれば心タンポナーデを呈する.透析導入前の末期腎不全患者に本症が合併すれば,透析導入の適応と考える.多くの症例で透析量増加,つまり頻回に透析を施行することで回復することが多い. ⅲ)高カリウム血症:腎不全ではネフロンの減少からK排泄能が低下し高カリウム血症を呈するが,尿量が400 mL/日以上あれば重篤な高カリウム血症を生じることは少ない.しかし,糖尿病性腎症や尿細管・間質障害を伴う例では低アルドステロン血症あるいはアルドステロンに対する尿細管の反応性が低下し高カリウム血症をきたしやすい.末期腎不全に至れば,代謝性アシドーシス,異化亢進などから高カリウム血症が出現しやすくなる.緊急例では透析療法により,高カリウム血症やアシドーシスは是正されるが,通常は,炭酸水素ナトリウム,イオン交換樹脂,ブドウ糖とインスリン併用,グルコン酸カルシウムなどで治療する.
c)代謝性アシドーシス:末期腎不全ではリン酸や硫酸などが貯留し,アニオンギャップの開大を伴った高度の代謝性アシドーシスを呈する.pHが7.20以下に低下すると呼吸性代償による過換気が高度となり,深く規則正しい呼吸(Kussmaul呼吸)を呈する.さらに,高度(pH<7.10)になると心室性不整脈,心筋収縮機能低下をきたす.
d)出血傾向:末期腎不全で出血傾向を高率に認め,皮下出血,鼻出血,歯肉出血から消化管出血,性器出血,心膜腔出血などを併発する.通常,凝固時間は正常域を示すが,出血時間が著明に延長し,血小板数も低値を示すことが多い.
e)尿毒症性中枢神経障害(uremic encephalopathy):腎機能低下に伴いazotemiaが顕著になると,易疲労感,記銘力,集中力の低下,易刺激性,反復計算力の低下などが発現する.さらに腎機能が低下すると意識レベルの低下として無欲,嗜眠傾向,不眠,多幸症,抑うつ感,見当識障害,幻覚,錯乱などの精神症状が発現し,さらに進行すれば傾眠,昏迷,昏睡に至る.これら一連の症候をuremic encephalopathyと総称する.筋の易刺激性では羽ばたき振戦,筋攣縮,病的反射を認め,全身痙攣から,除皮質硬直や除脳硬直状態を呈することもある.これらの症候は,透析療法により比較的速やかに改善しうる.成因としては,尿毒症物質が主因と考えられているが,アシドーシス,低ナトリウム血症,高ナトリウム血症,高マグネシウム血症などの電解質代謝異常とともに高血圧性脳症様の機序も関与する.鑑別すべき病態としては,低血糖,低酸素脳症,肝性脳症などの代謝性脳症とともに血管障害が重要である.[草野英二]

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六訂版 家庭医学大全科

尿毒症
にょうどくしょう
Uremia
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 尿毒症とは、腎機能の低下により起こる臓器、組織、さらには細胞機能(はたらき)の障害と、体液異常により起こる症候群の総称です。いい換えれば、末期腎不全(まっきじんふぜん)の状態を意味しています。

 腎臓には老廃物を排泄する以外に、水、電解質(ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、リンなど)のバランスや酸塩基平衡の維持、ホルモンの産生および不活性化(はたらきを終わらせること)の機能などがあります。尿毒症では、これらの腎臓の機能すべてが阻害されています。

症状の現れ方

 食べ物の多くは、体内で代謝され、大部分は水と炭酸ガスになります。蛋白質などは窒素(ちっそ)代謝産物(尿素窒素、尿酸、クレアチニンなど)となり、正常では尿中より排泄されますが、尿毒症では十分排泄できず体内にたまります。そのため神経症状、消化器症状、出血傾向などの症状が現れます(表16)。

●水、電解質の異常

 ナトリウムやクロールの蓄積は体内の水分の増加をもたらし、高血圧、浮腫(むくみ)、心不全などを起こします。カリウムの増加は不整脈を、カルシウムやリンの異常は腎性骨異栄養症(じんせいこついえいようしょう)といわれている骨の代謝異常を起こします。

 腎不全によるリン酸、有機酸の蓄積とアンモニアの生成・排泄障害、水素イオンの排泄障害などは、代謝性アシドーシス、骨代謝異常、アルブミンの合成低下、筋力低下などを来します。

●血液の異常

 尿毒症に伴う貧血を腎性貧血(じんせいひんけつ)といいます。その主な原因は腎臓で作られている造血ホルモンであるエリスロポエチンの産生不足であり、さらに造血抑制因子や赤血球寿命の短縮、低栄養による鉄・葉酸(ようさん)不足、出血傾向などが関わってきます。

●骨代謝異常

 リンの排泄障害により高リン血症、また腎臓のビタミンDの活性障害により、腸からのカルシウム吸収や骨吸収、腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、低カルシウム血症となります。その結果、二次性副甲状腺機能亢進症となり、さらには代謝性アシドーシスも加わって腎性骨異栄養症が発生します。そのため骨折、骨格の変形、骨・関節の痛みが起こります。さらに、異所性石灰化(血管や心臓の弁などの石灰化)などが起こり、生命予後まで悪くします。

●免疫の異常

 尿毒症では免疫不全の状態となっているため、感染しやすく、またワクチンなどによる免疫獲得率も弱くなっています。

●代謝系の異常

 インスリン抵抗性や膵臓のβ(ベータ)細胞の糖に対する感受性の低下のため、耐糖能異常やインスリン分解能低下が起こって高インスリン血症となります。脂質代謝異常として、中性脂肪分解酵素の低下のため中性脂肪が高値となります。

 また、アミノ酸代謝異常、代謝性アシドーシス、尿毒性物質の蓄積などで体内の蛋白質の分解が亢進している状態であり、さらに食欲不振などによるカロリー不足となり、栄養障害やビタミン不足の状態になりやすいといわれています。

●神経と内分泌の異常

 尿毒性物質の貯留によると思われる神経精神異常が認められます。眠気から意識障害や精神症状まで程度も症状もさまざまです。

 内分泌系の障害として、性機能障害(性ホルモンの低下)、成長障害(成長ホルモンの異常)、甲状腺ホルモンの異常も指摘されています。

 以上のように、腎臓が障害されると全身にさまざまな影響を及ぼすことがわかると思います。これらの病態は、必ずしもすべての患者さんに同じように現れるものではなく、尿毒症になった原因の病気やその病態によって異なり、また尿毒症になるまでの治療などによって変わってきます。

福井 光峰, 富野 康日己

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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